【インタビュー】ケーブルテレビ局としての社会責任と戦略……イッツコム 市来社長 | RBB TODAY

【インタビュー】ケーブルテレビ局としての社会責任と戦略……イッツコム 市来社長

エンタープライズ 企業

イッツ・コミュニケーションズ 代表取締役社長 市来利之氏
  • イッツ・コミュニケーションズ 代表取締役社長 市来利之氏
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  • イッツコム社員とともに
 RBB TODAY主催の「ブロードバンドアワード2011」において、4年連続で関東地域のベストキャリアに選ばれたイッツ・コミュニケーションズ(以下、イッツコム)。同社は、東急沿線を中心とした東急グループのケーブルテレビ会社である。イッツコム 代表取締役社長の市来利之氏に、同社の強みや、トピックス、および今後の戦略などについて話を聞いた。

●3.11の大震災以降、番組づくりに対する社員の意識が変わった

――貴社にとって、最も大きな昨年のトピックスは何でしたか?

やはり全社的な意味で最大のトピックスといえば、地デジへの移行でしょうか。昨年はアナログ波が停波してデジタル波に完全移行したため、地デジ対策に向けての大きな山場がありました。それを乗り切れたということが大きかったですね。それ以外のところでは大震災への対応がありました。大震災を機に、我々の会社が大きく生まれ変わったと思います。特にメディアや放送部門の社員は、ひと皮向けたように感じています。「いままで以上に地域に密着しなければいけない」という意識がひとり一人に芽生え、番組づくりも全体的に変わってきました。

大震災以後は、会社としても節電対応に力を入れ、現在に至るまでさまざまな努力を続けています。大震災が起きたときは、ネットワークだけでなく、電源が落ちても機能不全に陥ります。そのような観点から、横浜市青葉区の「メディアセンター」に2台目のバックアップ発電機と地下燃料タンクを導入し、サービスを絶対に止めない「BCP」(business continuity plan)への対応を強化しました。従来までは10時間ほど電源を確保できる状態でしたが、いまは最大80時間以上保てるように準備しています。

BCPは、社会的責任として事業やサービスを継続させるという意味合いで使われています。我々としても、自分たちの会社がしっかりしていないと、いざというときに世の中のお役に立てないと考えており、これまでも真剣に考えてきました。もう8年前からイッツコムの子会社であるコミュニティFM局(FMサルース:84.1MHz)において「サロン・ド・防災」という番組を放送しており、安心・安全情報をお届けしています。この番組は、日本災害情報学会で社会的功績分野に与えられる「廣井賞」を受賞しています。また話が少しずれますが、今春にイッツコムの全車両へドライブレコーダを搭載することになっています。社員の安全を守ったり、地域防犯体制の強化に役立てようと考えているところです。

●地域をカバーするWi-Fiサービスの展開も視野に!

――地デジ後の展開という意味ではいかがでしょうか?

新規事業としてケーブルテレビ局に向けた統合クラウドサービスへ参入しました。これは、もともと我々自身がどうしても欲しかったシステムをつくろう、ということでスタートさせたものです。そういう意味では、ケーブルテレビ局という限られたマーケットでの話であり、これでビジネス的に対価を稼ごうということではありません。我々以外のケーブル局も同様の想いを持っていると思いますが、これまで新システムを導入しようとしても、インフラに対する投資コストが掛かりすぎて簡単に実現できませんでした。

それならば、我々が使っているリソースやIT技術を、業界の皆様に提供してはどうだろうか? という発想でサービスを開始したわけです。これまでも我々はITを中心に技術力を高めようと研鑽してきました。東急グループ関連や沿線の企業サーバをお預かりしています。そういったIT技術を活かし、コンシューマ以外の専門分野で放送・メディア関連サービスを向上させ、ケーブルテレビ局業界全体の発展につなげていきたいと考えています。

――モバイルへのユーザー需要が高まりをみせています。これに対する貴社の戦略はありますか?

今、スマートフォンの需要が増えていますが、この流れは今後も止まらないと思います。イッツコムが提供しているTV・インターネット・電話についてのサービスも、5年から10年先のことまで想像力を働かせなければなりません。そこで無線への流れも考えて、Wi-Fi環境を整備したり、auと手を組んだりと、いろいろな施策を講じているところです。たとえば「auスマートバリュー」もその施策の一貫です。これは、高速インターネット回線(KDDIのほか、同社とアライアンスを組むキャリアサービス)と、KDDIの電話回線に加入した場合、auスマートフォンの料金が最大2年間で月額1480円ほど割引になるというものです。

現在これらの条件を満たす我々のお客さまは万単位でいます。イッツコムがKDDIと提携することで、その割引対象になるお客さまがたくさんいらっしゃいます。また我々はauショップを展開しており、そこでイッツコムのお客さまを増やす提案もできるため、拡販の相乗効果があるという意味合いもあります。まだイッツコム自体も会員数を伸ばせる余地があるため、しっかりと営業していこうというスタンスです。それから無線LANについてですが、地域をカバーするWi-Fiサービスについては、これから展開していきたいと考えています。次世代セットトップボックス(以下、STB)にはWi-Fiの機能を盛り込んでいく方針です。いろいろと動いていますが、まだ具体的なスケジュールは決まっていません。いまKDDIと手を組んでいるので、Wi-Fiだけでなく、WiMAXも有力な選択肢になるかもしれません。

●イッツコムチャンネルにおいて、データ放送の試験サービスを開始

――「ミルシー」や「ポニッツ」など地域密着型の独自サービスを実施していますが、現状はどうですか?

