ヤフーでは、ワイモバイルの誕生を「日本初のインターネットキャリア誕生」というキャッチコピーでPRを展開し始めた。これは、従来のキャリアにおける主となるサービスは「通信(音声通話を含む)」であり、「インターネットサービス」はその上で展開される従たるものと位置づけられていた。ワイモバイルではこの主従関係を逆転させ、「インターネットサービス」を主とし、そこに「通信(音声)」を従とするサービスとして展開するイメージを描いている。 現時点では、ヤフーがイー・アクセスの株式を取得するという発表にとどまっており、どのような料金体系や端末ラインアップでサービスを展開していくかは未定としている。既存3キャリアに対し格安サービスを狙う、航空会社で言うLCCを目指すのかという質問に対しても、肯定も否定もなく「未定」とした。NTTドコモほどではないにしても、ウィルコムやイー・アクセスはMVNO向けに回線も提供してきているが、ヤフー傘下となることでMVNOへの回線提供についてもこれまで以上に力を入れていくことになるのだろう。 ヤフーでは特設サイト(http://recommend.yahoo.co.jp/ymobile/)を開設し、ユーザーからの意見募集を開始している。ここに書かれているユーザー向けのメッセージを見ると、『スマホは不安、タブレットは難しそう。そもそもどんな使い方をしたらいいかわからない。Y!mobileは、そんな悩みに応えます。』と宣言している。モバイル業界における急激なスマートフォンへのシフトに追いつけなかったユーザーを救い上げ、インターネットの利便性をより多くのユーザーに享受してもらおうというコンセプトが伝わってくる。エントリーユーザー向けのサービスの拡充や、既存のキャリアよりも手軽な料金体系でサービスを展開することもきっと力を入れるのだろう。端末調達に関しては、先だってソフトバンクが買収した、100社以上の端末メーカーと取引がある端末卸売会社であるブライトスター(米国)の活用も期待できる。 いずれにしても、従前の通信キャリアビジネスの常識にとらわれない、新たな通信キャリアの誕生として今後の動向に注目したいところである。ワイモバイルが掲げる「全ての人の手元にインターネットを届けたい」という理念には同意できるところがある。スマートフォンが十分に普及している都心部での生活者にはあまり実感がわかないかもしれないが、同じ日本でも地方に目を向ければインターネット利用率は一気に低くなる。スマートフォンの普及もこれからという地域が少なくない。筆者としてはそうした地域の人たちにもモバイルインターネットの利活用によってより生活を便利に、そして豊かにしてもらいたいと考えているし、そのためには既存のスマートフォンやタブレット端末の使いにくさの改善や、ただ売れればいいというような販売施策の見直しなど課題は山積と考えている。ワイモバイルの新たな戦略が、行き詰まり感さえ感じられる現状のモバイル業界に一石を投じるものとなることに期待したいものだ。
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