【インタビュー】地デジは加入ドライバにならない!戦略の基本は「まちづくり」——イッツ・コミュニケーションズ | RBB TODAY
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【インタビュー】地デジは加入ドライバにならない!戦略の基本は「まちづくり」——イッツ・コミュニケーションズ

ブロードバンド その他
代表取締役社長 渡辺功氏
  • 代表取締役社長 渡辺功氏
  • 代表取締役社長 渡辺功氏
  • 代表取締役社長 渡辺功氏
  • サポートスタッフのみなさんと受賞記念撮影
 RBB TODAY編集部が主催する「ブロードバンドアワード」において、2008年度関東地区のベストキャリアはイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム)が選ばれた。イッツコムは、横浜、川崎、世田谷区、渋谷区、目黒区、大田区など東急線沿線にサービスを展開するケーブルテレビ事業者だが、10年ほど前からインターネットキャリアとして回線サービスを提供している。視聴世帯数は約61万世帯、契約加入者数は21万5千世帯(2009年2月末現在)となっている。

 ブロードバンドアワードは読者(ユーザー)投票による得票数によって決まるシステムだが、関東地区はNTTやKDDI、USEN、J:COMなど大手キャリアがひしめく激戦区だ。そこでのベストキャリア受賞について、イッツ・コミュニケーションズ 代表取締役社長 渡辺功氏に企業戦略や今後の展望を聞いてみた。

——大手キャリアを押しのけての受賞ですが、その背景にある企業戦略について教えてください。とくにこの不況下において特別に考えているものはあるでしょうか。

渡辺氏:イッツ・コミュニケーションズは、ケーブルテレビ局として開局して22年になりますが、当初は「東急ケーブルテレビジョン」という社名だったように、鉄道を基盤とした東急グループの「まちづくり」のひとつの事業として始めています。テレビ番組やインターネットサービスといったビジネスだけを考えるのではなく、大前提として沿線の住環境や生活環境を整備し住みやすいまちづくりというゴールをグループで共有しています。短期間のビジネスではなく長期的な地域密着型のサービスを提供しないと、ユーザーも我々も簡単にエリアや事業を変えることができない分、ビジネスが続けられません。沿線の街全体でものごとを考えた事業戦略が不可欠なのです。単にキャリア事業で収益を上げるだけでなく、沿線住民や商店、企業のサービスインフラとして、地域の付加価値を高めることが求められています。その意味で、地域住民の方のライフスタイルの変化に合わせたサービス戦略を展開しています。ケーブルテレビ、インターネット、IP電話とサービスを広げてきました。ライフスタイルの部分では、これからはモバイルも重要と考えています。いまの中高生は「ケータイ世代」といわれていますが、このようなユーザー層が今後世帯の中心になることを考えると、FMCを考えたサービス開発は重要です。不況下での戦略ですが、細かい事業戦略は時代ごとに臨機応変に立てていくだけです。これは、昔から変わらない部分です。特別な戦略はありませんが、さきほど述べたような「まちづくり」というコンセプトは大事にしていくつもりです。

——FMC、モバイルにつては具体的な戦略はありますか。

渡辺氏:ユーザーのライフスタイル、とくに世代ごとの違いをみると携帯電話の役割やFMCサービスを考えないわけにはいきません。固定系のIP電話も3年ほど前に始めたばかりで、具体的な戦略はこれからの部分もあります。昨年、auショップを1店舗ですが事業として開始し、携帯電話の契約とIP電話やインターネット接続といっしょにしたサービス提案を行っています。

——FTTH回線やIP電話サービスでKDDIとの連携が強い印象がありますが。

渡辺氏:回線の信頼性という基本的なポイントもありますが、ケーブル局に対してIP電話や回線を提供できるキャリアがそもそも少なく、技術やノウハウ部分で選定させていただいた結果です。

——地デジ対策としてのケーブル局のサービスは加入のドライバになっていますか。

渡辺氏:確かに加入のドライバにはなっておりますが、ご存じのように首都圏においては、NTTなどエリアも規模もケタ違いの事業者がおりますので、地デジ対策という側面だけでは充分ではありません。地上波のテレビコマーシャルなどで大々的に宣伝されると、規模の小さい事業者はとても対抗できません。デジタル放送自体は重要なサービスと位置付けていますが、イッツコムのメインはあくまでも多チャンネルの放送サービスなので、そこへの誘導や継続的なサービス利用をしていだくように目指しています。ただ、加入のきっかけづくりにはなっているようです。むしろ、昨年くらいまでは、いち早く提供したハイビジョン番組サービスが好評で、契約を伸ばしています。地域的な特性があるのかもしれませんが、東急沿線には、新しい製品やサービスに敏感な人が比較的多いと思います。例えば、HFCをベースにしたケーブル局では、うちはデジタル化がもっとも進んだ(85%:2008年12月現在)事業者だと思います。このような環境やユーザーさんのリテラシーが比較的高い地域では、それを意識した長期的なビジネスを考えなければなりません。