マンションへ入居するお客さまの付加価値につながるように「ミルシー」を始めました。ケーブルテレビの専用STBのブラウジング機能などから、東急百貨店や東急ストアの食品のお得情報(RISE食得情報)やタウン情報などをご案内しています。本格的にサービスを開始して2年ほど経ちますが、社内でいろいろな検討が進んでおり、2012年度には便利な第二世代の「ミルシー」が登場する予定です。

一方、「ポニッツ」のほうですが、これは東急沿線のお店やサービスをスペシャル価格で入手できるプレミアムチケット購入サービスという位置づけです。「ポニッツ」は去年の11月からテレビを観ながらリモコンで操作できるように進化を遂げました。お陰様で会員数も伸び続けており、大変好評を博しています。このようなサービスを地域密着型のケーブルテレビ局が行うことで、地元や店舗の人々と仲良くなり、地域を活性化していくことに一役買うものと考えています。実際に普段の番組づくりや広告営業など、いろいろなところで地域と継りを持てるようになりました。

――今後の新しいサービス展開は何かありますか?

やはり3.11以降から、情報発信が大変重要になったと感じています。普段からいろいろな情報を発信し、いざというときに的確な対応を取れることが大切です。テレビのデジタル化により複数チャンネルを運用できるようになり、さらにデータ放送によって番組と連動した情報がつくれるようになりました。地域への発信の仕方やその内容がだいぶ変わってくるという期待感を持っています。そこで「イッツコムチャンネル」(地デジ111ch)の放送に、データ放送機能を追加し、この4月1日より試験放送を開始しました。自宅のテレビやSTBに登録された郵便番号を利用することで、居住地域の「地域情報」「気象情報」「鉄道・道路情報」や、イッツコムのサービス案内などをリモコン操作で閲覧できるようになりました。また災害発生時には、災害情報や居住エリアのライフライン情報を広く迅速に配信することもできます。

●ケーブルテレビ業界の活性化のために、良い智恵を出し合う

――まだ民放はデジタル化のメリットを享受できていないように思えます。ケーブルTV局として考えは?

デジタル化による可能性は、本当ならば数多くあるはずなのですが、NHKや民放はそのメリットを出しづらい状況にあると思っています。ケーブルTV局は地元の情報を発信する際に、逆にどういうことをすればよいのか地域へご提案することも可能です。さらにSTBの進化によって、プラスアルファのサービスを付加しやすいこともあります。ケーブルテレビであれば、放送波+量販店で購入したテレビ番組以上のサービスをご提供できますから、より多くのデジタルのメリットを加入者が享受できると思います。ケーブルテレビ業界からのデジタル化への展開が期待できると思います。

――今後、ケーブルテレビ業界は局同士が連携しないと生き残れない時代になるという考えもあります。この点についてはどうですか?

一時期、ケーブルテレビ業界に合唱連合の嵐が吹き荒れました。しかし、今の動きは少し違うように思います。各社とも単純な競争の世界から、次のステップに進まなければいけないと考えているからです。ただし、業界全体として実際に何をやればよいのか分からないし、新しいことの準備をするにも資本力が必要です。1社よりも複数でやったほうが効果が出そうなことも多くあり、各社で協力していこうという空気があります。先ごろ東京急行電鉄とジュピターテレコム(J:COM)が、相鉄ホールディングスの横浜ケーブルビジョンを共同買収することになりました。イッツコムとJ:COMも、これを契機に従来以上に協力できるようになると思います。

この業界では、多チャンネル売りのビッグパッケージ的な需要がなくなりつつあります。むしろチャンネル数を少なくして、料金を下げて欲しいという要求が強くなっているのですが、現実問題としてサプライヤも局側も一気に移行できない状況です。またインターネットについても、ケーブルテレビ局でFTTHをサポートしている局は少ないのですが、FTTHを網羅する必要性を認識していても、その投資が行なえる企業は限られています。一方で「無線環境が整えば、もう固定回線は不要だ」という考え方もあります。しかし、全員が無線環境を使えるということはありません。まして3.11のときのような災害時には、頼りにしていた携帯電話も使えませんでした。最終的には高速な固定回線を準備して、そこから無線がつなげられるような状態にしておかなければならないと思っています。我々としても、そういったことをしっかりアピールしていきたいですね。
《RBB TODAY》

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