【インタビュー】NTTぷらら新社長・永田氏が語る、激戦の映像部門で勝ち残るための“戦略” | RBB TODAY
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【インタビュー】NTTぷらら新社長・永田氏が語る、激戦の映像部門で勝ち残るための“戦略”

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NTTぷらら社長・永田勝美氏
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 NTTぷららがNTTドコモの子会社になるとともに、代表取締役社長に永田勝美氏が就任した。従来技術部門の統括を行ってきた永田氏だが、これからのNTTぷららの戦略をどう考えているのか?競合激しい映像部門をどう勝ち残っていくのか、直撃した。

――NTTぷららの代表取締役社長に就任して、これから前社長の板東さんの方針と違う方向に行くのかどうか、また強化していく部分などを教えてください。

永田氏:新社長として、板東の実績をうまく引き継ぎながら、さらに会社を成長させることが私の責務だと考えています。NTTぷらら(以下ぷらら)は、もともと「新しい事業領域を切り開く」というミッションを持っています。ドコモといろんな面で連携していきますが、同時にNTTぷらら独自の事業展開も着実に進めていきます。NTTぷららは、映像を中心としたコンテンツビジネスの中核会社だと言っていただいている部分もあるので、映像分野やコンテンツ分野に対してしっかりと取り組んでいきたいと思っています。

――NTTドコモにもdメニューなど映像中心のコンテンツがありますが、そちらとは競合しないんですか

永田氏:映像の事業戦略の中で、映像単品で勝負していくということであれば、ぷららは映像で、ドコモはdメニューに関連する映像部門を支えればいいという話になりますけれども、おそらくそういうことではないと思っています。いろんなコンテンツサービスがあって、それをうまく連携させていかないとお客さまにとって良いサービスにならないんじゃないかと考えていますし、パーソナル化をして深いコンテンツジャンルをお客さまに届けていくことが大事です。



――今後、社内の体制は変わりますか。

永田氏:NTTドコモの傘下に入って、役員構成を変えました。NTTぷららの場合、事業本部の数は多くないのですが、本部長のすべてが役員というバランスのいい形にしたのと同時に、重要な意思決定の際に本部の連携をこれまで以上にしっかりと図れるようにしました。ドコモの支援も受けられるように、ドコモからの非常勤役員も入れました。この新体制によって、新たなお客さまの獲得や満足度の向上を目指しています。


■ビジネスの中心はテレビからスマホへ



――現在、映像ビジネスは厳しい環境にあると思いますが、どのような戦略をお考えですか。

永田氏:今の映像ビジネスは、外資系が入ってきたり、日本の放送局が直販したりといった現状があって、確かに厳しい状況にはあると思っています。一方で、ユーザーのサービスの利用の実態はというと、かなり視聴スタイルが多様化してきています。我々は、そこに適応したサービスを作らなくてはならないと思っています。また、今まではマス向けに総合編成的なジャンルの品揃えを提供するスタイルだったのですが、これはもう差別化にはなりません。これからは、オリジナリティのあるコンテンツの提供が必要だと考えています。

――今までAKB48のオリジナル番組を制作されたりしていましたが、今後はそういった番組が増えていくということですか。

永田氏:はい。「いろいろなものが見たい」というユーザーは一定数いますから、そういう方々に訴える総合編成的な品揃えの中に、NTTぷららでしか見られないさまざまなジャンルのコンテンツが必要だと思います。

――今後、ユーザーに対してどのようなアプローチを図っていくのでしょうか。

永田氏:現在NTTドコモのdポイントクラブの会員数は7千万人くらいですが、これはほぼスマホユーザーです。我々は今までテレビファーストなサービスを展開してきましたが、ドコモグループの強みを生かして、今後はスマホファーストのサービス戦略を大胆に展開していきたいと考えています。我々のサービスを使いこんでいただけるスマホネイティブのユーザーに対してアプローチするためには、パーソナライズが大事になってきます。

――つまりコンテンツそのものを変えていく方向と、個々の趣向に合わせていく方向の2つのパターンでアプローチしていくということですか。

永田氏:ニッチなジャンルが大好きなユーザーをしっかり満足させたいですね。例えば、AKB48が大好きな方にはアイドル、釣りが好きな方には釣り関係のコンテンツをお届けする。釣り番組を見ていたら、釣りの道具セットを買いたくなったり、イカ釣り体験ツアーに行きたくなったりしますよね。ユーザーは、自分に深く適合したジャンルの趣味趣向にはお金を使います。映像というコンテンツからショッピングやエンターテインメントなどのコンテンツにつなぎ合わせて、ユーザーが充実したサービスを利用したと満足していただけるような形にすれば、月に1万円位は使っていただけるのではないか。これはスマホサービスから始まって、パーソナライズを通して、そこからいろんなマルチサービスにつなげていくストーリーです。



――サブスクリプション(製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払う方法)みたいなイメージでしょうか。

永田氏:ユーザーにはそういうシステムが一番いいんじゃないかと思っていますが、ケースバイケースだと思います。ペイパービュー(ユーザーが視聴した分だけ料金を払う方法)というやり方もありますし、いろんな形態があると思いますね。

