IBM、グリッドコンピューティングで治療薬開発に取り組む「ファイト!小児がんプロジェクト」を開始 | RBB TODAY
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IBM、グリッドコンピューティングで治療薬開発に取り組む「ファイト!小児がんプロジェクト」を開始

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「ファイト! 小児がん」プロジェクト紹介ページ
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 IBM、千葉県がんセンター、千葉大学の3者は17日、小児がんの一種である神経芽腫の新しい治療薬を開発することを目的としたプロジェクト「ファイト!小児がんプロジェクト(Help Fight Childhood Cancer Project)」を開始したことを発表した。

 「ワールド・コミュニティー・グリッド(WCG)」を活用することで、薬剤の候補となる化合物を見つけ出す実験シミュレーションにかかる年月を大幅に短縮し、2年で完了する予定とのこと。WCGは、ボランティア参加の個人や企業が所有するコンピュータの、アイドリング時の処理能力を寄付することで「仮想スーパー・コンピュータ」を作り、演算処理能力を提供し支援する活動。医療や環境といった全世界的な課題の解決を目指す研究プロジェクトにその処理能力が提供されており、今回の「ファイト!小児がんプロジェクト (Help Fight Childhood Cancer Project)」は、WCGが処理能力を提供する研究プロジェクトとしては、アジア太平洋地域で初めて採用された。

 小児がんは、一般に15歳未満のこどもに発生する悪性腫瘍を指し、日本では事故に次いで子どもの死因の第二位となっているという。そのなかでもお腹や胸の交感神経節や副腎にある神経細胞から発生するがんである神経芽腫はもっとも治りにくく、患者の生存率が40%未満とされている。神経芽腫は、すでに進行した状態で発見される場合が全体の3分の2を占めているため、先進国では70%以上の小児がん患者が助かるようになった最近でも依然として多くの子どもを苦しめており、この治癒率を上げることが世界中の医師や研究者にとって重要な課題となっている。今回のプロジェクトでは、長く神経芽腫の遺伝子研究を進めてきた千葉県がんセンター研究局長の中川原章博士が率いる研究チームが、WCGが提供する膨大なコンピュータ処理能力を活用し、神経芽腫の新しい治療薬の開発を目指すという。具体的には、がん細胞の増殖を助けるたんぱく質分子であるTrkB受容体、ALK受容体とその下流シグナル分子SCxxの3つに対し、その機能を阻害できるような正しい構造と化学的な性質を持つ新しい候補薬剤を、約300万個の低分子化合物との組み合わせをシミュレーションすることで見つけ出す。さらにWCG上ですでに実行されているプロジェクトで実績のあるシミュレーションソフトウェア「AutoDock」を活用することで、何千もの候補化合物の解析を並行して行うことができ、高速なスクリーニングが可能となる。治療による回復の見込みに影響を与える予後因子を発見できれば、今後の腫瘍生物学、創薬、治療計画の分野の発展に役立つと考えられている。

 WCGには現在、200カ国以上からの43万人以上が参加者し、120万台以上のコンピュータが接続されている。ボランティアが自分のパソコンを登録して無償のソフトウェアをインストールすると、パソコンが一定時間使われていない状態になると、添付のスクリーンセーバーが起動し、WCGのサーバにデータ要求を送る。サーバはプロジェクトに必要な演算処理を分散して個々のパソコンに送り、パソコンは処理結果をサーバに送り返す。これまでにWCGが処理した結果の数は2億5000万個を超えており、2004年11月の発足以来、WCGでは「ゲノム比較」「がん撲滅支援」「ヒトたんぱく質解析」の3プロジェクトが終了している。

 「ワールド・コミュニティー・グリッド(WCG)」への参加は、サイトのフォームにメールアドレスを登録するだけだ。専用のソフトをインストールすれば、自分もこのプロジェクトに参加できる。記者も実際に参加してみたが、登録も簡単だし、ソフトが稼働するのはアイドリングタイムだけなので、マシンやアプリへの負担もない。「パソコンをつけっぱなしにしていることが多い」という人がいたら、1人でもいいから、ぜひこのプロジェクトに協力してほしい。
《RBB TODAY》
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