【インタビュー】単なるISPではなくBSPとして生まれ変わる——NTTぷらら代表取締役社長 板東浩二氏 | RBB TODAY
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【インタビュー】単なるISPではなくBSPとして生まれ変わる——NTTぷらら代表取締役社長 板東浩二氏

ブロードバンド その他
NTTぷらら・代表取締役社長 板東浩二氏
  • NTTぷらら・代表取締役社長 板東浩二氏
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 「ぷらら」は創業から13年間にわたりサービスを提供するISPサービスの老舗だ。昨年は映像系サービスに注力し、3月には4th MEDIA、OCNシアター、オンデマンドTVを統合する形で「ひかりTV」を開始した。また、昨年12月からは日本放送協会(NHK)が開始した「NHKオンデマンド」をサービスメニューに加えたことも記憶に新しい。

 その「ぷらら」が“ブロードバンドアワード 2008”でISP部門の第1位となった。全国の読者から「サービスメニューの充実度」「カスタマーサポート」「加入時対応」「利用開始までの期間」「問合せ窓口対応」のすべてにおいて1位という好評価を得た結果だ。新規加入者への導入サポート、モバイル接続における多キャリア対応、ブログや掲示板など、多彩なコミュニケーションツール、決済まで含めたgooのサービス連携、迷惑メールやWinnyに対するセキュリティ対応など、豊富なサービスメニューが支持されたようだ。さらに、光ブロードバンドによるIP電話やIPTVなど先進的な事業に取り組む姿勢にも期待されている。

 編集部では、今回、光ブロードバンドへのユーザーの移行、トリプルプレイへの取り組みなど、「ぷらら」の現状と将来について、NTTぷらら代表取締役社長の板東浩二氏に伺った。

■過酷な競争時代を乗り切った体力で経済不況に挑む

——毎日のように人員削減など不況のニュースが出ています。最近の経済状況で、御社の生き残り策は?

板東氏:ユニクロが伸びたり、マクドナルドが売り上げを伸ばすなどの例を見ると、料金に魅力があること、そして品質がいいものが注目されています。我々はさらなる体質改善をやっていきたいと考えていますが、単なる料金競争はこれ以上はやるべきではないと思っています。ISP各社の料金を比較するとどれも料金が同じように見えますが、よくみると差が出てくるのです。例えば「ぷらら」はフレッツ光向けのISPサービスを月額1050円(光回線費用を除く)で提供しています。この1050円のサービスはフリーチケットがついています。わかりやすく言うと1260円ぶんのおまけが付いています。このフリーチケットを使い、複数メールアドレスとか、プライベートホームページなど、実質無料で利用できます。他の大手ISPならメールアドレスを1個追加するたびに200円というように、サービスを足すと値段が上がっていきます。しかし「ぷらら」は付加サービスを使うことで割安になります。そこをうまく伝えていきたいと考えています。「ぷらら」は料金が安価な割には総合的にバランスが良く、満足度が高いという部分で評価されていると思います。セキュリティ面では斬新で革新的な部分もあります。Winny対策は最初にやりましたし、有害サイトへのアクセス制限、フィルタリングサービスを標準でフィルタをかけた状態で提供するというのも、我々独自のサービスでした。

■2010年までは光サービス拡大に注力

——これからのISPの役割は、接続するだけ、あるいはメールやWebサーバなどの付帯機能だけではなく、今までとは違ったカタチになっていくように感じます。

板東氏:大きく2つあると思います。ひとつは光を中心としたブロードバンドのインフラを構築すること。すでに(日本は)世界一のブロードバンド大国と言われます。しかし、まだ光ユーザーは伸びると思いますよ。そうした光ユーザーインフラ構築が大きな役割です。ISPぷららのユーザー層をみると、総会員数が282万人、そのうち光ユーザー数が145万人(2008年12月末)です。光ユーザー率が50パーセントを超え、実に2人に1人が光ユーザーです。光にADSLを含めたユーザーは237万人おり、ブロードバンドユーザー比率が84パーセントととなっています。ナローバンドからブロードバンドへ移行させること、ブロードバンドの中でも光ユーザー比率を高めていくこと、それらがISPとしての我々の役割だと思います。2つ目はユーザー満足度を向上することです。料金、品質、情報セキュリティ、そして、どこからでもつなげる利便性の追求が必要です。

——50%が光ユーザー。これは多いとお考えですか?

