TVアニメ「追放者食堂へようこそ!」で料理人・デニス役を務める武内駿輔と、食堂の看板娘である元奴隷の美少女・アトリエ役を務める橘茉莉花の放送直前インタビューが公開された。同作は2018年に「小説家になろう」で連載開始し、シリーズ累計販売数100万部を突破した人気作品。7月3日よりTOKYO MX、CBC、BS11、AT-Xにて放送開始となる。

クエスト失敗の責任を負わされ、超一流冒険者パーティー「銀翼の大隊」を追放された料理人・デニス。料理人としての夢だった食堂を開くため奔走する中で奴隷商に売られていた少女・アトリエと出会う。彼女の瞳の中にかつての自分を見たデニスは、持ち金をはたいてアトリエを引き取ることに。パーティーから追放された料理人と傷を負った少女。ふたりで開く「冒険者食堂」の行方は果たしてどうなるのか。


【インタビュー全文】
――原作を読まれた感想を教えてください。
武内:モンスターが出てくるファンタジーの世界観の作品なのに、食堂の雰囲気がすごくリアルだと思いました。地域の人々に愛される町中華のような親しみが感じられて。僕もそういうお店に行くのがすごく好きなんですが、食堂というのは料理を食べるだけでなく、人と人を繋げてくれるコミュニティの場所でもあると思います。この作品は食事をしながら店員とお客さんが会話をする様子も丁寧に描かれている印象がありました。食事を通して人々が交流し、成長していくことがテーマになっているので、すごく素敵なことだなと思います。
橘:私は炒飯が大好物なんですが、原作を読ませてもらったとき「こんなに美味しそうな炒飯が出てくるんだ」と感動しました。カツ丼やラーメンもすごく美味しそうで、「アニメ化されたら、もっともっと美味しそうに見えるんだろうな」と期待が膨らみました。


武内:原作コミックの炒飯なんて、お米の一粒一粒まで丁寧に描かれていてパラパラ感がしっかりと出ていますよね。
――おふたりが演じているキャラクターの印象をお聞かせください。
橘:アトリエは言葉数こそ少ないですが、自分の意志をしっかりと持っている強い子です。また自分よりも他人のために動くことができるところは、デニスと似ていると思いました。周りがけっこう見えていて他人に気遣いができる優しさがあります。
武内:デニスは頼りがいのある兄貴分であり、とても懐がでかいナイスガイですね。それと同時に超一流冒険者パーティーの『銀翼の大隊』を追放されたことから、人生における大きな目標を諦めた男でもあります。その後は自分が一番過ごしやすい環境でセカンドライフを送ることになりますが、そんな境遇だからこそついつい困っている人が目に入ってしまう。そこは彼が元々持っている人柄の良さや優しさとは異なる、彼だからこその奥行きだと思います。アトリエに対しても、未来を諦めるしかない「奴隷」として売られている彼女を見て、自分と似た境遇だと思ったから、放っておけないという気持ちが生まれたんじゃないでしょうか。


――お互いのキャラクターの印象も教えてください。
武内:アトリエは物語が進むにつれて表情が豊かになっていくんですが、両親が亡くなって以降、居場所が無くて気が付いたら奴隷として売られていた子なので、そもそも自我という物がよくわからないまま育ってきたのではないでしょうか。そんな彼女がデニスという初めて自分と対等に話してくれる人物と出会ったことで、ついに自我が目覚めるんです。物語が後半になるとアトリエがデニスを見習って他人をはげましたりするんですが、そういうことができるようになったのは彼女の中に「自分はこうしたい」という自我が確立したからなんだろうなと思います。デニスの影響を受けて成長していく彼女を見るのは純粋にうれしいですね。
橘:私としては、完全にデニスはアトリエの家族であり父親のような存在だと思いますね。アトリエが理不尽なことで苦しんでいると演じている私も怒りが湧いてくるんですが、そんなときはデニスがいつもアトリエの思いを代弁してくれるのですごく頼もしく感じています。またアトリエに何かあったとき心配したり焦ったりする様子を見せるのが、まさに親心だと思いますし、ふだんの泰然とした様子とギャップがあってすごく面白いです。
――改めて、オーディションに合格した時の気持ちを聞かせてください。
武内:僕は主人公役を担当する機会があまり多くないので、今回はチャレンジだなと思いました。とはいえ物語の中心はアトリエだという思いがあったので、あくまでもアトリエの先導役に徹しつつ、デニス自身にフォーカスが当たるシーンをしっかりと演じるというのが課題でした。夢に向かって成長していく王道の主人公像と違って、デニスは最初の目標を諦めつつも、どこかで心残りがあるという複雑な思いを抱いているので、それを1クールという限られた時間の中でどこまで表現できるのか心配でした。でも茉莉花ちゃんをはじめとした共演者の皆さんにすごく助けられ、なんとか乗り切ることができましたね。
――橘さんはオーディションの合格発表当時はどんな心境でしたか?
橘:結果が届くまでの時間がけっこう空いていたので、「ダメだったんじゃないか」という話をマネージャーさんとしていたんです。ほとんど諦めた状態から、ああいう形で合格を伝えていただいたので本当に嬉しかったですね。発表されたときは驚きすぎてほとんど上の空だったんですが、帰り道でだんだん合格したという実感が湧いてきたので思わずひとりでニヤニヤしながらスキップしてしまいました(笑)。
武内:オーディションは最初からアトリエをやりたいと思って受けたの?
橘:そうですね、私が演じやすいキャラだとは思いました。また、「炒飯が好き」という共通点もあったので(笑)、「絶対に合格したい!」という思いでした。

