帯広から世界の農家へ!トラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」が目指すグローバル市場 | RBB TODAY
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帯広から世界の農家へ!トラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」が目指すグローバル市場

IT・デジタル その他
大規模農業では適切な経路を走るだけで非常に大きな影響がある
  • 大規模農業では適切な経路を走るだけで非常に大きな影響がある
  • 農業情報設計社が提供するトラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」
  • 農業情報設計社 代表取締役 CEO、ファウンダーの濱田安之氏
  • トラクターを正確に走らせるのは、とても難しい。しかしそれができないと、収益減につながってしまう
  • AgriBus-NAVIの利用イメージ。「一定の幅で塗りつぶしましょうという、言わば地面を使ったお絵かきソフトです」(濱田氏)
  • 9割は海外からのアクセスとなっている
  • 農業ITベンチャー企業として、海外でも賞を獲得している農業情報設計社
  • 耕うん車内の様子。ハンドル前方にタブレットを設置
 北海道帯広の大地に、IT技術を駆使したアプリの開発を手がける熱いベンチャー起業家がいる。元農林水産省の研究員が3年前に立ち上げた農業情報設計社は、現在、トラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI(アグリバスナビ)」でグローバルでのシェアを伸ばしている。会社を立ち上げたきっかけは?農業支援に情熱を傾ける原動力は?都内で創業者に話を聞いた。

■大規模農業が広まる帯広で、先進的な農家からフィードバックをもらう

 農業情報設計社は2014年4月に設立された。農家に向けて農作業を支援するシステムを提供し、企業に対しては農業機械の情報化・自動化(ロボット化)に関する知見の提供などをおこなっている。創業者の濱田安之氏がCEO(最高経営責任者)を務める、わずか5名(うちパート1名)のベンチャー企業だ。

農業情報設計社 代表取締役 CEO、ファウンダーの濱田安之氏
農業情報設計社 代表取締役 CEO、ファウンダーの濱田安之氏


 帯広で起業した理由について、濱田氏は「こちらの農家は規模が欧米並みに大きく、考え方も先進的。新しい技術を提供していく立場としては、帯広の現場にいることで、農家の方から忌憚のない意見がいただける。はじめは東京で起業することも考えましたが、帯広の方が良い環境だという結論に至りました」と説明する。濱田氏以外の開発メンバーは帯広ではなく札幌市に在住し、リモートで業務をおこなっている。勤務先をしばることで採用に制限がでるよりも、一緒に働きたい人と働くことを優先した結果このような形態になっているという。

■等間隔な走りが“収益に直結”する

 まずはアプリの概要と狙いについて聞いた。「AgriBus-NAVI」は、Android OS 4.0.3以降のタブレット・スマホに対応したアプリ。トラクターの真っ直ぐで等間隔な走行を支援するとともに、どこまで農作業が終わったかを”見える化”できる。「トラクターを正確に走らせるということは、イチバン基本的なことですが、実はとても難しいことでもあります。前だけでなく、横や後ろも確認しながら走らせる必要があるからです。そして速度にも気を付けなければなりません」と濱田氏。ではトラクターを歪んで走らせてしまうと、どんな問題が発生するのだろうか。「収益減に直結します。例えば走路の間隔が詰まると肥料や薬剤だけでなく燃料も無駄になり、農作物の品質も低下します。逆に間隔が空くと雑草が生え、病害虫が発生し、やはり収穫に影響が出ます」。

トラクターを正確に走らせるのは、とても難しい。しかしそれができないと、収益減につながってしまう
トラクターを正確に走らせるのは、とても難しい。しかしそれができないと、収益減につながってしまう


 等間隔で真っ直ぐにトラックターを走らせるだけで、5~10%程度の資材や時間の削減につながるという。資材費に年間莫大なコストがかかる大規模農家にとってみると、その影響はかなり大きなものとなる。

 筆者には畑違いの話であり、これまで考えてみたこともなかったが、言われてみればなるほど確かにトラクターを真っ直ぐに走らせるには、相当の技術と経験が求められそうだ。特に目印のない広大な農地を耕すときなど、その心細さは素人にも想像できる。このため海外でも、10年くらい前から農業支援システムの開発が進められてきた。「北海道の大規模農場の経営者にも、海外から高価なシステムを個人輸入する方が増えてきました。しかし海外で市販化されているGPSガイダンスシステムは大掛かりな機械で、安くても50万円、オプションをつけると200万円を超えてしまうものもあります」。

農業情報設計社が提供するトラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」
農業情報設計社が提供するトラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」


 そこでAgriBus-NAVIの開発に至った。濱田氏は「ガイドラインに沿って運転・作業することで、正確で無駄のない作業を実現します」と説明する。揺れるトラクター内で画面を注視しても酔わないように、そしてボタンの押し間違いを防ぐためにも、UIは敢えてシンプルにした。それでいて、競合製品よりも高機能を目指している。UIの使いやすいデザインは、実際に自分でもトラクターを運転する経験が活きた。機能面については、利用者から寄せられる声をヒントにバージョンアップを重ねていった結果だという。

AgriBus-NAVIの利用イメージ。「一定の幅で塗りつぶしましょうという、言わば地面を使ったお絵かきソフトです」(濱田氏)
AgriBus-NAVIの利用イメージ。「一定の幅で塗りつぶしましょうという、言わば地面を使ったお絵かきソフトです」(濱田氏)


 デモを拝見した。基準となる2箇所が決まると、それを元に等間隔にガイドラインが引かれる。あとはガイドラインに従い、トラクターを走行させれば良い。「いつ畑に入り、いつ出たか。水はけの良さの参考となる高低差、種を蒔く際に気を付けるべき走行速度も表示されます」と濱田氏。なるほど、農作業に特化したカーナビシステムといったところか。
《近藤謙太郎》
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