【視点】焼津を代表するお土産になった「バリ勝男クン。」、その戦略 | RBB TODAY

【視点】焼津を代表するお土産になった「バリ勝男クン。」、その戦略

 鰹の漁獲量は日本一。鰹節の生産量でも国内有数の焼津市で、人気を集めているおつまみスナックがある。かつお節の厚削りにフレーバーを加えた「バリ勝男クン。」。これまでに累計500万食を売り上げた、同市を含む静岡では定番のお土産だ。

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キャラクター「バリ勝男クン。」が動き回るテレビCM
  • キャラクター「バリ勝男クン。」が動き回るテレビCM
  • パッケージにはキャラクターの登場する漫画をデザイン
  • お土産用には複数個入りのパッケージを作成
  • ビールのおつまみとして、スナック菓子として、静岡県民に愛されている
 鰹の漁獲量は日本一。鰹節の生産量でも国内有数の焼津市で、人気を集めているおつまみスナックがある。かつお節の厚削りにフレーバーを加えた「バリ勝男クン。」。これまでに累計500万食を売り上げた、同市を含む静岡では定番のお土産だ。

 開発元のシーラックは、主に冠婚葬祭やギフト用途に向けた鰹節の製造会社。少子化によるブライダル市場の縮小、ギフトやお返しといった風習が失われる中で、その売り上げは緩やかな縮小傾向にあったという。「引き出物を選ぶときに、新郎新婦が試食できるような商品がほしい」。そんな営業の声から生まれたのが、「バリ勝男クン。」だった。

 やがて、結婚式の引き出物などを通じて、「バリ勝男クン。」は県民の間へと広まっていく。パリパリとした食感、多彩なフレーバーは彼らの心をつかみ、商品化を求める声がシーラックへと寄せられた。

 では、そこから「バリ勝男クン。」が焼津を代表するお土産になるほどに人気を集めた理由とは何だったのか? それが、パッケージを際立たせるキャラクター戦略と、段階を踏んだ販売戦略だ。

■ピタリはまったキャラクター戦略

 そもそも、冠婚葬祭のギフト用としては「バリ勝男」という名前で売られていた商品。これに“クン”と呼び名をつけてキャラクターを生み出したのが、商品ヒットの第一歩となった。パッケージには鰹を線画で擬人化したユーモラスなキャラクターが描かれ、彼が商品の魅力を伝えるマンガが描かれている。

 とはいえ、このデザインを考えたのは、シーラックの開発担当者ではない。同社の得意分野はブライダルをターゲットとした商品開発。量販店に出回るような商品を開発した経験がなく、従来のパッケージのままでは売り場で沈んでしまう恐れがあった。

 そこで、シーラックでは商品開発にあたり、そのイメージ戦略を地元の企画会社に発注している。結果として提案されたのが、キャラクターを主役としたパッケージ。既存のものと全く異なる方向性のデザインを採用するのは、かなりのチャレンジだと思われるが、営業担当の長谷川英則氏によると知見の無さがプラスに働いたという。

「あぁ、こういう形だったら目に留まるのかと。こういう突拍子の無いことがやれたのは、我々に先入観が無かったことが大きかったですね」


 その一方で、パートナーに小さなベンチャー企業を選んだことも、開発をスムーズに進める上で一役を担った。デザインの開発に始まり、その後のテーマソングの作成、CM戦略に至るまでが軋轢なく進んだことには、小規模事業者ならではの小回りの良さがあったという。

「こちらの提案に対するレスポンスの速さ、気軽にアドバイスをもらえる距離感など。我々のような中小企業であれば、パートナーにも小さな事業者を選んだほうが、気持よく仕事ができるというのはあるかもしれません」

■地元人気をつかみ、人気のお土産に押し上げる

 「バリ勝男クン。」を世に売り出すにあたって、シーラックがまず最初に着手したのが、地元ローカルなテレビ局でのCMだった。静岡県のみの展開であれば、経費もさほど高くなく、営業のフォローにも苦労しないで済む。何より県内における焼津の鰹の知名度は高く、鰹節を食べる習慣も比較的に根付いていた。

 その上で、同社がターゲットに選んだのは若者だった。「バリ勝男クン。」を酒のつまみとして考えれば、もう少し上の世代も視野に入れる方向もあったかもしれない。ただ、同社が狙っていたのは、結婚式の引き出物として親しまれるべく、鰹節をもっと身近なものにすること。そのためにはお菓子として広い世代に認知されるのが理想だった。

 こうして、キャラクターがどこか耳に残るフレーズを歌う、パッケージのイメージそのままのユーモラスなCMが完成する。当時はゆるキャラがブームになっており、その相乗効果もあってか、CMは県内で大きな話題となった。町で子供が口ずさみ、運動会の応援ソングに使われたこともあるという。

 テレビCMの効果に加え、地元のラジオ番組で話題になったこともあり、「バリ勝男クン。」は好調な出だしを見せる。コンビニではサークルKサンクスが取り扱いを開始すると、週に平均30個を売り上げ、県内におけるおつまみの売上記録を塗り替えた。この人気を見たサークルKサンクスでは、商品の全国展開を決めている。しかし、それが当時進めていた販売戦略における限界点だった。


 静岡県では認知が広まっていた「バリ勝男クン。」だが、それはあくまで県内だけのもの。全国での知名度はなく、それを対象に広告戦略をやるだけの体力はシーラックにない。結果、商品は全く売れず、わずか2カ月ほどで、ほとんどの店舗で棚落ちした。それどころが、発売から半年ほどで、県内の店舗においても売上が目に見えて落ち始めている。

 そのまま何もしなければ、「バリ勝男クン。」は一過性のブームで終わっていただろう。しかし、ここでシーラックでは販売戦略に新たな視点を取り入れる。焼津の鰹を使った地場産品として、お土産としてのパッケージを開発。それを、県内のサービスエリア、新幹線の駅などに売り込んだ。

 テレビCMなどで知名度があるうちの仕掛けが功を奏し、「バリ勝男クン。」はお土産のラインナップに加わることに成功する。結果、売上はV字回復し、以降はその売り上げは右肩上がりで成長。販売から約5年で累計500万食を売り上げるにいたった。

■お土産への転身が成功のプロセスに

 では、なぜ“おつまみスナック”では全国のコンビニで売れなかった「バリ勝男クン。」が、お土産として県外からの観光客に買われるようになったのか? その大きな理由となっているのが、あらかじめ県内での知名度があったこと、そして地元特産の鰹を使った地場産品だったことだ。

 つまり、お土産としての「バリ勝男クン。」は、まず静岡県民が県外に行くときの贈答用として県外に持ち出された。それが、他県の人間に食べられ、知名度やリピーターを広げたことが、その後のヒットに繋がっている。

 ブライダルから初めてニーズをつかみ、県内に人気を広げ、最終的には県外からも求められるお土産となる。その中で、地場産品であり、ユニークなパッケージであるという独自性が、「バリ勝男クン。」の人気を押し上げた。このプロセスはお土産の開発を進める中で、見逃せない視点となるだろう。

~リピーターを呼ぶお土産、強さの秘訣:2~バリ勝男クン。

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

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