【SaaS World 2008 Vol.4】「2000年以降は間違いなくクラウドの時代」——ネットスイート | RBB TODAY
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【SaaS World 2008 Vol.4】「2000年以降は間違いなくクラウドの時代」——ネットスイート

エンタープライズ その他
米ネットスイートのCEOザック・ネルソン氏
  • 米ネットスイートのCEOザック・ネルソン氏
  • プロダクトマネージャーの村尾花子氏
 東京国際フォーラムで行われた「SaaS World/Tokyo 2008」の2日目、米ネットスイート(NetSuite)のCEOザック・ネルソン(Zach Nelson)氏による「ラリー・エリソンの次世代ソフトウェアカンパニーが提供する日本向けオンデマンド型ERPスイートとは」と題した基調講演が行われた。

 ネルソン氏は1998年にエバン・ゴールドバーグとオラクル社の会長兼CEOラリー・エリソン氏により設立されたネットスイート社の沿革を簡単に説明したあと、企業とコンシューマの両方をカバーし、大きな成功を収めている新しい企業として、アメリカではアマゾンとフェイスブック、日本ではmixiと楽天を例にあげ「このような企業はクラウドコンピューティングがないと存在しない」と、その重要性を語った。

 同氏は現在を1960年代のメインフレーム全盛期の集中処理の時代、1980年代のクライアント/サーバシステムなどによる分散処理の時代と並ぶ大きなパラダイムシフトの時代と捉えており、「クラウドコンピューティング自体は1950年代から存在するきわめて古いアイディアだが、2000年以降は間違いなくクラウドの時代だ」との認識を示した。

 次にネットスイート開発の経緯について「1995年ごろまでの企業は、経理部門はSAP、営業部門はシーベル、人事部門はピープルソフト、といったように部署ごとに単体のアプリケーションを使用するのが主流でした。もしこれらのソフトを連携させようとすると、導入費用の5倍から10倍の金額がかかったのです」「そこで、ひとつのアプリケーションですべての機能を利用できるアプリケーションスイーツのアイディアが生まれました」と語った。開発には10年の期間と1億ドルの費用が費やされたという。企業はネットスイートと契約を結ぶだけで、会計システム、ERP(Enterprise Resource Planning)、CRM(Customer Relationship Management)、Eコマースなど業務に必要なほとんどの機能を、インターネットを介してオンデマンドに利用できるようになるという。

 続けて、12月9日に発表されたネットスイートを日本向けにローカライズした「NetSuite Release J」のプレゼンテーションが行われた。ネルソン氏は「シングルスイートですべてを包含する日本初のSaaSアプリケーションです」とサービスの出来に胸を張った。「NetSuite Release J」は、資本提携しているトランスコスモス、ミロク情報サービスがローカライズに協力しており、日本市場向けに日本独自の商習慣に対応させた4つの機能が加えられている。

 1つは「日本の消費税への対応」だ。顧客ごとに端数の処理方法を定義したり、価格の内税と外税を変更することができる。消費税計算書を直接作ることも可能だ。次に「手形管理機能」。日本独特の決済手段である手形の振出と受取をサポートする。割引処理や業者に対する裏書譲渡なども可能となっている。「請求締め日設定」は「20日締め翌月末払い」のように顧客の締め日を設定して詳細な月次明細を作成したり、段階別のワークフローに従い顧客に対して適切なタイミングで明細書を作成できるようになっている。最後が「日本会計様式の財務諸表」。日本の書類様式と会計基準にあわせてローカライズされた損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書、資本変動計算書などの財務諸表を作成する事ができる。また、損益計算書の項目をドリルダウンしていき、契約の詳細を調べる機能もある。経理は弥生、在庫管理はOBC、Webは楽天、営業支援はセールスフォース、サポートセンターはエクセルといったように、複数の業務ソフトウェアを使用している典型的な中小企業などにアピールしていきたいと言う。

 プロダクトマネージャーの村尾花子氏による10分程度のデモンストレーションでは、ネットスイートの大きな特徴のひとつである、ユーザの所属する部署によって表示される項目が異なるダッシュボードに注目が集まっていた。ダッシュボードとはログイン時に最初に表示される画面のことで、経営者には財務諸表やKPIメーター、営業担当者には顧客リストや営業目標、倉庫担当者には出荷、受領、在庫情報、経理担当者には給与管理や財務情報など、各自の業務で主に使用する項目が抜き出されて表示される。もちろんデータの元となるデータベースは各所でリアルタイムに更新されている全社同一のものだ。また、ダッシュボードは各自で自由にカスタマイズも可能だという。

 企業のすべての業務をオールインワンで処理することができるネットスイートの利点として、ネルソン氏は「コストの削減」と「生産性の向上」の二つを、旭化成グループの米国子会社「Asahi Kasei Spandex America(AKSA)」の事例を挙げて紹介した。AKSAでは従来、売上の3%と190人の専任担当者をSAPの運用に費やしてきたが、ネットスイートに移行したことにより、コストを0.1%まで、担当者も75人まで削減できたという。また、米国市場ではハードウェアベンダー初となるHPとのアライアンスに合意したこと、日本では富士通とのアライアンスが進行中であることも報告された。

 最後にあらためてSaaSとスイートの組合せが、企業にとってより低いTCOと高い生産性を生むことを主張し、ネットスイートはSaaSスイートの世界的リーダー企業として、日本市場にも強力にコミットメントしていくことを強調した。
《田口和裕》
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