――第1話の収録はいかがでしたか?
橘:すごく緊張しました……。
武内 誰よりも早くスタジオに来ていたよね(笑)。
橘 迷子にならないようにするためです(笑)。あとはスタッフさん、先輩方への挨拶をしっかりしたかったので、一番にスタジオ入りしようと思って。最初は緊張しすぎてほとんどの記憶が飛んでいるんですが、キャストの皆さんがとても温かく迎えてくれたことは覚えています。初対面だった武内さんも、「何歳なの?」と気さくに声をかけてくださったので本当にありがたかったです。皆さんのおかげで徐々に心がほぐれてきて、本番では良い緊張感の中で演じることができました。
武内:僕も大好きな声優さんが何人もいらっしゃったので、すごく素敵な現場でした。演じる前に考えすぎずトライアンドエラーの精神でやらせていただいても、きっと周りの方々がサポートしてくださるという安心感がありましたね。そして、アトリエ役が茉莉花ちゃんでよかったなと思いました。自分と対話する時間が長いキャラクターを演じられる方ですから、やっぱりその方の個性によって僕の作品への取り組み方もすごく変わってくるので。本作が「はじめまして」でしたが、すごく良い雰囲気で収録することができました。
――すでに全話収録済みとのことですが、演じていて楽しかった、手ごたえを感じたシーンについても教えてください。
橘:物語の終盤で、アトリエが笑顔になるシーンがあるんですが、そこは本当に自然に演じることができた気がします。アトリエと一緒に成長できた、その積み重ねがあったからこそできた演技だったと思います。
武内:演じていて手ごたえを感じるキャラクターというのは、積極的にその場を揺り動かすことで相手が釣られてしまうようなキャラクターなので、デニスというのはあまりそういうタイプではないんですが、それでも自然体というか、嫌みの無い演技をしようと常に心掛けました。まだオンエアを見ていないので、それができているのかどうかわかりませんが(笑)、視聴者の皆さんがデニスを好きになってくれたらうれしいですね。
――アフレコ現場で思い出深いエピソードはありましたか?
橘:印象的だったのは主に(ビビア役の)伊瀬(茉莉也)さんがアフレコの合間に美容のお話をしていたことですね。皆さんとてもお綺麗なので、私も情報収集させてもらおうと思いまして、楽しくお話をさせていただいたのを覚えています。
武内:ランチどきの交流会みたいな和やかな空気感がずっとあったよね(笑)。僕は旅行とか洋服とかご飯の話をしたと思います。ざっくばらんに話せる現場でした。
――『追放者食堂へようこそ!』には美味しそうな料理がたくさん登場しますね。ちなみに、ご自身にとって大好きな料理といえばなんでしょうか?
武内:麻婆豆腐が好きですね。行きつけの麻婆豆腐が美味しい店があるぐらいですから。そこの麻婆豆腐はちょっとしょっぱめでゴロゴロとした肉感があるんですよ。辛味よりも先に豆腐のフワフワ感や素材の旨味が感じられるので、すごく思い出に残る味だなと思います。店主のおじいちゃんがすっごい腰を回しながら元気に切り盛りしている光景も、味があるんですよ。
橘:話を聞いているだけでお腹が空いてきちゃう(笑)。私はおばあちゃんが作るニンニクをたくさん入れた唐揚げと、さくさくのエビフライですね。地元に帰ると絶対に作ってくれるんです。
武内:ニンニクはどの段階で入れるの?
橘:最初に漬け込むときにお醤油と一緒に入れるんですが、ガッツリとニンニクが沁み込んでいて食べた次の日はもう人に会えないくらいで(笑)。私が東京に戻るときはおばあちゃんが冷凍できる状態でお土産に持たせてくれるので、それがすごく嬉しかったりします。武内 油物は作るのが大変だからね。孫の喜ぶ顔を見るためにがんばって作ってくれるのはすごいなと思います。

――最後に、第1話の見どころをお願いします。
橘:第1話から私の大好物の炒飯が出てくるので、まず炒飯が必見です!そしてデニスの料理はこの作品の大事な要素でもあるので、彼が腕によりをかけた料理の数々をご期待ください。アトリエは第1話の段階だとまだ自分の本心を出せずに思い悩んでいる状態ですが、物語が進むにつれて色んな人と出会って成長していくので、そんなアトリエを見守りながらアニメを楽しんでほしいです。それと第1話後半でアトリエの顔がかなりギャグっぽくなるシーンがあるので、そこも注目してください。いつもと違う感じのアトリエを演じることができて、私も楽しかったです。
武内:この作品は「よし見るぞ」と意気込むより、「お、今日放送日か」くらいの心持ちで気楽に見ていただくと、より心を動かされるのではないかと思います。忙しい日常を送っていると忘れがちな、食事を通して人と話すことや人の温かさに触れることの喜びがしっかりと描かれているので。心の栄養補給におすすめです。そんな第1話のデニスに関しては、アトリエに振り回されている様子に注目してほしいです(笑)。一流の冒険者かつ料理人である彼が、まるで宇宙人を捕まえたみたいにあたふたする様子を見てぜひ笑ってください。
