【テクニカルレポート】NTT東日本 「タイムライン連携システム」による地域医療連携への取り組み ……NTT技術ジャーナル | RBB TODAY

【テクニカルレポート】NTT東日本 「タイムライン連携システム」による地域医療連携への取り組み ……NTT技術ジャーナル

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図1 NTTグループによる健康医療クラウド
  • 図1 NTTグループによる健康医療クラウド
  • 図2 タイムライン連携システムの構成イメージ
  • 図3 タイムラインビューアの連携画面イメージ
  • 図4 タイムラインビューアのズームイン・ズームアウトイメージ
 NTT東日本は、これまで地域中核病院、診療所、家庭とそれぞれのフィールドで医療・ヘルスケアビジネスに取り組んできましたが、そのノウハウを結集させ、さまざまな医療機関で情報をスムーズに共有できる地域医療連携基盤「タイムライン連携システム」を開発し、2011年6月より運用トライアルを開始しました。本システムは、異なる医療機関における患者ごとの医療情報を時系列で把握でき、より正確でスムーズな情報共有と質の高い医療提供が可能になるとともに、BCP(Business Continuity Plan)対策にも有効です。

■地域医療連携におけるICT活用の重要性
 少子高齢化社会が進行する中、医療・介護を取り巻く分野では生活習慣病の増加、医療資源の偏在といった問題が顕在化しています。その問題を解決するには、1つの医療機関がすべての医療を提供するのではなく、それぞれの機関が持つ特性を活かして役割分担することで、患者の病気の早期発見・早期治療を行うことが大切です。このような地域医療連携の実現に向けてICT活用に対する期待が高まっており、厚生労働省が地域医療再生基金を設置し、各地のICTを活用した地域医療連携を推進しています。

■NTT東日本の医療・ヘルスケアビジネスへの取り組み
 そのような社会情勢の中、NTT東日本としてはこれまで医療・ヘルスケアビジネスに積極的に取り組んできました。2008年には岩手県遠野市、2010年には宮城県栗原市に「遠隔健康相談システム」を導入しました。特に遠野市では実施6カ月後に、体重、BMI、最高血圧、最低血圧、歩数のすべての測定データで数値が改善され、その効果が注目を集めました。

 2009年にはNTT-MEより診療所向け電子カルテサービス「Future Clinic 21ワープ」の提供を開始しました 。このサービスはASP(Application Service Provider)型の電子カルテサービスであるため、ネットワークを介したサービス利用と、データセンタにおけるデータバックアップを実現しています。その特徴から、2011年3月11日の東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市において、避難所での巡回診療を担当する医療救護班をサポートするツールとして利用され、診療情報の共有がスムーズに行われました。またこれまで社内病院の医療情報システムを構築してきた経験から、そのノウハウを中規模から大規模の他病院にも展開しています。

 タイムライン連携システムとは、前述のように家庭、診療所、病院とNTT東日本がそれぞれのフィールドで取り組んできたノウハウを結集させた、新しい地域医療連携基盤です。診療所や病院といったさまざまな医療機関におけるスムーズな医療情報の共有を可能とします。NTT東日本は2010年度より、社会医療法人財団慈泉会相澤病院と日本大学医学部根東義明教授の協力のもと、タイムライン連携システムの開発を行ってきました。2011年6月10日より地域の中核病院である相澤病院と長野県松本市内の8診療所の協力をいただき、運用トライアルを開始しています。

■タイムライン連携システムの特徴
 タイムライン連携システムでは、地域中核病院と連携先の診療所の間をフレッツ光を用いたVPN(Virtual Private Network)サービス「フレッツ・VPN ワイド」で接続し、データセンタ側でどの医療情報がどの医療機関で管理されているかという所在情報を管理しています(図2)。

 本システムでは各医療機関でメーカやベンダが異なる電子カルテに蓄積された医療情報を結合し、1つの画面に時系列で表示することにより、患者ごとの過去の医療情報を視覚的に表現します。この時系列表示の機能をタイムラインビューアといいます(図3)。医療機関の医師は、一覧で表示された過去の診療行為とそれに伴う患者の病態変化を、経時的かつ正確に把握することができ、それらを踏まえた治療計画の作成、さらには症例研究へと活用することができます。

