【インタビュー】クラウド時代の電子文書セキュリティ——配布後も制御可能なSaaS型サービスの実力 | RBB TODAY
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【インタビュー】クラウド時代の電子文書セキュリティ——配布後も制御可能なSaaS型サービスの実力

エンタープライズ その他
NECビッグローブの福嶋正晃氏と、リアルコムの吾妻徹氏に話を聞いた
  • NECビッグローブの福嶋正晃氏と、リアルコムの吾妻徹氏に話を聞いた
  • BIGLOBEドキュメントコントロールサービスの仕組み。文書ひとつひとつに「ポリシー」という鍵をかけ、その制御をBIGLOBEのサーバで一元的に管理する文書管理サービスだ
  • 「アップロード&ポリシー付与」画面
  • 「ポリシー情報」画面。配布したい文書とポリシーを選択してアップロードを実行すると、PDFに変更・コピー・印刷・オフライン操作の可否、閲覧期限が設定される
  • リアルコムの吾妻氏
  • AskMeのDCSソリューションの仕組み。社外メンバーに資料を配布した後も、確実に資料の閲覧を管理できるのが特長だ
  • AskMeの運用イメージ
  • NECビッグローブの福嶋氏
 電子文書のセキュリティ対策として、社外への持ち出しを物理的に禁止したり、サーバ上でアクセス制限をかけるといったことが広く行われているが、こうした「場所」による制御では、ひとたび管理された場所を離れてしまった文書の扱いは難しい。また、「社外の特定の人に文書を確認してもらいたい」「一定期間だけ閲覧可能にしたい」「配布後の文書を最新版に差し替えたい」といった情報共有に対応できないために、製品開発や顧客サービスに支障をきたすといった問題も生じてきている。

 こういった問題を解決するソリューションとして、NECビッグローブが企業向けに提供しているのが、「BIGLOBEドキュメントコントロールサービス」だ。電子文書を“場所”によって制御するのではなく、“文書”そのものに制御をかけてBIGLOBEサーバから一元的に管理するSaaS型サービスである。

 同サービスではWebAPIが公開されており、様々な企業向けソフトウェアと容易に連携できることも特長だ。機密文書を扱うソフトウェアにドキュメントコントロールサービスを組み込むことで、さらなる利便性の向上やより強固なセキュリティが実現でき、活用シーンの拡大など製品自体の競争力アップにもつながる。同サービスの活用例として、先ごろリアルコムより、ナレッジマネジメントソフトウェア「AskMe Enterprise」と同サービスを連携させたソリューションが発表されている。

 「ドキュメントコントロールサービス」の特長について、さらにWebAPIを活用したクラウド時代のソフトウェア連携の利点について、NECビッグローブ ビジネス事業部(基盤ソリューショングループ)マネージャーの福嶋正晃氏と、「AskMe Enterprise」を提供するリアルコム AskMe事業部 プロダクトマネージャーの吾妻徹氏に話を聞いた。

◆電子文書の利用権限をダイナミックに制御

 「ドキュメントコントロールサービス」は、アドビシステムズの「LiveCycle Rights Management ES」が提供するDigital Rights Management技術と、BIGLOBEのプラットフォームサービス基盤を組み合わせて構築されており、PDF形式の電子文書に対してインターネット経由で認証機能を提供する。

 その仕組みはこうだ。BIGLOBEの専用サーバ上でどの文書に対して誰がどのような権限を持つかを、あらかじめポリシーとして登録しておき、そのルールをPDF文書に適用する。こうしてできた権限付きPDFをAdobe Readerで開く際、閲覧者が入力したID/パスワードをもとに自動的にサーバへ認証問合せが行われる。認証が通れば、自分に適用された権限の範囲内で閲覧や印刷などの操作を行うことができ、認証が通らなかったり閲覧期限が過ぎていれば文書を開くことができない。

 このようにして、従来のように“場所”にとらわれることなく、配布済み文書に対しても後から権限の変更が行えるようになり、自由度の高いセキュアな文書管理が実現できることとなる。

◆WebAPIで実現するクラウド時代のソフトウェア連携

 BIGLOBEでは、同サービスのWebAPIを公開し、様々なソリューション開発ベンダーとの協業を進めている。その一環として11月には、リアルコムのナレッジマネジメントソフトウェア「AskMe Enterprise」(以下、AskMe)との連携が開始された。

 AskMeは、大手製造・製薬企業の研究開発部門を中心にコラボレーションプラットフォームとして導入が進んでいる。一例をあげると、世界最大の家庭用消費財メーカーP&G社では、世界中の研究者たちが、専門領域を超えてAskMe上でディスカッションを行うことで、新製品のアイデアを募集したり、課題解決の迅速化を実現している。これにより、年間100人分の研究開発工数(年間約10億円近いコストに相当)の削減や、毎月600以上の新しい重大問題の解決を実現するなど、大きな成果を上げているという。