板東氏:ISPの中ではかなり高い比率だと思います。残りの大半がADSLです。

——ナローバンドやADSLから光への乗り換えはまだまだありそうですね。逆に光から光へのスイッチは起きるでしょうか。

板東氏:それは今でも起きていると思います。量販店でPCを買う、ブロードバンド対応テレビを買う……、そんなときに、他のプロバイダーを薦められて乗り換えるということはあり得ます。

■映像サービス強化で日本のコンテンツ市場拡大に貢献

——電力系事業者やCATVは、テレビと電話とインターネットのセット入会が好調だと聞きます。御社では、テレビと電話に関して具体的な戦略はありますか?

板東氏:数年前からトリプルプレイを目指しておりました。我々はもともと、ISPのプラットフォームを持っていますが、050からはじまるIP電話のプラットフォームも持ち、それを、他の大手のISPにもOEMで提供しています。それに加えて5年前、ひかりTVの前身の「4th MEDIA」というIPTVサービスを始めました。単独のプロバイダーとして一番早く、トリプルプレイサービスを最初から意識していました。3〜4年ほど前からインターネット新規会員数が頭打ちになってきているなかで、会社の成長性を考えると接続サービス以外にIP電話、IPTVといったものが必要になってくるのではないかと考えました。現在はISP事業で利益を出していますし、IP電話も黒字転換しています。さらに新しいひかりTVサービスが黒字となれば、我々は3つの有力なプラットフォームを持ったトリプルプレイ事業者として生まれ変わります。単なるISPではなくて、私は“BSP”と呼んでいますが、“ブロードバンドサービスプロバイダー”になれると思います。

——ひかりTVの反響はいかがでしょうか?

板東氏:ひかりTVの当初の目標会員数は、3月末までに48万人でしたが、現状では50万人を突破できそうです。12月末のユーザー数は39万人、新規ユーザー獲得ベースは月あたり5万人以上です。解約などの要素もありますが、今のところの数字では50万人以上は行けると想定しています。かなり速いペースですね。282万人というISPの会員数が仮に300万人になって、ひかりTVが100万人になると、ひかりTVのARPU(1契約当たりの売り上げ)は、ISPの3倍ありますから、売り上げはほぼ同等となります。すなわち、会社全体の売り上げは2倍となる。さらに、ひかりTVユーザーが100万人を超えてくれば映像系の売り上げはISPを上回り、映像を中心とした事業者になれます。光を中心としたインフラが拡大することによって映像系のサービスが増え、ブロードバンド端末としてテレビの存在価値が高まります。テレビでブロードバンドを楽しめるというのは大きなインパクトだろうと思います。

——具体的にはどういうことでしょう

テレビの歴史を見れば、白黒テレビの出現からカラーテレビが世に出るまで約10年。これは短期間でものすごい進化をしています。しかし、その後、衛星放送のサービスが開始され、テレビのデジタル化も進んでいますが、これまで、大きな変化はなく、片方向のサービスでした。ブロードバンドの回線にテレビがつながることの大きな意味は、それまで片方向だった映像配信サービスが双方向になることです。VOD(ビデオオンデマンド)もそうですが、これはテレビにとって大きなインパクトではないかと思います。一般的にIPTVと呼ばれているサービスにはさまざまな定義があり、他社もIPTVサービスを提供しています。ただし、地デジのIP再送信サービスを含む放送系のサービス、VOD、カラオケ、NHKオンデマンド、これらをすべて揃えてやっているのは弊社だけだと思います。放送系サービスとVODの両方を提供することによって、見逃し視聴が出来る一方で、例えば、米国のTVドラマシリーズのシーズン4が始まる時にシーズン3をVODで配信したりなど、様々な企画を編成の中で考えていくことが可能です。NHKオンデマンドについては、契約勧誘時にNHKオンデマンドを観られますよ、というアピールが可能であるということだけでも、大きな存在です。今年はなんとかBS再送信サービスを実現させたいと思います。テレビ局に再送信について同意して頂く必要があるので、条件が整えばと言うことですが。

