【インタビュー】ものづくりの変革を目指す……富士通「PRIMERGY BX」 | RBB TODAY
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【インタビュー】ものづくりの変革を目指す……富士通「PRIMERGY BX」

エンタープライズ ハードウェア
システムプロダクト販売推進本部 PRIMERGYビジネス推進統括部 統括部長 芝本隆政氏
  • システムプロダクト販売推進本部 PRIMERGYビジネス推進統括部 統括部長 芝本隆政氏
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 「イード・アワード 2011 サーバ部門」において「富士通 ブレードサーバ PRIMERGY BX」が総合で1位を獲得した。同サーバは、部門別には「管理機能の充実度」および「保守性」で1位、「安定性」で2位を獲得しており、サーバの運用・選定担当者が、コストパフォーマンスよりもこうした運用性を重視していることがうかがえる。

 富士通の同サーバに対する取り組みはどのようなものなのか。また今後の展開として、コストパフォーマンスに関しての戦略はあるのか。富士通 システムプロダクト販売推進本部 PRIMERGYビジネス推進統括部 統括部長 芝本隆政氏に話を聞いた。

――「PRIMERGY BX」の開発にあたり、どのような点に注力しましたか。

 「PRIMERGY BX」の市場投入は4年前で、ブレードの世界では後発でした。当時我々が注力したのは、「管理のしやすさ」と「使いやすさ」を非常に意識した“ものづくり”でした。その1つが、統合管理が求められてきたことを受け、全体状況の表示や制御ができるようにシャーシに標準搭載した「LCDパネル」です。もちろん、通常のリモートやコンソールからも管理できますが、システム管理をされている方から、その場で見て操作したいというニーズがありました。パネルでは、ブレードシステムの初期設定、障害、電源状態、温度状態などを視覚的に見て操作できるようになっています。他社製品にもパネル搭載製品はありますが、日本語表示は弊社だけです。

 他にも、これはブレードに限りませんが、取り扱いへの配慮として、ブレードを取り外す時に手で触る部品がわかりやすいように緑色にしています。

――現場の運用を重視した“ものづくり”ですね。

 SE部門からの強い要望があって採用したのが「資産管理タグラベル」です。「ブレードはコンパクトでいいが、資産管理用のラベルを貼るスペースがない」と指摘されたんです。しかし富士通のロゴを取るわけにはいきません(笑)。内側に貼る方法も考えましたが、ラベル確認のためにシステムを停止してサーバを取り出すのはないだろうと。試行錯誤の結果、スリット方式を設けてラベルを貼れるようにしました。これも、ご利用いただいているお客様からは好評です。余談ですが、電源ボタンも以前は出ていたのをへこませました。「押し間違えてシステムが止まった」という声をいただいたからです。弊社の製品は幸いなことに、システムに対して、いい意味でうるさいお客様に多くご利用いただいているので、現場の貴重なご意見を“ものづくり”に活かしていけますね。

――現場の運用としては、「省電力」も気になるポイントではないでしょうか。

 データセンターやISPのお客様の場合、サーバの集約度が高まると、電力消費も高まり、それがサービスそのもののコストになります。ですから、特に使っていない時の電力をいかにして抑えるか、が重要になってきます。基幹業務でご利用いただいている企業のお客様も、24時間稼動させる必要はあっても、CPU負荷の低い夜間の電力を抑えたいというニーズをお持ちです。PRIMERGYでは、CPUの動作クロックを切り替えることで、業務と結びつけた最適な「電源スケジュール運用」の機能を搭載しています。また、「電力の見える化」として、シャーシ全体の電力消費量や、現在の消費量、履歴の時系列グラフを閲覧できる機能も搭載しています。特に震災後は、こうした省電力設計をご評価いただくことが多くなりました。

――中小規模システム向けに注力した機能はありますか。

 昨年11月に発売した中小規模システム向け「PRIMERGY BX400」には、省電力設計の1つとして、新機能の「低騒音モード」が付いています。中小規模システムの場合、各事務所に置いてあったサーバを集約しても、サーバルームを新設するほどの規模ではないので事務所に置きたい、というニーズがあります。ところがブレードサーバはけっこう音がうるさくて、お客様の仕事にならない。騒音は、サーバを冷却するためにファンが高速回転することが原因ですから、CPU稼働率を制御してサーバの発熱を抑えるモードを付けました。この開発はかなり苦労しまして、私も何度も工場へ行って騒音値を確認しました。

