【防災コラム】瓦屋根は危なくない!? 防災面で進化する瓦事情 | RBB TODAY
※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【防災コラム】瓦屋根は危なくない!? 防災面で進化する瓦事情

IT・デジタル その他
三州瓦を使ったガイドライン工法と防災機能に関する展示。大きな地震が来ても瓦が落ちない、ズレない、壊れないをコンセプトにした工法となっている(撮影:防犯システム取材班)
  • 三州瓦を使ったガイドライン工法と防災機能に関する展示。大きな地震が来ても瓦が落ちない、ズレない、壊れないをコンセプトにした工法となっている(撮影:防犯システム取材班)
  • ガイドライン工法では、瓦1枚、1枚にクギ打ちを行うことでズレや落下を防いでいる(撮影:防犯システム取材班)
  • ずれ落ちたりしないように滑り止め加工が施されている。他にも瓦と瓦がツメやアームによるジョイント構造になっていたり、地震や強風に負けない防災機能を備えている(撮影:防犯システム取材班)
  • 重い屋根と軽い屋根の揺れの違いを模型を使って体感してもらうためのデモ展示。重い屋根の方は筋交いを2本使った構造で、軽い屋根の方は片側だけの筋交いとなっており、屋根の重さよりも耐震工法の違いの重要性を示していた(撮影:防犯システム取材班)
 東日本大震災や熊本地震などのニュース報道で、象徴的に報じられてきた家屋の倒壊や、家の周辺や道路などに瓦屋根が飛散している様子。

 それらの映像や写真を見ていると、ふと抱いてしまうのが「瓦屋根は重いから、家がつぶれやすい!?」とか「瓦屋根は瓦が下に落ちるから危ないなぁ」という不安だ。

 しかし、考えてみれば日本では1,400年以上前から屋根に「瓦」を使い、現在でも使われ続けている。日本に地震が多いのは、今に始まったものではないし、長く使われてくる過程で、先人の知恵が活かされて進化し、時代に順応してきた証拠とも言えるだろう。

 そんな折、東京ビッグサイトで開催中の「建築・建材展2017」の愛知県三河の窯業展ブースにて、「瓦」の専門家といえる、愛知県陶器瓦工業組合の理事・市場工法副委員長の神谷英嗣氏からいろいろおもしろい話を聞けたので紹介していこう。

●ご当地ブランド「三州瓦」の取り組み

 そもそも愛知県三河の「瓦」といえば、「三州瓦」という地域ブランドとして知られる「粘土瓦」が有名だ。その三州瓦を使った屋根の特徴は、夏涼しく、冬温かく、そして屋根の下にある野地板の腐朽に繋がる結露を防いで建物を長持ちさせる効果が挙げられるという。まさに「先人の知恵」が活かされているワケだ。

 そんな話を聞くと「瓦」が地震で落ちることにも理由があるのでは?と思えてくる。疑問を神谷氏にぶつけると、「瓦が地震で落ちるのは、耐震工法などが発展するはるか昔の時代に、地震の揺れを軽減するために建物上部を軽くするという、建物を守るための先人の知恵だと思います」と答えてくれた。

 確かに現代ほど建物が密集していなかった頃なら、瓦が落ちることでの二次被害をあまり心配する必要はなかっただろう。納得できる回答だった。

 しかし、現代においては落ちる瓦はやはり怖い。そうした対策は進んでいないのだろうか?

●落ちずに残る!ガイドライン工法と防災機能

 その答えとなるのが、同ブースに展示されていた「ガイドライン工法」と呼ばれる、各種防災機能を備えた三州瓦を使った瓦屋根だ。

 従来の工法は、住宅金融公庫木造住宅工事共通仕様書に基づいて、4枚に1枚ごとにクギなどによる留め付けを行っていたが、「ガイドライン工法」では、瓦を1枚づつクギによる留め付けを行ったり、瓦と瓦をさまざまな方法で緊結させることで落ちることを防いでいるそうだ。

ガイドライン工法では、瓦1枚、1枚にクギ打ちを行うことでズレや落下を防いでいる(撮影:防犯システム取材班)

ずれ落ちたりしないように滑り止め加工が施されている。他にも瓦と瓦がツメやアームによるジョイント構造になっていたり、地震や強風に負けない防災機能を備えている(撮影:防犯システム取材班)

 2004年には全国の瓦業界が集まり、ガイドライン工法を使った瓦屋根の大規模な耐震実験を行ったところ、震度7の揺れにおいても瓦の損傷や落下はもちろん、ズレることさえなく、揺れに耐えたとのこと。

●重い屋根が地震に弱いは間違い!?

 また、神谷氏は、東日本大震災以降に広く言われるようになった“瓦を使った重い屋根が地震に弱い”という報道に関しても補足を加える。

 「重い屋根が地震に弱い」というのは、建築に詳しくない一般の人には納得しやすいフレーズではあるものの、前提条件として「しっかりとした耐震補強がされていない」という補足が必要だという。

 肝心なのは、屋根の重い、軽いでなく、建物自体の耐震性能だというわけだ。逆説的な言い方にはなるが、重い屋根に耐えられる建物の作りならば、軽い屋根のみに耐えられる建物よりも地震に強いということにもなる。

重い屋根と軽い屋根の揺れの違いを模型を使って体感してもらうためのデモ展示。重い屋根の方は筋交いを2本使った構造で、軽い屋根の方は片側だけの筋交いとなっており、屋根の重さよりも耐震工法の違いの重要性を示していた(撮影:防犯システム取材班)

 もちろんしっかりとした作りの家となると、柱や筋交いの数が増えたり、工数が増えることで、初期コストは上がってくるが、神谷氏によれば、20年程度のスパンで考えたら瓦屋根の方がメンテナンスコストがかからないため、初期コストを抑えられる化粧ストレート(10年ごとにメンテナンスが必要)よりもお得とのこと。

 1,400年もの間、日本の住宅の屋根に使われてきた瓦は、今現在も時代に合わせて着実に進化していることは覚えておいてほしい。

《防犯システム取材班/小菅篤》
【注目の記事】[PR]

関連ニュース

特集

page top