ユーザー増加中!グループウェア「GRIDY」が無償で提供できる理由とは? | RBB TODAY

ユーザー増加中!グループウェア「GRIDY」が無償で提供できる理由とは?

エンタープライズ その他

「データウェアハウス&CRM EXPO」のブランドダイアログのブース
  • 「データウェアハウス&CRM EXPO」のブランドダイアログのブース
  • 0円のボードが目をひく
  • イベント会場ではGRIDYを試す人が絶えない状態
  • GRIDYのインターフェイス
  • 借り受ける遊休能力と仕組み
  • CPU、HDDはどのように使われるのか?
  •  5月13〜15日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「データウェアハウス&CRM EXPO」でブランドダイアログが無料SaaS型クラウド・グループウェア“GRIDY”を展示していたのをご覧になった方も多いと思われる。
 5月13〜15日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「データウェアハウス&CRM EXPO」でブランドダイアログが無料SaaS型クラウド・グループウェア“GRIDY”を展示していたのをご覧になった方も多いと思われる。“無償”“SaaS型”“グループウェア”“GRID”と、気になるキーワードがいくつもちりばめられた展示内容は、来場者の関心も高かったようで、展示ブース内には多数の来場者が詰めかけ、説明員を捕まえて熱心に質問をぶつける人が後を絶たなかった。ここでは、改めてブランドダイアログが展示していたGRIDYとPromotional GRIDについて整理しておこう。

 ブランドダイアログの展示では、GRIDYとPromotional GRIDの2つのシステムが紹介されていた。おおざっぱに言うと、ユーザーが直接利用するフロントエンド側にGRIDYが位置し、バックエンドにPromotional GRIDが置かれる、という関係だ。両者は密接な関連を持ってはいるものの、その性格は大きく異なる。

■無償提供のSaaS型グループウェア「GRIDY」

 GRIDYは、企業ユーザー向けに無償提供されるSaaS型グループウェアで、2009年2月に正式リリースされた。2008年11月から100社限定でα版フィールドテストを行ない、ブラッシュアップを経てのリリースとなった。

 GRIDYの特徴として、まずは無償という点が注目される。インターネット上で提供される個人向けサービスでは無償のものは少なくないが、多くは広告モデルを採用しており、ユーザーはWebブラウザ上にさまざまな広告が表示されることを容認することが利用の条件であったりする。あるいは、試用版という位置づけで機能が限定されており、全ての機能を使いたい場合には有償サービスに移行しなくてはいけない、という手法もある。GRIDYは広告モデルではなく、また機能限定版でもない。ビジネス向けサービスでありながら広告抜きのフル機能が無償で提供されているのだ。GRIDYを利用するユーザー以外の顧客から収益を得ている、という点では広告モデルと類似している面もあるが、ユーザーは「広告が表示されることを受け入れる」のではなく、「手元のPCの余剰リソースをPromotional GRIDに提供する」ことになる点が広告モデルとの違いである。Promotional GRIDについては、後述する。

 GRIDYは、無償とはいいながらも既存の商用グループウェアに遜色ない機能を揃えている。カレンダーやWebメール、ファイル共有など、主要機能は23に上る。イベント初日となった5月13日にはモバイル版が正式リリースされ、iPhoneや携帯電話(DoCoMo、au、SoftBank、WILLCOM、EMOBILE、一部機種を除く)からGRIDYを利用できるようになった。モバイル版で利用できる機能は、GRIDYのユーザーごとのトップページにあたる「マイページ」の表示、スケジュール、設備予約、電話メモ・所在、の4機能だ。GRIDYを利用しているユーザーが、自分のマイページの個人設定から携帯電話等に登録URLを送信し、登録することでアクセスできるようにする、といった簡単な操作で利用できる。そもそもGRIDYはSaaS型であり、ユーザー企業内にはシステム管理者等が存在する必要がないため、モバイル・デバイスの利用に関してもユーザーごとのセルフ・サービスで利用できるわけだ。こうした点も、専任のITシステム部門を持たない中小規模の企業にはありがたいだろう。

 さらに、SaaS型ならではの特徴として、企業の境界を越えたコミュニケーションも可能だ。同社では「どこまでもつながる」と表現しているが、ユーザー企業ごとにサーバを持つオンプレミス型のソフトウェアでは実装が面倒になる社外連携も、データやサーバをブランドダイアログ側で保有するSaaS型ならいとも簡単に実現できるわけだ。主要取引先など、業務を進める上で社外の相手と密接な連携を必要とする場合、従来はエクストラネットの構築などという手段を採っていたが、GRIDYなら、無償ということもあって関連する各社に導入を要請することも気軽にできるようになったといえるだろう。同社では、4月6〜8日の連続3日間で、毎日100社ずつの登録者数増を発表している。4月6日に400社達成、5日は500社達成、8日は600社達成、5月中旬現在2,000社以上が導入という具合だ。こうした状況も、ユーザー企業からの反響の大きさを示しているといえるだろう。

■Promotional GRIDのアイデア

 GRIDYが無償で提供できるいっても、ユーザーとしては「なぜ無償で提供できるのか」という仕組みの部分が理解できないと安心して採用できないだろう。

 仕組みはある意味単純で、ユーザーはGRIDYのライセンス料やサービス利用料を現金で支払うことはないが、その代わりにPCの余剰の演算能力やディスクスペースを提供するのだ。最近のPCの性能向上は目覚ましく、特にマルチコア・プロセッサを搭載したPCでは通常の業務利用では使い切れないほどの演算能力が備わっている。活用しきれない分の性能は単に無駄に余っているだけだが、この使い切れない余剰分を回収することで価値を生み出したのがPromotional GRIDだといえる。

