【視点】発売からわずか2年で400万袋……イカ天瀬戸内れもん味ヒットの秘密 | RBB TODAY

【視点】発売からわずか2年で400万袋……イカ天瀬戸内れもん味ヒットの秘密

 もともとは期間限定商品として販売されたものを定番化。発売からわずか2年で400万袋を売り上げたのが、まるか食品の「イカ天瀬戸内れもん味」だ。

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これまでのいか天の5分の1サイズで、女性でも一口で食べられる
  • これまでのいか天の5分の1サイズで、女性でも一口で食べられる
  • いか天のイメージを一新した「れもん味」を持つ、営業部企画課の松枝修平氏
  • 開発チームは全員が女性。彼女たちの目線での開発が、ヒット商品を生んだ
 もともとは期間限定商品として販売されたものを定番化。発売からわずか2年で400万袋を売り上げたのが、まるか食品の「イカ天瀬戸内れもん味」だ。

 イカ天といえば酒のつまみとして食される珍味として、いわゆるおじさんの食べ物とされてきたもの。それが、今回は女性を中心に全国的な大ヒットとなっている。それは、一体なぜなのだろうか? まるか食品 営業部 松枝修平氏に聞いてみた。

■女性目線でおつまみからの脱却

 そもそも、広島県が生産量日本一のレモンを大々的に売り出したいという企画と相まって、2013年に夏限定商品として発売された「いか天瀬戸内レモン風味」。瀬戸内レモンを使っていることから、地域性のあるものしか置かない土産物屋で、イカ天として初めて扱われることになったという。

「おつまみは通常、お花見、お盆、年末年始が売上のピークを迎えます。まるか食品ではそれら以外の時期の売上対策として、期間限定の味の商品を年に3回出しています。なので、この商品も8月で販売が終了したのですが、土産物屋さんから継続販売の依頼が来ました。お土産としてかなり評判が良かったんです」

 土産物屋で売るなら土産物屋に聞こうと、どんなお客さんが買ったかをリサーチすると、なんと観光で来ている若い女性がよく買っていた。そこでターゲットを女性に絞り込み、女性だけの開発チームが、彼女らの目線で商品の定番化を担当することになる。

 とはいえ、瀬戸内レモンをリアルに再現したという味そのものについては、特に手を加えることはなかった。本来のイカ天は旨辛味。そこが女性からは敬遠される理由となっていたが、製品ではレモンの酸っぱさを強くし、イカ天の持つ油っこいイメージを消している。そのサッパリとした女性好みの味となり、食べ飽きないと好評となっていた。

 では、定番化に向けて何を改良したのか。具体的には女性が食べることにこだわり、サイズは5分の1に変更。これで女性がひと口で食べられるようになり、職場でも外でも場所を選ばず食べられる商品となった。

 さらに、パッケージもパステルカラーを使い、女性が手に取りやすいかわいいものにリニューアルしている。チャックを付けて食べ切らなくてもいいようにし、サイズもバッグに入れやすいようにと、これまでより少し小さい袋に。これは、女子会などに持ち寄ってもまったく違和感のないようにという意図で、このような女性開発チームならではの意見が次々と取り入れられたという。


■男性社員の意見を排除する

 こうした女性目線の意見を取り入れたことに加え、初期のターゲット像を貫いたことが、「イカ天瀬戸内れもん味」をヒットさせた。

 「すっぱいおつまみなんて売れないよ」と、開発当初は男性社員から否定的な意見も出た。「恥ずかしくて男はレジに持って行けないんじゃないか」と、これまでのイカ天と大きく違うパッケージに戸惑う営業マンもいた。

 しかし、開発チームはあくまでお土産として買う女性をターゲットとして、これらの意見をしりぞけている。そこには土産物屋の売上規模は小さいので、仮に売れなくてもあまり大きな影響はないだろうという見方もあったようだ。

 販売が始まると、「イカ天瀬戸内れもん味」は予想以上の売上を記録した。当初は広島の土産物屋限定で売り出したが、そのうちスーパーが「珍しいから」と目を付ける。結果つまみとしてではなく、普段食べるおやつのひとつとして女性が買い求めた。さらには、マスコミでも取り上げられるようになり、売上は加速していく。

「実は宣伝や販路開拓などは、当社から仕掛けたものはないんです。女性はお気に入りの食べ物にはとても関心が高いので、ツイッターやフェイスブックでどんどん広めてくれました」

 「さわやか」「やみつき」「サッパリしてる」「食べ飽きない」「超うまい!」……。そんなSNS上の言葉が食べたことのない人の関心を引き、商品を扱う店の情報までがネット上を行きかった。女性は美味しいものの情報を独り占めにしない。共有し、共感されることに喜びを感じる彼女たちファンの力で、リピーターは増え続けた。


■大ヒットは一朝一夕に生まれない

 おつまみかお好み焼きの具材が消費の中心だったイカ天。戦後間もない頃から食べられて来たが、ヘビーユーザーは年々高齢化し、売上は下降傾向にあったという。海外への輸出や訪日観光客へのお土産品としての売上もあったが、それは国内消費のマイナスをカバーするほどのものではなかった。

 「瀬戸内れもん味」は“イカ天=おじさんの食べ物”というこれまでの固定観念を覆し、女性にアピールしたことで購買層が一気に広がった。とはいえ、固定観念を捨てて、新たな市場を開拓することはリスキーだ。まるか食品がそれをなし得たのは、ひとつは土産物屋限定販売から始まったこと。市場規模が小さく、仮に売れなくてもダメージは小さいということから、冒険ができた点が挙げられる。

 しかし、一番大きなヒットの理由は、期間限定商品を10年にわたり作り続けたことだろう。中には全く売れない商品もあった。それでも結果を素直に受け止めながら開発を継続したことで、いい意味で肩の力を抜いた商品開発を行えるだけの土壌が、まるか食品にはできていた。

「れもん風味と聞いても違和感はまったく感じませんでした。逆に売れなくてもいいじゃんというくらいの気持ちだったんです」

 まるか食品では今、「瀬戸内れもん味」に引っ張られる形で、他のイカ天も売り上げを伸ばしている。長年の課題であった若い世代の顧客の開拓。それが、ターゲットを絞って開発された『れもん味』によって可能になったと、松枝氏は笑いながら話している。チャンスはどこから生まれるかわからない。まるか食品は今日もまた新たな期間限定商品の開発に力を注いでいる。

~リピーターを呼ぶお土産、強さの秘訣:1~イカ天瀬戸内れもん味

《板谷智/HANJO HANJO編集部》

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