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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第57回 山間部の通信エリアを調査、キャリアの戦略の違いを考えてみた

 都心部では、言ってみればどの通信キャリアでも電波は入る。差が出るのは、郊外や山間部など電波が途切れる境界域であろう。今回は青森・八甲田連峰周辺の電測の旅を記すことにした。

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今回電波状況をチェックした各スポット
  • 今回電波状況をチェックした各スポット
  • 八甲田連邦周辺のエリアマップを同じ範囲で比べてみる。左がNTTドコモ、右がau
  • 本来なら、ここから青森市内や陸奥湾、青森一高い岩木山など見事な眺望を楽しめるのだが、あいにくの天候だった
  • 山頂公園駅周辺、NTTドコモ、au(mineo)ともばっちりLTEが入った。NTTドコモのエリアマップは、そういう意味では嘘つきだ(笑)
  • 悪天候なので仕方なく食べ物に走る。山頂公園駅2階食堂の名物「ジンギスカン定食」(1,200円)。冬季はこの辺りマイナス20度を下回る。そんな寒さの中でスキーヤーに大人気のメニュー
  • 秘湯・酸ヶ湯温泉。八甲田山中の一軒宿で、開湯は江戸時代前期の1684年(貞享元年)
  • 総ヒバ造りの体育館のような巨大な建物にある「千人風呂」が名物。男女混浴である。もちろん内部は撮影できないので、ポスターを撮影
  • 酸ヶ湯温泉前での電測結果。エリアマップどおり、この辺りではau(mineio)が断然優位。左がmineo(LTE)、右がNTTドコモ(3G)
 温泉をもっとハシゴしてみよう。青森には温泉が多いのだが、それも秘湯や珍湯など目白押し。八甲田周辺では酸ヶ湯温泉が有名だが、そのほか湯治場の風情を残す谷地温泉、蔦温泉のほか、八甲田連峰北麓側に回れば露天風呂もある八甲田温泉も有名で、観光客で賑わう。酸ヶ湯の次は国道103号をさらに上り、谷地温泉付近から国道394号、県道40号へと、ぐるりと八甲田連峰北麓方面にルートをとる。じつは八甲田連峰南麓は超豪雪地帯で、酸ヶ湯温泉から先、国道394号とぶつかる辺りまでは冬季(11月下旬~4月上旬)は通行止めになる区間である。4月早々に酸ヶ湯温泉に行ったことがあるが、建物の2階ぐらいまで積雪が残っていた。ここから先が通行止めというのもうなずける。

 となると、青森市街から十和田湖方面に抜けるには、冬期間は八甲田連峰北麓を迂回する県道40号を通るルートとなる。そもそも豪雪地帯で用事がなければ車の通りもまばら。しかも日中は通行できても、夜間は積雪のため通行止めというのが基本。そんな県道40号沿いをしっかりエリア化しているのがNTTドコモである。さすがNTTグループ、緊急時こそ必要となる通信手段の確保という視点から、エリアを構築しているのだろう。冬期間にたとえばこの県道40号沿い八甲田連峰北麓で自動車トラブルなどに遭遇しようものなら命を落としかねない。そんな場所で確実に通話できることを目指しているのだろう。逆にこのあたりはau(mineo)は完全に「圏外」である。

 八甲田温泉を楽しんだ後は、再び県道40号を青森市街方面へ走ることに。この辺りは冬は雪の壁しかないが、夏はブナの原生林だった。人家など見当たらない。車もめったに走っていない。しかしながら、県道40号は冬期間は青森市と十和田市、十和田湖を結ぶ重要な道路という位置づけなのだろう。NTTドコモだけはずっと電波が入っていた。

 県道40号を走っている途中、突然「民宿みちのく深沢温泉」という看板を発見。新たな温泉を見つけたら入らないわけにはいかないだろう。ということで、県道から路地へ入り込む。この日はお盆の週末ということで、県外からの観光客や帰省客もかなり多く、酸ヶ湯温泉や八甲田温泉は県外からの入浴客でごった返していたが、さすがこの秘湯「民宿みちのく深沢温泉」は入浴客はほぼ筆者だけ。おかみさん曰く、この温泉は常連客がまばらにやってくる程度だそうで、おかげさまで「お客さんも居ないのでどうぞご遠慮なく」ということで、温泉の中も撮影の許可を頂いた。この温泉宿、母屋の入り口を見る限り入るのにかなり勇気がいるところなのだが、家族で経営されるアットホームな民宿で、露天風呂も泉質も満足のいくものだった。もちろん宿泊も可能らしいので、今度は改めてゆっくり湯治に出かけたい。

 みちのく深沢温泉から青森市街地方面に数キロ走ると、雪中行軍遭難者銅像がある「銅像茶屋」が右手に見えてくる。ここに車を止めて、せっかくなので銅像周辺の電測も実施。

 改めて、「八甲田」といえばやはり真っ先に思い浮かべるのが「八甲田雪中行軍遭難事件」という人も多いだろう。日露戦争開戦直前の1902年(明治35年)1月、日本陸軍第8師団歩兵第5連隊が日露戦争を想定した冬季軍事訓練を行い、青森市街から八甲田山の田代新湯(みちのく深沢温泉あたりのところだろう)に向かう途中で遭難。訓練への参加者210名中199名が死亡(うち6名は救出後死亡)するという日本の冬季軍事訓練における最多死傷者が発生した事故であり、世界最大級の山岳遭難事故ともされる。

 混乱していた第5連帯は迷走し、そのご遺体は広範囲に広がっていたそうだが、救助に向かった部隊が最初に仮死状態の後藤房之助伍長を見つけたのがこの場所だったそうだ。胸元辺りまで雪で埋まり身動きもできない状態ながら目だけが動いていたという。冬季におけるこの辺りの積雪は半端ではないが、現代であれば主要道はきちんと除雪が入るし、ケータイで電話をかけることもできてしまう。便利な世の中になった。

 「銅像茶屋」駐車場に車を停め、丘のほうに登っていった。何も知らなければ芝生が広がった空気が美味しい高原のようなところなのだが、さりげなく「雪中行軍遭難の地」の看板が。この辺りではau(mineo)は圏外、NTTドコモはかろうじて3Gの電波をつかむ。ここからさらに100メートルほど丘を登ったところに、後藤房之助伍長の銅像がそびえ立つ。ここではなんとauのLTEが届いていた。エリアマップ上では2014年12月までに対応のエリアとなっているが、すでに基地局は設置済みで電波を出していたようだ。NTTドコモは3Gのみ。

 八甲田雪中行軍遭難事件について、より詳しく知りたければ、県道40号をひたすら市街地方面に下ると、青森市が運営する八甲田雪中行軍遭難資料館がある。ここに詳細な資料や、雪中行軍が編成された背景など、詳しい解説がある。じつはこの場所は「幸畑墓苑」とも言われ、雪中行軍でお亡くなりになった方々の墓標が立っている。実際には、それぞれの故郷にお墓があるそうで、ご遺体やお骨はこちらには埋葬されていないが、広大な敷地にずらりと並ぶ墓標を見ると、改めて多くの方が亡くなった事件だったのだなと実感できる。
《木暮祐一》

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