 同社によれば、企業内で利用されているPCは、テキスト文章を入力している程度ではほとんど使われていない。つまり遊休リソース化しているのだ。現在のプロセッサのクロック周波数はGHz単位であり、理論的には毎秒10億命令以上を処理できる能力が備わっているのだ。キーボードから手を離してふと伸びをしたその一瞬にも、億単位の命令を処理できていたはずだった、という状況なのだから、余剰演算能力が発生するのは当然といえる。

 GRIDYユーザーが使用するPCにPromotional GRIDのクライアントをインストールすると、このクライアントがインターネットを通じてGRIDに組み込まれ、リモートから送られてくる演算タスクを実行したり、PCのHDDの一部を分散型ストレージとして提供したりする。実のところ、GRIDYはPromotional GRIDを実現するためのリソースを集めるために用意された機能なのである。その意味では、提供するサービスがグループウェアであることに必然性はないともいえるのだが、グループウェアが適切だと判断できる理由がいくつかある。グループウェアを使いたいと思うユーザーはネットワーク環境を整備しているはずだし、個々のユーザーが常時使用するPC上で利用してこそ意味のあるサービスであることから、リソースの提供を受けやすいはずだと考えられる。

 インターネットを介したGRIDに手元のPCが接続されてしまうことでユーザーに不利益を与えないよう、セキュリティにも配慮されている。Promotional GRIDのクライアントはユーザーのPC上に仮想マシンを作成し、その上で動作する形を採る。このため、ユーザーが普段使用しているHDDや周辺機器にGRIDYクライアント側からアクセスすることはできず、逆にPCを利用しているユーザーがGRIDYクライアントが保存しているデータの中身を見ることもできない。通信経路はTLSを使って暗号化され、さらにそこを流れるデータにも暗号化が施されるという二重の保護が行なわれる。

 Promotional GRIDを分散ストレージとして利用することも可能だ。この場合、Promotional GRIDクライアントがユーザーのPC上に確保したHDD領域が集まって分散ファイルシステムを構成することになる。当然、クライアントPCの電源が切られたり、何らかのトラブルでネットワーク接続が遮断される可能性もあるため、Promotional GRIDの分散ファイルシステムでは分割されたデータの特定の断片を複数台のクライアントPCに重複保存する。さらに、断片のうちのいくつかがアクセス不能になっていることが検出されると、その時点で即座に新たなコピーを作成するといい、保存したはずのデータにアクセスできなくなる、といったトラブルが発生する可能性は極めて低く抑えられている。

 GRIDYクライアントはユーザーのPCの負荷状況を監視し、リソースが余っているときにのみGRIDに処理能力を提供するため、ユーザーの作業効率が低下してしまう恐れもない。同社では、Promotional GRID技術によって作り出される“仮想スーパーコンピュータ”を「JAPAN GRID」と名付け、これを有償で利用する顧客を集める。用途としては、3D CGレンダリングや動画広告配信、動画エンコード、オンラインゲーム配信など、さまざまな用途が想定されている。従来は、必要な処理能力を自前で確保することで対応していた高負荷の処理も、必要なときに必要なだけの処理能力を借り受けるというユーティリティティ・コンピューティング・モデルで利用可能になるわけだ。

■発想の原点は京都議定書

 同様のアイデアに基づく分散処理の実例としては、SETI@homeなどもあった。しかし、SETI@homeは固定された処理をボランティアで実行するというものであり、個人ユーザーが好意でPCの演算能力を提供するだけで、見返りとして得られるものも具体的な価値ではなく、「研究に貢献した」という満足感だった。同社の取締役兼CTO グリッドテクノロジー事業部 部長 グリッドエバンジェリストの森谷 武浩氏は、「Promotional GRIDの発想のきっかけはSETI@homeではなく、京都議定書で知られる第3回気候変動枠組条約締結国会議だった」という。京都議定書ではCO2の排出権取引のメカニズムが作られ、これによってCO2排出権という従来は存在すらしなかったリソースが忽然と出現し、多額の取引が生まれた。これをみて、「従来存在しなかったリソースの取引市場を新たに創設できれば大きなビジネスになるという発想が生まれ、そこから企業や個人の手元にあるPCの遊休リソースを集めて活用する、という事業のアイデアに繋がった」そうだ。

 現在は、まずGRIDYのユーザーを集め、JAPAN GRID構築のために必要となるリソースの確保に取り組んでいる段階だ。今後ストレージ・グリッドやプロセッシング・グリッドの有償提供が順次始まる予定で、年内に本格稼働するものと見込まれる。GRIDYユーザーから見ると、単に無駄に存在するだけだったPCの余剰処理能力を売却し、その売却益でGRIDYのサービスを利用する、というモデルと見ることができる。つまり、従来は存在しなかったリソースの取引市場が忽然と出現したわけだ。一方ブランドダイアログは、巨大な仮想スーパーコンピュータの処理能力を必要とする顧客にこのリソースを販売することで収益を得、同時にGRIDYサービス提供を継続するための資金も調達できるわけだ。同社では、グリッドを安定稼働させるために米国およびヨーロッパでの事業展開も視野に入れているという。日本国内だけだと稼働時間が集中しがちだが、日米欧の三極体制になれば、時差を利用して24時間常に充分なリソースを確保できる体制が整う。同時にこれは、日本で生まれたアイデアが全世界で利用されるということにも繋がる。“JAPAN GRID”と命名されていることからも「日本初のイノベーションを世界に問う」という同社の意気込みが感じられるが、成功を期待せずにはいられない意欲的な取り組みであることは間違いないだろう。
《RBB TODAY》

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