「ただの食事から一歩踏み込む」が外国人を呼ぶ……新宿つな八(後編) | RBB TODAY

「ただの食事から一歩踏み込む」が外国人を呼ぶ……新宿つな八(後編)

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「国を超えて天ぷらという文化を伝えていきたい」と語る社長の志村久弥氏
  • 「国を超えて天ぷらという文化を伝えていきたい」と語る社長の志村久弥氏
  • インバウンド客がひっきりなしに訪れる、天ぷら新宿つな八総本店
  • 姉妹店「つのはず庵」。職人の技術の粋を目の前で見ることができる
  • インバウンドのツアーで築地を案内することも
  • 競りの様子が見られることもある
 目の前で天ぷらを揚げるライブ感や伝統ある店構え、リーズナブルなプライスで多くの外国人観光客を集める「天ぷら新宿つな八」。そこでインバウンドに人気となっているプログラムがあるという。それが、つな八と関係のある魚河岸の店を回る築地体験ツアーだ。

■天ぷらの文化を伝える意義

 天ぷら新宿つな八の代表取締役社長 志村久弥氏によると、これは「親子体験食味学習会」として、およそ10年前から行ってきた取り組みが元になっているという。常連客の親子と一緒に築地を訪ね、まずは調理前の食材と触れ合う。その後に好きなものを持ち帰り、つな八の厨房で、実際に彼らが天ぷらを揚げるというものだ。

 その中で、西町インターナショナルスクールという外国人学校との出会いが、今のインバウンドツアーの一つのきっかけになった。魚をさばくこと、下ごしらえをしたタネを油に入れること。それら、一つ一つに子供から保護者までがリアクション良く反応し、高い評判を集めたという。

「ただの食事から一歩踏み込むことを、インバウンドの方々が求めている。そういう認識はずっと持っていましたが、それが確信に変わりましたね。食べるだけでなく、厨房の中に入ってもらうことで、天ぷらという文化の奥深さを知ってもらうこと。そこには大きな意義があると思います」

 つな八ではシズル感を大切にするため、目の前で食材をさばくところから始める。しかし、穴子の仕込みなどでは、時に「え、あの蛇みたいなのを食べるの?」と敬遠されることもあるようだ。他にも、お国柄から一味やカレー粉などを求められることもあるという。

 そこには国によって異なる食文化の問題もあるのだろう。ただ、その中でも天ぷらという文化を伝えることも大切にしていきたいと、志村氏は話す。


■海外進出と職人に受け継がれるイズム

 つな八では今、海外進出の計画が進んでいる。昔から店には台湾からの観光客が多く訪れていることから、今後1~2年のうちに同国へと出店。日本でつな八の味を楽しんでもらった人に、母国でリピーターになってもらいながら、ファンを増やしていくのが狙いだ。

 海外出展に際して、志村氏が重視しているものの一つが、現地で店を任せるスタッフだ。日本人の繊細さ、食文化論、おもてなし技術、粋へのこだわりなどを理解してもらい、母国に戻って腕を振るわせる。そのためにも、現地の調理人を留学させて、本店で3年ぐらいは修業させることを計画しているようだ。

 つな八の職人育成にはあるこだわりがある。それは、彼らの95%が店のたたき上げということ。厨房には職人をじっくり育てる文化があり、そこで言わば“つな八イズム”をじっくりと教え込んでいくという。

「やっぱり中途採用すると、どこかの店の色が付いているんですよ。それでは、うちの文化に馴染むことに抵抗があったり、長続きしないことも多くてダメなんです」

 取材の中で志村氏は、この“つな八イズム”を繰り返し口にしている。それは、揚げ立てのシズル感を重視した調理場かもしれないし、個性を重視したスタッフィングも欠かせないし、歴史が培ってきたおもてなしの心もあるのだろう。それらを一つ一つ疎かにせずに、イズムとして徹底していることが、インバウンドの人々を魅了している根源となっている。

「いつかは世界中に出店して、いろいろな国の職人に修行をしてもらいたいですね。フランス人やアメリカ人のシェフがてんぷらを揚げていて、その前では外国人のお客様がきちんと日本の文化を楽しんでいる。それって、絵としては面白いと思いませんか?」

 インバウンドが来て、海外にも進出して、それでも貫かれる“つな八イズム”。それを暗黙の了解としてあやふやにしないことが、観光客が求める“日本らしさ”や“本物”を突き詰めるには重要なのかもしれない。

【新宿つな八(後編)】国を越える“つな八イズム”

《丸田鉄平/H14》

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