【インタビュー】ASAHIネットが強いワケは“選択と集中”!“教育”特化のクラウドも展開 | RBB TODAY
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【インタビュー】ASAHIネットが強いワケは“選択と集中”!“教育”特化のクラウドも展開

ブロードバンド 回線・サービス
代表取締役社長の山本公哉氏
  • 代表取締役社長の山本公哉氏
  • 会員比率とブロバンユーザーの推移。会員は5年間で26%増加。年平均7.9%の伸び。2006年度には、光回線の会員がADSLの会員を上回った
  • 光回線サービスの料金比較。819円という価格はダントツの安さ。安いだけでなく、回線のスピードも早く、顧客満足度もトップだ
  • 教育機関向けSNSのクラウドサービス「manaba course」。インターネット上で講義の予習・復習が可能なSNSを構築できる
  • 教育機関向けポートフォリオのクラウドサービス「manaba folio」。学習過程の成果物を保存し、きめ細やかな指導が可能になる
 RBB TODAYが実施した「ブロードバンドアワード 2010」のISP部門において、ベストISPに輝いたASAHIネット(朝日ネット)。同社はRBB TODAYのみならず、他社の調査でも大変評価が高く、顧客満足度も連続8年間首位を守り続けている。インターネット黎明期の1990年代から日本の通信業界を牽引してきた同社。その強さと原動力とは何か? 朝日ネット 代表取締役社長の山本公哉氏に、その強さの秘密や、昨年の事業トピック、今年の戦略・展開などについて話を聞いた。

●取捨選択が事業の大きなポイント

――昨年の事業トピックについて教えてください。

 昨年は、モバイルに関して新しいサービスが2つ登場しました。事業としてWi-Fiや3GのFOMAサービスを開始したということがあります。従来からのイー・モバイルのラインを利用したサービスに加え、Wi-FiとFOMAのサービスが追加されたことで、新規会員数も大変好調に推移しています。モバイル通信への第一歩としての礎ができたことが昨年の大きなトピックでしょう。もちろんADSLや光回線の固定サービスについても堅調で、ブロードバンドユーザーも毎年数万人前後のペースで増え続けている状況です。

――他のISPと比べて、貴社の事業が好調な理由はなんでしょうか?

 弊社のアドバンテージは大きく分けると4つの要素があります。1つは当然のことながら「価格」。接続面では「回線の安定性」と「回線の速度」です。さらに重要なところで「アフターサービス」があります。この4つの柱にフォーカスしてきました。つまり、「ネットワーク接続事業者として、ISPの本質的な部分をしっかりやっていこう」という努力を続けてきたのです。「楽しめるコンテンツが少ない」「サイトが面白くない」といった声もいただきますが、弊社もリソースが限られているため、何もかも提供できるとは考えておりません。そこで最低限ここは絶対に外せないというところは押さえていく、「選択と集中」の考え方で事業を進めています。我々の事業規模では「選択」と「集中」が重要で、「何をやって、何をやらないか」という取捨選択が大きなポイントになります。「やるべきことは、きっちりと押さえる」。たぶん今回のベストISPの受賞も、こういったISPの本質的な面での姿勢をご評価いただいたのではないか、と感じています。

――RBB TODAYのスピードテストでも、以前から貴社の回線サービスは評価が高いという結果が出ています。4つのアドバンテージについて詳しく教えてください。

 まずコスト面ですが、たとえばASAHIネットの光回線サービスは、業界最安値水準の料金で提供しています。月額819円という料金(マンションタイプは月額578円)で、競合他社と比べても最大で441円も安い料金です。つまり1年間では約5千円以上も差が出てくる計算になりますので大きなメリットになるところでしょう。実はこれほど安い価格で提供しても、弊社は5期連続で増収増益になっています。営業利益率も他社の上場企業と比べて15倍ぐらいあります。また我々は創業以来、24時間365日にわたるネットワークの運営と監視を、正社員がすべて自前で行っており、それが回線の安定性や速度品質といったアドバンテージにつながっている理由の1つであると思っています。これまでのISPの歴史は、ダイヤルアップから始まり、ISDN、ADSL、光回線へと変遷をたどってきました。主要サービスが変化してきたわけですが、その際にシェアを取るという考えが先行すると、どうしても大きなプロモーションによって多くの会員を獲得し、その後にネットワークを構築していくことになります。ネットワークが変っていく中で、他社がこれらのインフラにうまく対応できたかというと、実はそうではないように感じています。我々の場合は幸か不幸か、あまりシェアについて考えなかったぶん、極めてスムーズなインフラの移行に成功したと分析しています。余分なことにリソースや力を削がれずに、運営もやりやすい状況でした。そのため、いま弊社の会員は52%が光回線を利用しており、さらにADSLを含めたブロードバンド回線の比率も66%ぐらいを占めています。これは他社と比べても、かなり高い移行の割合ではないかと思います。

●新規事業のクラウドも選択と集中で! 教育機関向けのクラウドサービスを展開

――他のISP事業者を見ると、かなり業界的に行き詰まりや閉そく感があるように思います。これからも貴社が伸びていくために施策はありますか?