——CATV事業者は、そういうことはIPでなくてもできるよ、と言っていますが

板東氏:確かにそうです。ただし、我々のようにVODで5000本のコンテンツを月2,525円で見放題というサービスを提供できるかどうか。CATVのVODでは、その都度ペイパービューで200円、300円払う、これはユーザーからみると使いにくいですよね。しかし、5000本見放題となれば、かなり大容量で品質を管理できるネットワークがないとできないと思います。

——CATVのシェアを取りたいという意図はありますか?

板東氏:我々も当初はそうなるかもしれないと思いました。しかし、映像系については、新しい需要を開拓しています。つまり、CATVでもともとペイチャンネル(ペイパービュー)を利用しているユーザーと、インターネットで映像を楽しもうというユーザーは、層が違ったのではないかと。層が違うから、ひかりTVがユーザーを獲得することで、映像コンテンツ市場を拡大することになると思います。我々が映像系サービスをやることで、日本のコンテンツ市場の拡大に貢献できると確信しています。有料多チャンネル放送の世帯普及率は日本はまだ20パーセント程度です。アメリカは80パーセントを超えています。日本にはまだ潜在的な需要があるので、なんとか世帯普及率を上げたいのです。弊社では光ユーザーを対象としたアンケート調査をしていますが、ひかりTVユーザーの多くが、過去に衛星テレビやケーブルテレビに加入したことがない人たちです。全体の70%が初めてひかりTVで有料チャンネルを契約しています。つまり、ひかりTVがきっかけで、有料多チャンネルを初体験するユーザーが増えているのです。

——コンテンツの制作も行っているとか

「ネコナデ」や「幼獣マメシバ」など製作委員会方式の作品に私たちも出資し、自主放送やビデオオンデマンドでの配信の権利をいただいています。3月下旬には三浦半島の三崎高校という廃校でロックコンサートをやるんですが、NHKエンタープライズとJFNと弊社でやります。これはテレビとラジオとブロードバンドのメディアミックスです。ライブ中継を実施すると共に、そのライブ中継の後VOD配信するなど、いろいろな展開をやりたいと思っています。今後もこういう形でコンテンツに投資し、市場拡大のお役に立ちたいと思います。

——テレビの環境も変わってきていますね。記者会見でIPTVをアピールするメーカーも多くなってきました

板東氏:ひかりTVについては、セットトップボックスを繋いでテレビで観ますが、一部テレビには、ひかりTVのチューナー機能を内蔵していただいています。現在は東芝の37インチ以上の機種、シャープのハイエンドタイプの一部機種が対応しています。ゆくゆくは他のメーカーのテレビにも入れて頂くように交渉しています。いまのテレビは三波共用といって、地上波、BS、CSですが、チューナーを入れた四波共用に、将来できればと思います。さらに、テレビパソコン(AVPC)、DVRにもひかりTVチューナーを入れて頂くよう調整しています。また、できるだけ早い時期に、ひかりTVもモバイル端末との連携を考えていきたいと思います。いきなり、映像を配信しなくても、例えば、ケータイから視聴予約ができるなど、できるところからやっていきたいと考えています。

——最後に、今年の抱負についてお聞かせください。

板東氏:2、3年前から「生まれ変わって進化する−Reborn & Evolution−」というテーマを掲げています。単純なISPから、トリプルプレイサービスを提供するBSPへ生まれ変わっていきたい。映像をビジネスとして確立すればそれが達成できる。だからなんとしても、映像系事業を黒字にできる目処を今年、付けたいと思っています。そうすれば、私たちはトリプルプレイの成功者として一番乗りすることができます。
《RBB TODAY》
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