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【連載「視点」】京都の伝統工芸が動き出した!新しい価値観を世界に発信する職人たち

エンタープライズ その他
金網つじのランプシェイド
  • 金網つじのランプシェイド
  • もともとは豆腐すくいにつかわれていた伝統工芸の技術
  • 辻徹氏
  • 150cmの織機で作った西陣織のソファー
  • 金箔を織り込んだりというのは従来の技術
  • 細尾真孝氏
  • 左から細尾真孝氏、積水ハウスの須藤晴彦氏、金網つじの辻徹氏
  • GO ONプロデュサーの各務氏
●豆腐すくいの技術がランプシェイドに

 金網つじは、京都・高台寺と護国神社の参道にある。高台寺周辺は昔から豆腐料理が有名であったが、金網つじは金色に輝く美しい豆腐すくいという料理道具を作り続けてきた。

 伝統技術を父親から受けついだ辻徹氏は7年前にはじめてパリに渡り、同社の豆腐すくいをはじめ様々な伝統工芸品を紹介したが、なんの評価もされなかったという。道が開けてきたのは3年前だ。「うちは京都とか日本の食文化にフォーカスしているからこそ今まで生き残ってきているんです。しかし、他の国に行くと食文化も違う。今まで11ヵ国行ってるんですが、色んな国のいろんな食べ方と生活感があります。そこに日本に長年寄り添ってきたモノを持って行っても全然売れなかったのは当然のことです」。そのなかでどういうものがグローバルに評価してもらえるのか?今の技術を使ってできるものなのか?を見つめ直し、ランプシェイドやバスケットという世界共通で使われるものにたどり着いたという。今では、ランプシェイドだけでなく、米国向けにケーキクーラー、台湾の火鍋かごなど、その国その国の文化に合わせて料理道具を作っているという。

 取材時もアメリカから帰国したばかりだった辻氏。「今回もカリフォルニアでランプシェアイドが大好評だった」「向こうの人ってランプを吊らないんですよね。スタンド型にしてくれたら欲しい、という声もあった」と現地の反応を教えてくれた。

 技術そのものは伝統として引き継ぎながら、今求められているものを作っていく。今までのやり方を変えるのは難しいが「それは超えていかないと」と辻氏は強調する。「イメージもその時代その時代で変えていったからこそ、100年後にはリアルな形で残っているという状況になるのではないだろうか」。ハイテクメーカーとのコラボにも動きだしている。

●150cm幅の織機がマーケットを広げた

 西陣の歴史も長い。「西陣はある意味、1200年間ほとんど国内だけでやってきたわけです。でもこの30年でマーケットは10分の1に縮小。斜陽産業なんですが、世界の人が全く知らない技術が手元にはあるんです」と話すのは細尾真孝氏だ。

 西陣が一般人向けの製品となったのはここ100年のことだという。「それまでは貴族や将軍家など一部の人のための織物でした。金箔を織り込んだり、貝殻を細かくして織り込んだり、いわゆる宝石的な要素が入っていました」と。活躍の舞台が世界に広がったのは、細尾氏が同社に導入した技術が大きい。6年前に従来の帯用の32cmの織機に加え、世界に1台しかない150cm幅の織機を採用。5年かけて5台に増やしていった。これにより、継ぎ目がでずソファーや壁紙のテキスタイルなどとして注文が入るようになった。

 もともと西陣織には、特殊な糸を使いながら通常の50倍のツイストをかけて織り込むことでふわっと仕上げる技術や前述のように金箔を織り込むが数百年前からあった。マーケットでの差別化も150cmの織機を入れることで可能になった。おそらく細尾氏の発想がなければ、テキスタイルとしての活躍の場はなかったろう。また、海外向けには和柄を外し、水面を写真撮影してスキャンするなど現在の技術を使いながら、今でしかできない西陣織を提供しているという。結果、前述のシャネルやヴィトン、ディオールなどのラグジュアリーブランド店の内装にも採用されている。

 GO ONのショールームは予約制だが、今、海外からの見物客がひっきりなしに訪れるという。
《RBB TODAY》
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