――例えば、ペット番組であれば、映像からペット関係の商品や保険につなげていくといったようなことですね。

永田氏:はい。もう一つの時代の流れっていうのは、ユーザーは受け身のサービスから、リアルな体験を重要視する方向に変化しています。リアルな体験とネットの体験を組み合わせていくことで、ユーザーの満足度や趣向に対する深みを追求していくことは、非常に有意義なことだと考えています。

――ライバル企業についてどうお考えですか。

永田氏:GAFA(4つの主要IT企業【Google、Amazon.com、Facebook、Apple Inc】の頭文字を取った総称)は、それこそ資本規模、投資規模で太刀打ちできないやり方をしますよね。同じ土俵で戦っても消耗戦になるだけです。彼らが苦手なネット外のオフラインの部分で、ユーザーにアプローチするのが良い手法だと思います。O2O(Online 2 Offline オンラインからオフラインへ行動をうながす施策)をやっていくことで差別化ができると考えています。

――Amazonは映像も積極的にやっていてECも持っていますが、どのように見ていますか。
永田氏:Amazonが面白いのは、オフラインの部分でリアル店舗を持っていて、映像とショッピングサービスのつながりがあることです。けれども、我々がドコモと連携してやっている、音楽やスポーツのライブのようなリアルなコンテンツいうのはAmazonもやっていないと思います。ネットの世界とリアルな世界をつなげることが、ユーザーに粘着性の高いサービスを提供することになると思います。

――AbemaTVについてはどうでしょうか。

永田氏:ネットの特性をうまく生かした、地上波ではやれない、やらない番組作りをしていると思います。記者会見をノーカットで流すのは非常にいいことですね。

――今、それをやらないのはなぜですか。

永田氏:技術的にはもうできるので、今後は進めていきたいと思います。AbemaTVはインタラクティブなところをうまく使っているなと思います。アメリカでは、通信なんだけど放送的にやって、ユーザーが全員参加できるようなクイズ番組が流行っていたりします。よりたくさんのユーザーを集めてスマホファーストでやっていく番組作りは、仕掛けとして面白いと思います。


■5Gと音楽ライブは親和性が高い



――5G(第5世代移動通信システム)に関して、今後の展望をお聞かせください。

永田氏:ドコモからは、5Gの「低遅延」、「大容量」、「同時に多数の端末がつながる」などの特性を生かして、キラーコンテンツとして映像を活用したサービスを期待されています。一つはxR(VR、AR、MRなどの総称)ですね。リアルな世界の上に映像をかぶせるので、サービスとして5Gと親和性が高いと思っています。ドコモでこの前提携を発表した、Magic Leap社の端末は、5Gと連携させて使えば面白くなるだろうと思います。ゲームやライブの映像をそれで見た時にすごい演出が見えるなど、今まで経験したことがないような体験ができるサービスを手がけていきたいと思います。



――今後、こういった技術をどのようにビジネスに活用していきますか。

永田氏:音楽のライブは非常にポテンシャルがあると思っています。あるアイドルグループの話なんですが、実際の会場に5万人呼んで、さらにパプリックビューイングで映画館も押さえて中継したんですが、それでも入りきれない人たちに向けて、ドコモと連携してスマホでも中継したんですよ。マルチアングルで見ていただいたり、コメント機能を使ってみんなで会話しながら盛り上がりましょうと。そうすると1回のライブで約20万人動員できるんです。この20万人がわーっと集まって一斉に解散してしまうんです。こんな機会損失はないと思います。こういったユーザーに対して、サブスクリプションで深いコンテンツを提供してサービスを継続的に利用していただく、それによってユーザーも満足できるような仕掛けができないかと思っています。

――それは5Gならではなんですか。

永田氏:5Gの方がより凝った演出もできますし、これまでよりも素晴らしい体験ができると思いますね。他にも、ライブが終わってすぐ熱が冷めないうちにセットリストをユーザーに教えて、リンクをたどったらダウンロードできるとか、会場では売り切れになってしまうようなライブグッズを事前に販売して、それを持ってライブに来てもらうなど、機会損失を防ぐためにいろいろな場面でIT技術が使えると思います。

――ゲームの分野についてはどうでしょうか。

永田氏:我々はクラウドゲームを作っていますが、5Gになると、モバイルでもアクションゲームや格闘ゲームに十分対応できるようになります。5Gによって利用環境が広がるので、いろんなサービスの展開の中でユーザーを増やしていきたいと考えています。

――コンテンツの制作において、5Gのメリットはありますか。



永田氏:今までは、映像を制作するためにはたくさんの人や機材を用意する必要があり、非常にコストがかかっていました。それが、これからは5Gの特性を生かすことでコスト面で非常に効率的に制作を行うことができるようになり、これまでコストがネックでできなかったような映像をユーザーに届けることが可能になります。今後、制作側と配信側の両面から5Gを研究して、効率的にサービスを提供していきたいと考えています。
《RBB TODAY》
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