 リアルコムの吾妻氏によると、「研究開発の現場は、従来の社内に閉じてしまうやり方ではなく、社外のメンバーともこれまで以上に積極的なアイデア・技術の共有を行って新製品を開発する“オープンイノベーション”にシフトしている」という。そうした背景もあり、リアルコムでは、社内外のメンバーがAskMe上でより安心してコラボレーションできる環境を提供すべく、メンバー間でやりとりされる文書のセキュリティ技術としてBIGLOBEのドキュメントコントロールサービスを採用したというわけだ。

◆短期かつ低コストで顧客満足度を向上

 AskMeでは、同サービスとの連携により、次のようなソリューションを提供している。

 ユーザーがAskMe上に投稿する際の添付文書は、AskMeサーバによって自動的にBIGLOBEのサーバへファイル転送され、ポリシーが付与される。ポリシーは、あらかじめコミュニティごとに紐付けを行い、閲覧者をコミュニティメンバーに限定するなどしておけば、ユーザーはサーバや権限などを意識する必要がなく、従来と同じ方法でセキュアに文書を配布できる。

 AskMeのユーザー企業の中には、研究開発や製造の一部をアウトソーシングしているケースもあり、これまでOffice文書や圧縮ファイルの機能で個別にパスワード設定するなどしてユーザーが行ってきたセキュリティ対策を、ドキュメントコントロールサービスとのAPI連携によってAskMeの機能として提供できることに、リアルコムは大きなメリットを感じている。吾妻氏によると、ユーザー企業からも「かゆいところに手が届く」と評価が高いという。

 WebAPIは今年4月から公開されており、AskMeのほかにも、日本オプロの帳票出力サービス「OPROARTS」や、ブレインセラーズ・ドットコムのWeb帳票ソリューション「biz-Stream」など、様々なWebサービスとの連携実績を持つ。いずれの事例も、既存サービスと組み合わせることで、セキュアな文書管理を短期かつ低コストで実現し、競争力の高いソリューションを提供している。

◆Adobe初のライセンス提供が証明するBIGLOBEの高信頼性

 インターネット接続環境さえあれば、世界中どこにいても文書をセキュアに管理・操作できるメリットを「内部統制」「SaaS型サービス」の観点からまとめると次のようになる。

・内部統制
 ドキュメントコントロールサービス上で最初に設定したポリシーは配布後に変更することができ、閲覧者が次回文書を開いた際に最新のポリシーが適用される。そのため、文書改訂があった場合に最新版を通知したり、退職した社員のIDを削除して閲覧不可にするといったことをダイナミックに行うことが可能となる。また、ユーザーの登録やポリシー、文書の失効などのサーバ上の管理操作、ならびにログイン、表示/印刷といったユーザー操作は、すべてサーバに履歴として蓄積されるため、不正防止への抑止力となる。万が一情報漏えいが発生した場合も、履歴による原因特定が可能になるなど、内部統制支援ツールとしても活用できる。

・SaaS型サービス
 サーバは、専門スタッフが24時間365日常駐するBIGLOBEのデータセンターで運用されているため、自社でインフラを構築したり技術者を抱える必要がなく、高信頼性システムを早期に導入できる。また、アドビシステムズのDigital Rights Management技術をASPサービスとして提供されるものであるが、アドビシステムズが同技術をライセンス提供したのはBIGLOBEドキュメントコントロールサービスが世界初。これは、BIGLOBEの高信頼性プラットフォームが評価された結果と言えるだろう。また、料金体系がID数に応じた月額料金となっているため、企業規模に合わせて運用スタートできることも大きなメリットだ。さらにクライアント環境で必要なソフトウェアはAdobe Readerのみであるため、取引先のセキュリティポリシーにふれる心配がほとんどなく、またマシンに特別な設定を行う必要もないため、社外とのコラボレーション環境も構築しやすい。

◆権限&動画付きPDFなど自由度の高いeラーニングでの活用に期待

 権限付き文書の新たな活用法として、BIGLOBEではeラーニング分野にも注目している。PDFには動画やゲームなどのオブジェクトも貼り付けることができ、同サービスのポリシー設定はそうした添付ファイルにも反映される。

 NECビッグローブの福嶋氏は「たとえば飲食チェーン店において、新メニューの調理マニュアルを権限付きの動画入りPDFとして各店舗に配布できれば、インターネット経由のトレーニングが可能になるという利便性を得るだけでなく、そのマニュアルがたとえ店舗から持ち出されても部外者に閲覧されるリスクを排除できる。ドキュメントコントロールサービスは、これまでとは切り口の異なるソリューションをご提案できる」と、新たな活用シーンに期待する。

 BIGLOBEでは現在、PDFだけでなく他のファイル形式への対応に向けた準備を進めているという。情報の価値が高まり企業コンプライアンスの強化が求められる一方で、SaaS型サービスなどのクラウドコンピューティングが企業経営の加速化を推進するイノベーションとして注目されるなか、ITベンダー各社にとって、今「BIGLOBEドキュメントコントロールサービス」はますます注目を浴びる存在となりそうだ。
《柏木由美子》
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