【連載「視点」】京都の伝統工芸が動き出した!新しい価値観を世界に発信する職人たち | RBB TODAY

【連載「視点」】京都の伝統工芸が動き出した!新しい価値観を世界に発信する職人たち

エンタープライズ その他

金網つじのランプシェイド
  • 金網つじのランプシェイド
  • もともとは豆腐すくいにつかわれていた伝統工芸の技術
  • 辻徹氏
  • 150cmの織機で作った西陣織のソファー
  • 金箔を織り込んだりというのは従来の技術
  • 細尾真孝氏
  • 左から細尾真孝氏、積水ハウスの須藤晴彦氏、金網つじの辻徹氏
  • GO ONプロデュサーの各務氏
●革新してこそ伝統

「京都の伝統工芸の世界では、組合とか産業ごとの集まりはあったのですが、領域を超えた連携はありませんでした。結構縦割りの世界だったんですね。ただ、そんなことも言ってられない状況になってきています。この20年間で産業の規模が10分の1くらいになっていったり……」

 今、地方の伝統工芸が厳しい状況におかれている。それは観光地として国内外から常に注目されている京都という地も例外ではない。冒頭のように危機感を表すのは電通関西支社京都営業局の各務氏だ。「伝統工芸品は、常に時代に合わせて革新を続けているからこそ伝統工芸」として、新しい動きが必要であると強調する。西陣織で歴史のある株式会社細尾の取締役である細尾真孝氏も「西陣ということは、(海外には)まったく知られてないですね。日本では有名なんですけど、着物の帯のこともじっくり説明しないと、ベルトか何かくらいの認識でした」と話す。

 このような危機感から生まれたプロジェクトが「GO ON」だ。前述の各務氏がプロデューサーとなり、京都の伝統工芸の後継者ら6名によって構成されるクリエイティブチームだ。株式会社細尾の細尾真孝氏、開花道の八木隆裕氏、広長齋小菅の小菅達之氏、金網つじの辻徹氏、中川木工芸比良工房の中川周士氏、朝日焼の松林佑典氏が参加している。それぞれ、何百年にもわたって受け継がれてきた技術や素材をベースに、新しい価値を国内外に提供していこうとしている。

 たとえば日本最古と言われる手作り茶筒の老舗である開花堂は、その技術を利用してピッチャーやトレイを製作。木桶で有名な中川木工芸比良工房は、デンマークのデザインスタジオとコラボした椅子やシャンパンクーラーに挑戦している。豆腐すくいや茶こし、焼網などの金網製品を作り続けてきた金網つじは、美しいランプシェイドを手掛け、海外から注目を集めている。また、織物を手掛けてきた細尾は、新しい織機も導入しシャネルやヴィトンなどブランド店舗のインテリアデザインの生地として注文を受けている。

 しかし、日本を代表する伝統工芸を変えることに抵抗はなかったのだろうか?「伝統工芸って変わろうとするとすごいストレスがかかります。最初、GO ONがスタートした時にはお叱りをいただいたり、彼ら2代目は、親から何やってるんだ、どんな意味があるんだと、言われたり……」「辻さんの例でいえば、料理の道具を作っていたのにランプシェイドに挑戦する。そんなことしていいのか?という話はあったんですけど、何もしないと衰退していくだけなんです。皆さん何か踏み出さないと次はないという危機感を持ってやってらっしゃる」とプロデューサーの各務氏は話す。

 西陣織を見ても、100年周期ぐらいで形を変えてきている。100年前は装束であり、その前はお坊さんの袈裟、もっと前には海外に輸出していたこともあるという。伝統は常に革新を続けているからこそ伝統だと強調する。

 GO ONでは常に新しいメンバーを募集しているが、そのチャレンジは今日明日だけのことではなく、50年、100年後、伝統工芸が残り続けていくために何をやるべきかを常にチームのなかで話し、国も巻き込みながら国内海外向けに編集して発信、輸出していく。その動きの甲斐があり、最近ではGO ONと積水ハウスがコラボした分譲マンション「グランドメゾン京都御池通」の販売も決定した。デザインに伝統工芸を取り入れた高級マンションだ。積水ハウスの須藤晴彦氏は次のように話す。「伝統工芸の世界は、職人さんの高齢化が問題になっています。住宅・建設業界も同じ構図です。保守的ではいけませんが、かといって常に新しいものばかりでも生活には馴染まない。古いものと新しいもののバランスが重要です」。同社では、クリエイターとメーカーの挑戦と意気込んでいる。
《RBB TODAY》

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