【テクニカルレポート】ユーザーの感情を視覚化するユーザビリティ評価手法の開発……パナソニック技報 | RBB TODAY

【テクニカルレポート】ユーザーの感情を視覚化するユーザビリティ評価手法の開発……パナソニック技報

ブロードバンド テクノロジー

第1図 カメラ設置
  • 第1図 カメラ設置
  • 第2図 記録映像
  • 第3図 感情イラスト
  • 第1表 分析対象の表情・行動
  • 第2表 スマートフォンアプリ操作
  • 第4図 新・旧番組予約操作比較
ユーザーの感情を視覚化するユーザビリティ評価手法の開発

解析センター ユーザビリティサポートグループ 東章子

要旨
 「使って楽しい」「心地よい」「達成感がある」など,快適性・達成感を目指した製品開発が進むにあたり,これらの感情を評価する方法が確立されていないのが課題であった.そこで,「表情に感情が出る」ことに着目し,無意識に表れる表情・行動から感情を数値化して感情の変化を視覚化し,感情に影響を及ぼす場面を特定する評価方法を開発した.

1. 開発のねらい
 一般に,ユーザーインタフェースにおけるユーザビリティ評価では,主観評価や,操作時の手順行動・発話などからその使いやすさを評価し問題点の発見や改善方法の検討を行うことが多い[1].しかしながら,使いやすさという価値だけでなく「使って楽しい・快適・達成感がある」など感情面での価値を客観的,定量的に評価する方法については十分確立されていない.

 そこで,無意識に表出する「表情」や「行動(身振り)」に着目し,製品操作時の感情の変化を評価する方法を開発した.以下に本手法の概要を,AV製品を評価した実施例で紹介する.

2. 評価方法
 表情と感情は直結しており,心の状況を隠そうとしても表情に変化が表れ,意識的にコントロールしにくいため本音が出やすい[2].この「無意識に本音の感情が出る」表情を抽出し,心理状況を分析することで感情の視覚化が可能となる.

 反面,表情は他者とのコミュニケーションとしても表れるため,評価進行者と不必要なコミュニケーションが発生しない評価方法を構築した.

 また,評価方法の開発を進めていくなかで,行動にも無意識の感情が表れることもわかり,表情と行動を抽出・分析することとした.

2.1 記録方法
〔1〕 表情・行動のカメラ記録
製品操作時の(1)ユーザーの表情,(2)操作の様子,(3)製品状態が撮影できる位置にカメラを設置(第1図)し,同期録画をする(第2図).

〔2〕 表情・行動の観察
 評価室にはユーザーのみ入室する.評価進行者は別室で観察し,操作中に出現した表情・行動の具体的な状況を,出現時刻と併せて記録用紙に記録する.

2.2 感情の確認
 評価終了後,記録した映像をユーザーと一緒に見ながら操作を振り返り,表情・行動が表れたときと前後の状況・感情を確認する.この際,ユーザーと評価者で相互に感情を確認しやすいイラスト(第3図)を使用する.このイラストは,出現する頻度の高い感情を抽出・作成したものである.

3. 分析方法
3.1 分析対象の表情・行動
 出現する頻度が高く,かつ,主観評価と相関関係の高い表情・行動21項目を分析対象として抽出し,さらに3つのカテゴリに分類した(第1表).

3.2 感情の数値化・分析
 カテゴリ1は,出現回数1回あたり±2点を配点し得点を算出する.カテゴリ2・3は,表情・行動単独で感情判断ができないので,出現した表情・行動ごとに,感情イラストで確認した感情を,快適性・達成感に強く影響するものを±2点,それ以外を±1点と配点して得点を算出し,カテゴリ1と合算して感情得点累計とする.

4. 分析事例
 第2表は,スマートフォンユーザー5名と,スマートフォン・タブレット端末操作未経験ユーザー4名が,スマートフォンアプリを使ってテレビ操作をしたときに見られた操作行動,その行動をした属性と感情得点累計を表したものである.ユーザー層を問わずネガティブ感情のまま操作を続けている傾向が見える.なかでも端末操作未経験ユーザーは,多くの操作行動でネガティブ感情が出現し,ネガティブ感情が強く出る操作行動も特定することができた.

 併せて,表情の変化は一瞬に表れるため,感情が変化したタイミングを的確に特定でき,「どの操作タイミングで感情が変化したか」を明らかにできる.従来のユーザビリティ評価では難しい潜在的な不満を特定できた例を,第4図に示す.日常的にDVDレコーダを使用しているユーザーが,新・旧機種で番組予約操作をしたときの感情得点累計の推移を,操作フロー順に表したものである.主観評価ではほとんどのユーザーが「旧機種は普段と同じで変わりない」と回答しているため課題がないと判断するが,感情面から見ると,操作開始からネガティブ感情が継続しており「潜在的な不満があり,番組検索操作時にネガティブ感情が最も大きく,課題であること」がわかった.

5. 今後の展開
 紹介した記録・分析方法は,AV製品操作時に有用なものである.今後は,幅広い製品に対応できるよう,製品特性に応じた記録方法の開発や,分析対象とする表情・行動の選定などノウハウの蓄積を目指していく.


参考文献
[1] ヤコブ・ニールセン,“ ユーザビリティエンジニアリング原論―ユーザーのためのインタフェースデザイン,” 篠原稔和 他(訳), 東京電機大学出版局; 第2版,2002.
[2] ポール・エクマン 他,“ 表情分析入門―表情に隠された意味をさぐる,” 工藤力(訳), 誠信書房, 1987.


※本記事はパナソニック株式会社より許可を得て、同社の発行する「パナソニック技報」2013年4月/Vol.59 No.1収録の論文を転載したものである。
《RBB TODAY》

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