——VODサービスの展開は考えていますか。ケーブル事業者によっては、これに力を入れているところもあるようですが。

渡辺氏:VODサービスはこれからのビジネスでは必須と考えています。開始の具体的な時期というのは現段階では申し上げにくいのですが、やはりNHKオンデマンドのサービス開始は大きいと思います。これによってテレビの視聴スタイルや習慣が変わってくるとすると、オンデマンドでのコンテンツ視聴・配信というのは避けて通れないと思っています。現状では、VODサービスによる視聴スタイルが浸透しているとは言い難いかもしれませんが、若い世代のことを考えると無視するわけにはいかないでしょう。

——エリアや市場が地域に限定されやすいケーブル事業者は、個人顧客が一定のレベルに達するとソリューションやサポートなどへ広がる法人向けサービスに力を入れるところもあります。法人向けサービスの戦略などはありますか。

渡辺氏:やはり事業目的の基本がBtoCにあるので、たとえば積極的に法人営業などをかけるということはほとんどありません。むしろ、市役所、区役所、あるいは小学校、幼稚園といったところへのサービス展開が主な法人向けサービスということになります。世田谷区役所には4ヵ所に緊急地震速報のサービスを提供していたます。川崎市の中原・宮前区役所、横浜市青葉区・緑区役所では、住民票や戸籍謄本のサービス窓口を行う住民課の番号札端末に、イッツコムのコミュニティチャネルを配信しています。住民の方は、待ち時間に番組を視聴したり地域のお知らせ情報を得ることができます。また、エリア内で10か所以上の幼稚園から小・中・高等学校にも緊急地震速報の端末設備を導入しています。コミュニティチャネルや学校インターネットの導入もお手伝いすることで、教育に役立ててもらっています。

——サーバーホスティングや回線のホールセール(卸売)などはどうですか。

渡辺氏:自社でデータセンター設備を持っていまして、一部の企業にホスティングサービスを提供させていただいております。また、回線の卸売りも地域のローカル局やプロバイダに行っていますが、これらは営業的な展開というより、地域サービスの一環としての事業という側面が強いものです。近隣CATV局とヘッドエンドの共用なども行っていますが、資本的な業務提携や買収ということではなく、技術的な提携や横のつながりを重視した戦略をとっています。過去にケーブル局の再編が進んだ時期もありました。小さい事業者は合併や吸収によって生き残りを図ったわけですが、M&Aではない共存の形ということでしょうか。地域の市場とサービス品質を保つ意味もあると思っています。

——IPTVの動向についてはどうお考えでしょうか。

渡辺氏:これもユーザーのライフスタイルという視点で考えています。FMCもそうですが、しくみや技術がどうこうというより、住民の方が生活の中でどのような番組をみているのか、見たいのか、どんなサービス形態が提供できるのか、が重要です。HFCのインフラがベースにはなりますが、特定の番組の配信技術やプロトコルに固執することはないと思っています。ユーザーは番組を放送、配信している個別の技術や手法などは関係なく、生活スタイルにあった形で好きな番組が見られるかが重要なのではないでしょうか。

——最後に、ベストキャリア賞をケーブル局が受賞したのは初めてなのですが、その理由はなんだと思いますか。

渡辺氏:やはり、地域に根差した事業展開に尽きるのではないでしょうか。お客様への対応力やサポート力は全国展開するキャリアさんには難しい部分もあります。あと、ユーザーや住民の方にとって身近な存在でもあるので、顔の見えるようなサポートを心がけています。狭いエリアですが、昨年から支局というのを導入しています。まだ中原支局と港北支局の2か所だけですが、営業拠点としての活動のほか、地域の情報収集窓口としても機能させています。先ほど、地域的なユーザーの特性としてリテラシーが高いというようなことを言いましたが、その反面契約ユーザーのボリュームゾーンが40〜50代以上という統計もでています。セットトップボックスの操作説明やサポートだけでなく、現場では録画装置の操作方法やトラブルまで対応することがあります。つきなみですが、こういった地道な活動が今回の評価につながったのだと思います。365日現場で頑張ってくれている従業員、そして当社サービスをご利用いただいたお客様に本当に感謝しております。今後も、全員が一丸となってお客様にご満足いただける質の高いサービス・生活環境の創造に貢献していきたいと考えております。
《中尾真二》
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