帯広から世界の農家へ!トラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」が目指すグローバル市場 2ページ目 | RBB TODAY
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帯広から世界の農家へ!トラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」が目指すグローバル市場

IT・デジタル その他
大規模農業では適切な経路を走るだけで非常に大きな影響がある
  • 大規模農業では適切な経路を走るだけで非常に大きな影響がある
  • 農業情報設計社が提供するトラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」
  • 農業情報設計社 代表取締役 CEO、ファウンダーの濱田安之氏
  • トラクターを正確に走らせるのは、とても難しい。しかしそれができないと、収益減につながってしまう
  • AgriBus-NAVIの利用イメージ。「一定の幅で塗りつぶしましょうという、言わば地面を使ったお絵かきソフトです」(濱田氏)
  • 9割は海外からのアクセスとなっている
  • 農業ITベンチャー企業として、海外でも賞を獲得している農業情報設計社
  • 耕うん車内の様子。ハンドル前方にタブレットを設置
■収益は月額500円のサブスクリプションモデル。蓄積データで新たなビジネスモデルを模索

 アプリは無料でダウンロードできる。年間6,000円(月額500円)で広告の非表示と作業履歴の管理機能(無制限。無料プランでは2日)にも対応している。誤差を数cmにおさえた農作業を実現するには、スマートフォン・タブレットに搭載されたGPSでは精度が低すぎるという。そのため外付けの精密な機器を使用する必要がある。たとえば、同社が取り扱うHemisphere V104なら約25万円で利用できる。それを利用しても、従来の費用と比較すると格段に安く農業支援システムを構築できるというわけだ。また、GPSのハードウェアについては自社での開発も鋭意おこなっている。

耕うん車内の様子。ハンドル前方にタブレットを設置
耕うん車内の様子。ハンドル前方にタブレットを設置


 なお農業情報設計社では、農作業にまつわるデータ(時間、場所、軌跡、速度など)を集めて次の展開に利用できないか模索している。濱田氏は「親から畑を受け継いだけれど、いざトラクターを動かしてみると設定に迷った。やってみたら上手くいかない、どうしたら良いんだと途方に暮れる。あるいはメーカーが所有しているトラクターを農家に提供した、けれど使い方が分からなくて混乱してしまった。これまではトラクターを動かす人の勘と経験に頼る部分が大きかったため、こうした事態も招いていた。蓄積したデータを使えば、そうしたケースでも農作業をサポートできるのではないか」と説明していた。

 さらに、農作業にまつわるデータから、来年の野菜や穀物などの収穫予測を立てることもできる。そういったデータであれば、食品業界などにも価値を提供できるのではと濱田氏は考えている。

肥料の散布など、目視では境界線が分かりづらい
肥料の散布など、目視では境界線が分かりづらい


■目標はグローバルで1億ダウンロード

 原稿執筆時点でAgriBus-NAVIのダウンロード数は7万件に到達、アプリの評価も5点満点で4点を超えている。その9割は海外からのアクセスで、国別ではブラジル、スペイン、アメリカ、ポーランド、日本の順に利用者が多いとのこと。ちなみに同社ではグローバルの農業人口13億人のうち、約10%のシェアを獲得することを目標にしている。「日本市場にも、まだのびしろがあります。国内の農業人口は300万人前後なので、国内だけでも30万前後は狙っていける。現在、国内のアクティブユーザー数は2000前後です。北海道以外では、八郎潟など大きな農地で利用が広がりつつあります」。

9割は海外からのアクセスとなっている
9割は海外からのアクセスとなっている


 設立からわずか3年で会社を急成長できた背景には、AWS(アマゾンウェブサービス)を効果的に使えたという事情もあったようだ。濱田氏は「コンパクトな会社がワールドワイドでの展開を前提とした事業をするために、AWSなしでは成り立たなかった。大きな負荷をかけず、幅広なサービスを構築できています」と話していた。同社では現在、AWSを利用してフランクフルト/サンパウロ/オレゴンの3箇所にデータを置き、世界各地からのアクセスに対応している。

■その情熱はどこから?

 雑談の合間にも「水をはったままの田んぼに、田植え機を入れて代掻き(しろかき)をしていると船酔いするんですよね。波が立つと、どっちを向いて走っているかも分からなくなる」などと楽しそうに話す濱田氏。「将来的には、その畑に最適な経路をレコメンドするところまでAgriBus-NAVIを進化させたい。同時に、トラクターの全自動運転にも対応していけたら」と更なるバージョンアップの構想にも余念がない。その農業にかける情熱はどこから来ているのだろうか。

 もともと国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構や、農林水産省で研究者として勤めていた肩書を持つ同氏。その経歴を見る限りでは華麗なる転身といったイメージがついてまわるが、実情は少し違うようだ。「農家さんと同じ方向を向けているのか、いつも違和感を抱いていました。前職ではとにかく論文執筆を課されることが多くて。それよりも自分の手で直接、何か役に立つサービスを生み出したかったんですね。早い話が、自分はそこでポテンシャルを発揮できる人間ではなかった。いまの仕事は、自分の精力を注げる仕事」と濱田氏。自分の仕事に意義を見出し、パフォーマンスを出し切ることが自分の幸せにもつながる、そんな想いからベンチャー企業の立ち上げを決断したという。

 そのうえで「理想ばかり語っていてもダメ。収益を出さないと独りよがりになる」と自戒も口にする。「かみさんには、ポテンシャルがあることは分かった、あとは収益を出してこいと言われる。ごもっともな意見。ようやく下地になる要素が出来てきたので、今後は、それをきちんと皆さんに届けていけるように頑張ります」と笑顔になった。
《近藤謙太郎》
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