 我々はISPとして「接続にまっすぐ」という合言葉で事業を推進してきました。接続に特化して力を注ぎ、そのほかの余計なことは一切やらない。とにかく、この部分については、絶対に「いいね」と言ってもらいたい。接続サービスでは、今後モバイル分野が成長していくと予想されますので、この領域へ注力しいきたいと思います。もう1つは、新しいビジネスとして、まったく自立した事業の立ち上げも推進しています。ただし自立している事業といっても、我々の強みを生かせる分野の「クラウドサービス」です。これも全般的なものではなく、「教育」に特化したものを展開中です。高等教育に向けたクラウドサービスを自社で開発して提供しているところです。

――なぜ貴社がクラウドサービスへ新規参入するのか、その理由は何でしょうか?

 たしかに世の中にクラウドサービスを提供する企業はたくさんあります。当然のことながら、これら企業にとって良質なクラウドサービスをつくりだすためには、アプリケーション開発能力が必須になるでしょう。しかし我々が見ている良質なクラウドサービスの要件は単にそれだけではありません。クラウドには「お客さまの大切なデータを預かる」という大前提があります。それを考えると、クラウドサービスを提供するのに最適な業種は、ソフトウェアベンダーではなく、やはりISPなのです。安心して自分のデータを預けられる相手先かということが「クラウドサービスの本質」であり、そこにISPがクラウドに参入する意味があると考えているのです。

 もちろんセキュリティは大切ですが、アクセスが同時に集中することもあるため、ストレスなくサービスを提供できることも重要な点です。こういう状況を日々しっかりとマネジメントできることがISPの特徴でもあるわけです。加えて、弊社ではアプリケーションを開発できる能力もあります。これは他社のISPにない強みです。我々は創業当時から社内の事務系システムやサービス課金システムなどを自らの手で手掛けてきました。実は、こうしたシステムを野村総研や東京電力などに外販していた時期もあります。このような開発能力を兼ね備えたISP事業者は少ないと思います。現在、ブロードバンドが浸透してきましたので、もう一度我々の開発能力を利用して、自らのインフラに独自のアプリケーションを載せていこうという発想でクラウドサービスを始めたのです。

――貴社が提供している教育機関向けのクラウドサービスとは、具体的にどのようなものでしょうか?

 2007年からサービスインし、現在51大学で導入されている「manaba」というサービスです。利用方法によって2種類のサービスが用意されています。このサービスを開始した発端は、以前、我々が立命館大学にアプリケーションを納入していたことがあり、似たようなシステムを開発をして欲しいという依頼があったことです。そこで、このLMS(Learnig Management System)と呼ばれる分野のマーケットを調査してみると、非常に有望であることが分かりました。大学のみならず、高校も含めるとかなりのボリュームゾーンになります。にもかかわらず、クラウドサービスでLMSを提供している企業は、国内的にも、世界的にみても皆無に等しく、まだ米国ですら1社しかありません。LMSは、教育機関で授業を行う際に利用するシステムであり、授業前に学生にシラバスを事前配布したり、ネット上で小テストやレポートを出題・回収・評価したり、学生間で授業の内容を議論できるようなコミュニティを作成したりと、いわばリアルな場とネットの場をつなぐようなプラットフォームになるものです。そういったプラットフォームを導入していただくことで、今度は弊社の屋台骨になるであろうモバイル通信サービスへの広がりも期待しているのです。LMSのクラウドサービスは、我々のISP事業と極めて親和性が高いものであり、通信事業と絡めてご提供できることになります。
 
――このクラウドサービスは、今後の展開、戦略と絡んでくるものでしょうか?

 ええ、まさに絡んでくるものですね。我々は、「このLMS分野でデファクトスタンダードが取れるのではないか」と考えています。現在、日本におけるLMSマーケットはほとんどありませんので、いま我々が一生懸命に開拓している状況です。海外についても米国の超名門大学に向けて、パイロット版のmanabaを使っていただこうという動きもあります。米国市場でも積極的にmanabaの販売に攻勢をかけようと考えています。たぶん来年度の戦略はこれらが中心になっていくでしょう。我々もいよいよ初めての海外展開ができるようになるのではないかと期待しています。ご存じの通り、ISP事業は「超ドメスティック」な分野であり、国際化は難しい。しかしクラウドサービスならば国際化が可能です。一方で、国内で極めて順調に推移しているISP事業をきっちりと堅持しながら、海外への展開も目指していく、これが我々の戦略の明確なイメージになるでしょう。
《RBB TODAY》
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