 以下に本システムの主な特徴を整理します。

(1) タイムラインビューア
・「分・時間単位」「日単位」「月単位」「年単位」など自在にズームイン・ズームアウトができ、瞬時に全体を俯瞰したり、気になる範囲の詳細を把握したりすることができます(図4)。
・参照したい項目を、ドラッグ&ドロップで簡単に選択、保存することができ、疾病ごとに管理したい項目だけを見やすく並び替えることができます。これにより、投与している薬剤がいつからなのか、過去の検査はいつ実施されたのか、これまで飲んだ薬剤は何かなど、従来の電子カルテでは検索でしか確認できなかった情報について、時間軸をベースに表示することが可能となります。
・上記のとおり並び替えた任意の表示項目をボタンとして登録できます。これにより、複数の患者の医療情報も同一の項目で素早く表示することができ、特定の疾病患者の診療計画を立てるのに役立ちます。
・タイムラインビューアはもともと前述のFuture Clinic 21ワープで採用されていた機能ですが、タイムライン連携システムでは連携先の医療機関の医療情報が表示されるよう追加されています。

(2) 患者ID連携機能
・医療機関ごとに異なる患者コード(患者ID)を関連付けます。これにより、連携先の医療機関どうしにおいて患者単位で医療情報を管理することが可能になり、医師どうしや医療機関どうしで容易に、かつ綿密に情報共有を行えるようになります。

(3) ベンダフリー
・電子カルテメーカやベンダに依存しないオープンな環境として、SS-MIX*1に準拠しています。日本では医療情報の共有に関して電子カルテのフォーマットが統一されておらず、共有できる仕組みがまだ整っていないのが現状です。本システムでは各医療機関で個別に蓄積されてきた医療情報のデータでも、そのまま活用できる気軽さがあります。

(4) セキュアな認証・開示制御
・NTT研究所にて開発した医療情報連携基盤(SAML2.0*2、ID-WSF2.0*3準拠)の採用により、高セキュリティな連携環境を実現することが可能です。

■タイムライン連携システムによるBCP対策
 以上のようなタイムライン連携システムの特徴は、BCP対策という側面においても有効です。このたびの東日本大震災を機に企業のBCP対策への関心が高まっていますが、災害発生時に負傷者対応等の重要な役割を担う医療機関においては、BCP対策は特に重要なものとなります。

 本システムでは安全性・信頼性の高いNTT東日本のデータセンタの活用により各種ガイドライン*4に準拠したプライベートクラウド構成をとることができます。医療情報を遠 隔 地 に バ ッ ク ア ッ プ す る こ と で 、 震 災 直 後 で も バ ッ クアップされた患者の電子カルテデータの参照が可能になると期待されています。


■今後の展開
 NTT東日本と相澤病院は今回の運用トライアル開始に合わせて協定を締結し、今後のタイムライン連携システムに関する改善、連携医療機関の拡大等に向けて協力することとしました。またNTT東日本は、NTT東日本関東病院をはじめとする社内病院に本システムを展開していくとともに、各地域においても中核病院をはじめとした導入事例を増やすべく、努めていきます。2012年3月末を予定している運用トライアルの終了後は、実運用として4病院、94診療所、16薬局へと拡大する予定です。医療機関のBCP対策の1つとしても展開を図っていきたいと考えています。

 今後、本システムが各地域の医療機関に導入されていくことにより、医療機関では患者の既往歴や過去の診療内容等について、異なる医療機関の電子カルテに蓄積された情報であっても、国内で初めて連続する時系列上に結合して表示し、治療方針の確認をしながら診療することが可能となります。また患者側としては診療所から病院まで連続してより良い医療を受診することができるようになり、重複検査の解消にもつながります。結果として、診療時間の短縮や医療費負担の軽減という効果ももたらすと考えられます。

 NTT東日本は、タイムライン連携システムにより医療・介護を取り巻く分野の問題を解決し、日本の地域医療の発展に役立てることを目指しています。


*1 SS-MIX:厚生労働省電子的診療情報交換推進事業のもと開発された標準規格。
*2 SAML2.0:標準化団体である「OASIS」により策定された複数サイトにおける認証手続きを一度に集約するシングルサインオンの仕組みや、各サイトの認証情報を連携する仕組み、ユーザ情報の安全な交換の仕組みについて規定。
*3 ID-WSF2.0:ユーザ認証技術の標準化団体「Liberty Alliance Project」により策定された、サイト間でユーザの属性情報を安全に交換する方法を定めた国際標準規格のプロトコル。
*4 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第4.1版(平成22年2月 厚生労働省)、ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(平成22年12月 総務省)、医療情報を受託管理する情報処理事業者向けガイドライン(平成20年7月 経済産業省)。

※本記事はNTTグループの発行する「NTT技術ジャーナル Vol.23, No.12, pp.50-53, 2011」の転載記事である。
《RBB TODAY》

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