Tech OnTapの定期購読者である皆様なら、NetApp Data Motion(NetApp DataMotion for vFilerから名称変更)については、すでにご存じでしょう。NetApp Data Motionを使用すれば、マルチテナント環境のストレージシステム間でMultiStore vFilerユニットとすべての関連データを移行できます。NetAppがData ONTAP 8.0.1のリリースで導入した新機能のうちの1つがDataMotion for Volumesです。DataMotion for Volumesを使用すると、同じストレージコントローラ上のアグリゲート間でLUNを含むボリュームを無停止で移行できます。
この記事では、DataMotion for Volumesについて紹介し、DataMotion for vFilerとの違いについて説明します。また、ベストプラクティスや考えられる利用方法についても、いくつか取り上げたいと思います。
■DataMotion for Volumesとは
DataMotion for Volumesは、7-ModeのData ONTAP 8.0.1でサポートされている新しい機能です。単一のストレージコントローラ上で、あるアグリゲートから別のアグリゲートへボリュームを無停止で移行できます(HAペアを構成する2つの異なるコントローラ間でボリュームを移行することはできません)。FC LUN、FCoE LUN、iSCSI LUNを含むボリュームについてのみ、移行を容易にする設計が採用されています。NFSボリュームとCIFSボリュームはサポートされていません。
DataMotion for Volumesの大きなメリットの1つに、ボリュームに関連付けられたすべての詳細設定を移行後も維持できることがあります。具体的には以下のような設定を維持できます。
皆様の中にはDataMotion for vFilerテクノロジについてすでによくご存じの方もいらっしゃると思いますが、DataMotion for VolumesとDataMotion for vFilerの間には、いくつか重要な違いがあります。DataMotion for VolumesはFlexVolレベルで機能しますが、DataMotion for vFilerはvFilerレベルで機能し、1つのvFilerユニットに関連付けられたすべてのNFSボリュームまたはiSCSIボリュームを移行します。DataMotion for vFilerでは、異なるストレージシステム間やHAペア間でボリュームを移行することが可能です。DataMotion for vFilerはNetApp Protection Managerを使用して管理し、 コマンドラインからvol moveコマンドを使用してのみ起動できます。
表1に違いをまとめました(上記では触れなかった違いも含まれています)。
■DataMotion for Volumesの仕組み
DataMotion for Volumesは、定評のあるNetApp SnapMirrorテクノロジをボリュームの移行に利用しています。プロセスの仕組みについて簡単に理解しておくと、DataMotion for Volumesを有効に活用できます。移行は、3つのフェーズに分かれています。
ベースライン転送が完了すると、データコピーフェーズが開始されます。データコピーフェーズでは、移行元ボリュームは引き続きアクティブなため、移行先ボリュームと同期するために連続SnapMirror更新が開始されます。SnapMirror更新が正常に終了すると、DataMotion for Volumesは2つのボリューム間の差分遅延を見積もります。差分遅延に関する通知がユーザに送信され、この差分遅延が次回の更新処理の予想所要時間になります。DataMotion for Volumesは、差分遅延の値が高い間はデータコピーフェーズに留まります。差分遅延が小さくなると、カットオーバーフェーズに入ります。
カットオーバーフェーズ
カットオーバーフェーズは、手動、自動(デフォルト)のいずれでも実行できます。
カットオーバー前。カットオーバー・ウィンドウ内に移行先ボリュームの同期を完了できる場合、DataMotion for Volumesはカットオーバーフェーズに入ります。カットオーバー前フェーズは一時的な段階で、前述した初期の事前確認が再度実行され、何も変更されていないことが確認されます。また、NVLOG、システムCPUの負荷の状態など、重要な項目が確認されます。
DataMotion for Volumesでは、CPUとディスクのしきい値の上限を設定できます (以下のオプションのデフォルト値は、いずれも100です)。
カットオーバーの失敗。カットオーバーが失敗すると、DataMotion for Volumesは再びデータコピーフェーズに入り、あとで再試行します。デフォルトでは、カットオーバーは3回試行されます。3回失敗するとカットオーバーは中止され、I / Oは引き続き元の場所から提供されます。DataMotion for Volumesで処理を続行するには、ユーザの介入が必要です。
手動カットオーバー。手動カットオーバーでは、DataMotion for Volumesはデータコピーフェーズに留まり、連続SnapMirror更新を実行します。次のSnapMirror更新処理の所要時間が引き続き見積もられ、この情報がログに記録されます。この情報を確認してから、手動カットオーバーを開始してください。
●著者紹介
Richard Jooss ディレクター兼SAN/iSCSIアーキテクト NetApp
Richard Joossは、NetAppでSANプロダクト/パートナー・エンジニアリングのシニアマネージャーを務めています。SANエコシステム、SANストレージの技術要件とビジネス要件の定義を担当し、ビジネスソリューションとNetApp SANソリューションとの統合にも携わっています。ストレージ業界で15年の経験を積んでおり、 ウィスコンシン大学で電気/コンピュータ工学の理学士号を取得しています。