【テクニカルレポート】宇宙線による情報通信機器のトラブルを未然に防ぐ技術を開発-小型加速器中性子源を用いた効率的なソフトエラー試験技術を確立……NTT技術ジャーナル | RBB TODAY
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【テクニカルレポート】宇宙線による情報通信機器のトラブルを未然に防ぐ技術を開発-小型加速器中性子源を用いた効率的なソフトエラー試験技術を確立……NTT技術ジャーナル

エンタープライズ ハードウェア
図 実験概要
  • 図 実験概要
 NTTは,国立大学法人北海道大学と共同で,北海道大学所有の小型加速器中性子源を用い,将来顕在化が想定される宇宙線(中性子)による基幹ネットワーク機器のトラブル(ソフトエラー*)の再現実験を実施し,その事前対処を可能にする試験技術を確立しました.

 本技術により,ソフトエラーによる故障が懸念される高機能・高性能の基幹ネットワーク機器などについて,実際に使われる前にその故障発生率を予測することができるだけでなく,ソフトエラーが発生することを前提とした,エラー検出や運用対処の効率的な確認が可能となり,さらなる信頼性の向上が可能になります.

 また,今回の研究開発を通じて小型加速器中性子源が極めて役に立つことが再認識されたことから,今後の利用範囲拡大が期待されます.

* ソフトエラー:電子機器中のLSIやメモリなどの半導体デバイスが,地上に届く二次宇宙線の中性子線や材料中の放射性不純物起因のα線によって発生する電荷が原因で,誤動作を起こす現象のこと.半導体加工技術の微細化や半導体デバイスの高集積化の進展に伴って増加する傾向にあり,ソフトエラー対策の重要性が高まっています.


■研究の成果
 共同研究では,(1)小型加速器中性子源で自然界でのソフトエラーの再現,(2)ソフトエラーによる故障発生率の予測,(3)ソフトエラー耐力,(4)ソフトエラーによる故障発生時の障害処理の4つの確認を目的とし,複数の装置への効率的な照射・測定を可能にする並列照射システムを構築し,ソフトエラー実験を実施しました(図).

 実験により得られたソフトエラー発生時の影響から,半導体デバイスの再起動・再設定を行うなど適切な対処を選択し,対策前および対策後の影響評価試験を行いました.

(1) 小型加速器中性子源で自然界でのソフトエラーを再現:北海道大学所有の小型加速器中性子源(1kW)でソフトエラーを再現できることを確認しました.

(2) ソフトエラーによる故障発生率の予測:小型加速器中性子源での照射実験結果と,これまで用いていたソフトエラー発生率のシミュレーション結果はほぼ一致していることを確認しました.これにより,新規導入前の情報通信機器のソフトエラー発生率を正確に予測し必要な対処を事前に行うことが可能になりました.

(3) ソフトエラーに対する耐性:事前対処による,各装置のソフトエラーに対する耐性を確認しました.

(4) ソフトエラーによる故障発生時の障害処理:ソフトエラーによる2bit以上のエラー発生時の障害処理についても,現在開発中の各装置において実際に使われた場合に発生し得る事象を検出し,対処の有用性も事前に確認しました.これにより,新規導入前に効率良く設計対処および運用対処を行うことが可能となりました.


■今後の展望
 小型加速器中性子源によるソフトエラー試験は,ソフトエラーの予測精度の確認や実際に使われた場合に発生し得るソフトエラーによる故障の検出が可能であるため,非常に効果の高い試験であり,今後,NTT研究所で開発する情報通信機器の開発・導入プロセスに本試験を順次組み込むことで,さらなる信頼性の向上を目指していきます.また,小型加速器中性子源の利用範囲を基幹ネットワーク機器に限らず高機能・高信頼性を求められる他の情報通信機器についても拡大し,小型加速器中性子源によるソフトエラー実験の有用性とソフトエラーによる故障に対する品質の向上に寄与していく予定です.


※本記事は日本電信電話(NTT)が発行する「NTT技術ジャーナル誌 Vol.25 No.5,pp.51-52,2013」の転載記事である。
《RBB TODAY》
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