【MWC 2012(Vol.53)】「日本の事例が世界のネットワーク技術進展のために学べることは多い」……エリクソン・ジャパン ヤン・シグネル社長 | RBB TODAY
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【MWC 2012(Vol.53)】「日本の事例が世界のネットワーク技術進展のために学べることは多い」……エリクソン・ジャパン ヤン・シグネル社長

エンタープライズ その他
エリクソン・ジャパンの代表取締役社長 ヤン・シグネル氏
  • エリクソン・ジャパンの代表取締役社長 ヤン・シグネル氏
  • エリクソンがスウェーデンで展開している4G/LTE基地局
  • スマートフォン制御信号の抑制
  • モバイルブロードバンドを支える伝送機器
  • VoLTEの特性
  • HD Voice
  • VoLTE
  • アプリケーションのトラフィックモニタリング
 今年のMWCは、エリクソンにとってかなり力の入った展示となった。スマートフォン急増によるトラフィック爆発への対応、LTEの普及と3Gのさらなる高度化、OSS/BSS(オペレーション/ビジネス・サポート・システム)やM2Mサービスへの取り組みなど、同社が展開するビジネス領域は多岐にわたる。

 エリクソンにとって日本は世界でも3番目の市場であり、エリクソン・ジャパンとしては国内市場へのコミットをますます強化する方針だ。その経営戦略について、日本法人の代表取締役社長 ヤン・シグネル氏に聞いた。


■モバイルブロードバンドに基礎づけられたエコシステムが確固たるものに

---:本年のMWCを見た印象・感想は。

シグネル氏:当社では、何年か前からネットワークソサエティ(ネットワーク化された社会)をキーワードにしているが、今回のMWCを見ると、この言葉が広く認知されてきたという実感がある。我々はあらゆる機器で接続されることによって何らかのメリットが必ずもたらされると強調してきた。特にご存知の通り、モバイルブロードバンドは爆発的に伸びており、よりデータレートが高く容量が大きく遅延の少ないネットワークがこれまでになく重要視されている。

ただわれわれとして予想していなかったのは、オーバーザトップアプリケーション(OTA:PCやセットトップボックスなどを必要とせず、端末に直接して利用するアプリケーション。Huluなどのビデオサービスが代表例)のアプリケーションの伸び。何年か前に何十万ものOTAができるとは思えなかった。完全に新しいエコシステムができている。これがバルセロナのイベントの基礎になっていると思う。

テレコム産業は拡大の一途をたどっているが、見本市・イベントという点で見るとデトロイトのCES(Consumer Electronics Show)とこのMWCというメジャーなものがふたつに収斂されてしまった感がある。

---:米欧亜でのワールドワードなビジネスを展開するエリクソンは、日本市場をどのように位置づけているのか。

シグネル氏:当社の売り上げ構成比において日本は国単位でいうとアメリカと中国に次ぐナンバー3の地位を占めている。傾向としてはアメリカと似ており、モバイルインターネットの伸びが顕著。わたしとしては、各国の通信市場は6年間くらいのサイクルで伸張期と停滞期を繰り返すと見ており、日本もこの需要のピークを越えるとしばらく横ばいとなり、次の伸びまで若干時間がかかるかもしれない。


■日本の取り組みは世界のネットワーク技術進展にも役立つ

---:スマートフォンの普及によるトラフィック急増の問題は世界的にも問題になっているが、日本での問題解決の事例が世界へも応用されるということなのか。

シグネル氏:日本ではスマートフォンが爆発的に普及しているとはいえ、保有台数ベースで見るとスマートフォンはまだ25%程度に過ぎない。今後更に伸びていくはずで、トラフィックは3年以内に25倍になるだろう。これらをさばくトラフィック対策は非常にチャレンジングな課題になる。以前からトラフィック爆発に対しての対策を講じてはいるが、エリクソンでは「スマートフォンラボ」を設立して、スマートフォンがネットワークにどのような影響をあたえるのかを日々研究し、解決方法を検討している。

---:世界では今後まだまだ3Gが主流であり、LTEの本格普及は2010年代後半という
見方が強い。LTEで先行する日本が「ガラパゴス化」に陥る可能性はないか。

シグネル氏:LTEについては確実にグローバルスタンダードに向かっており、その方向へ進む日本のITがガラパゴス化するとは考えにくい。日本での取り組みは日本の今後のためだけでなく、世界のネットワーク技術進展のために学べることも多いはずだ。

LTEがこれから伸び始めて直ちに3Gにとってかわるかというと、確かに多少の時間がかかるとわれわれも見ている。3GとLTE両面での設備を整えていく必要はあるが、投資の中心はLTEになるだろう。各社で意見の分かれていたVoLTEも既定路線として採用されていくだろう。

---:クラウドビジネスはどのように展開していく考えか。

シグネル氏:ひと言でいってクラウドといってもその中身はさまざまだが、パブリックドメインのクラウドは無料の世界なので競争は非常に厳しい。一方で日本国内の事業機会を考えると企業をターゲットに置いたプライベートクラウドには、可能性がまだあると考えている。ただし、われわれはサーバを作っているわけではないので、いかにしてビジネスモデルを見つけることが重要だ。提案力が重要になる。

たとえば海外のストレージに大量に保存している動画などの大容量コンテンツを日本の利用者が見る場合、いちいちサーバーにアクセスしてダウンロードしたいストリーミングさせるのはネットワークに大きな負担になる。そこで日本にキャッシュサーバーを置くことで、全体のトラフィックを削減するような考え方で、デジタル権利にも関係してくるポイントでもある。


■国際的な素養を身につけられる環境や機会を提供

---:日本での在任中に成し遂げたいこと、目標にしていることは。

シグネル氏:端的な話としてはエリクソンがオペレータを確実にサポートし、データの急速な伸びに対応できれば我々のフォーカスしているビジネスにつながる。ネットワークのクオリティや容量を増やし、オペレータの成長をアシストできるベストなパートナー/ベンダーとして位置づけられることを目指したい。

どこの国でも、オペレーターはネットワークについての技術的な指標を定めており、それを満たすことができれば支払いをしてくれる。当社が24時間365日の運用をしっかりできれば、彼らは運用の負担を減らすことができ、ビジネスのことだけを考えられるようになる。

---:今後、日本におけるエリクソンのブランド戦略をどのように考えているか。

シグネル氏:人材面で考えると、ブランディング戦略はきわめて重要。評価の高い日本国内のメーカーと競争し、ビジネスを伸ばして行く上では、国内で優れた才能を見つけねばならないし、日本のなかでも良い雇用主だと思われたい。我々としては国際的な素養を身につけられる環境や機会を従業員に提供していきたいと考えている。
《北島友和》
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