――今回のアワードで、「コストパフォーマンス」の2つの部門はどちらも逃しました。

 状況によっても異なると思いますが、過去に「ブレードって意外に高いよね」と言われたのは運用面でした。「仮想化をやりましょう」となった時、ブレードとラックを比較すると、ブレードは高度なことができます。高度なシステムの提案の結果、ラックでできる小規模な提案よりも、ミドルを積み重ねて設定のためのSE費用などがかかり、高く見えたということはあると思います。しかし同じシステムを組む場合は、ほとんど変わりませんよ。ただ、他社との比較で1位を取れなかった理由はわかっています。富士通は「システム全体をどうするか」を重視してきた歴史から、全体的に「ボリュームビジネスに対する取り組み」が弱かったと感じています。しかしこれからは、コストパフォーマンスでも1位を目指しますよ。

――「PRIMERGY BX」のコストパフォーマンスを高める戦略はすでにあるんですね。

 我々は2009年3月に、「ワールドワイドでPRIMERGYを50万台売る」「国内でトップシェアを獲る」という目標を掲げました。どうすればトップが取れるか、と考え、この2年間、様々な取り組みをしてきました。ものづくりの面では、例えばマニュアル1つをとってみても、「詳細はお問い合わせください」と書いていました。そうすると、お客様は誰かに聞いていただく必要があり、聞かれる人に我々が教えておかなければいけません。こういうものづくりを変革していきます。

 製品面では、「システムに合わせて導入しましょう」となると、どうしてもオーダーメイドになります。決して悪いことではありませんが、コストを下げるには共通化する必要があります。そこで、グローバルで製品を統一してボリュームを増やすために、ドイツの当時子会社(現、富士通テクノロジー・ソリューションズ)を完全子会社化しました。約2年かかって現在、ほぼ共通プラットフォームになりました。これで、大幅なコストダウンとデリバリーのフレキシビリティを出すことができます。

 もう1つの重要な取り組みは、販売パートナーに対する支援の見直しです。先ほどのマニュアルの例でも、今まではパートナーに甘えていた部分がありました。現在、きちんと研修メニューを用意しました。顧客のニーズをいかに早くキャッチして、製品に活かしていくかが勝負ですから、パートナーは非常に重要なファクターであって、今後もパートナーと一緒にやっていかないと成り立たないと認識しています。

 最後に、これはボリュームビジネスと反することではありますが、今まであまり踏み込んでいなかった市場への取り組みも始めます。例えば組み込みベンダーさん。特殊要件のある分野ですが、他社さんはそこで長年積み上げていて、それが我々との差になっています。この分野に関しても、昨年から体制を作り、今年から本格的に立ち上げました。

――富士通として、今後の注力サーバ製品はブレードですか。それとも新たなサーバですか。

 ブレードは、サーバ集約や仮想化向けとして、その形状からも非常にわかりやすい機種ですが、通常のラック型もまだまだ昔と変わらず売れています。お客様の運用を考えると、例えばデータセンターのようなお客様は、ファシリティ面からしても、システムまるごと差し替えができるようなサーバが適しています。

 最近では、コンテナ型のサーバも登場していて、システムそのものをコンテナの中に入れていつもで移動できるようにしたい、といったかなり大胆な発想も出ています。サーバを外に置くなんてことは今まで考えられませんでしたが、これからはお客様の運用の変化に対して、フレキシブルに対応できるような、サーバを作っていくべきだと思っています。現在市場に出しているサーバには、様々な現場のニーズを活かした機能を入れ込んできましたが、それがこれからもお客様のニーズであるかというと、そうではないんです。

――現場とものづくりの結びつきが、ますます重要になってきますね。

 ここ数年、サーバのものづくりは、1つのラックに可能な限り集約することを目指してきました。これは実際にあった話なんですが、あるお客様が施設に新たにサーバを導入することになり、工場で組み上げ、後は現場で接続すればいいという状態で現地に持っていきました。ラックは高さ2メートル。ブレードが40枚入る、最も効率のいい大きさなんです。ところがドアに入らない。仕方がないので、サーバを取り外して、ラックを傾け、さらにドアを少し広げてようやく設置できました。もちろんドアは元通りに直させていただきましたよ。

 この経験があったので、背の低いラックも作りました。これまでずっと性能中心で、「こうあるべきだ」と考えていたのが、現場に目を向けて見ると、必ずしもそうではない。ものづくりの側と現場の側のギャップはまだまだあるので、それを埋めていかなければいけないと思っています。

 クラウドの活用が進むと、これまでICTを使ったことのない業種の方々にも我々の製品を使っていただくことになります。典型的な例が、「農業クラウド」です。先ほどのコンテナしかり、これまでの我々の発想とはマッチしない要件がいろいろ出てくるだろうと思っています。これからは、こうしたニーズの変化に柔軟に対応することがポイントかなと考えています。
《RBB TODAY》
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