【NTT Communications Forum 2011】ICT部門の海外進出とクラウド導入の方向性とは……グローバルICT討論会 | RBB TODAY
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【NTT Communications Forum 2011】ICT部門の海外進出とクラウド導入の方向性とは……グローバルICT討論会

エンタープライズ 企業
ITメディア ITインダストリー事業部エグゼクティブプロデューサー浅井英二氏
  • ITメディア ITインダストリー事業部エグゼクティブプロデューサー浅井英二氏
  • NTT Communications Forum 2011 グローバルICT討論会
  • NTT Communications Forum 2011 グローバルICT討論会
  • 日経BP コンピュータ・ネットワーク局ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏
  • NTT Communications Forum 2011 グローバルICT討論会
 28日、NTT Communications Forum 2011にて、IT系メディア4媒体の現場トップによるパネルディスカッション「グローバルICT討論会」が行われた。

 今回出席したのはITメディア ITインダストリー事業部エグゼクティブプロデューサー浅井英二氏、朝日インタラクティブ CNET Japan編集長 別井貴志氏、アスキー・メディアワークス TECH.ASCII.jp編集長の大谷イビサ氏、そして日経BP コンピュータ・ネットワーク局ネット事業プロデューサー 兼 日経コンピュータ編集プロデューサーの星野友彦氏の4名。ITRのシニア・アナリスト、舘野真人氏がモデレーターをつとめた。

 討論会は、「東日本大震災を受けて企業のICT戦略はどう変わったか」「グローバルICTガバナンスのあるべき姿とは」「グローバル時代におけるクラウドの価値とは」「変わりゆくICTパートナーの条件」という4つのテーマに即して進行した。

 討論の内容は非常に多岐にわたるが、主要な論点を要約すれば以下のようになるだろう。

 市場としての魅力を失っている国内市場において、IT部門を含めた企業の海外進出と、コスト削減を目的としたクラウドの導入は不可欠な流れである。特に市場環境の変化の速度が速いアジア市場では、スピード感重視の対応が求められている。ビジネスプロセスの効率化や生産性向上の鍵を握るIT部門は、自ら提言や情報発信することが求められており、経営判断にも関与すべきである。また、経営陣はさらなるICTへの積極的な投資によってこれをサポートすべき、というのが全体の筋だ。

 以下、テーマの進行順に即して各論者の発言を見ていこう。


■ICTの災害対策は人の訓練も不可欠

 まず、東日本大震災による企業のICT戦略のインパクトについては、浅井氏が「今回の災害は想定外というが、日本は世界の0.25%の国土面積しか持たないが、活火山の7%が集中している。こういう現実があるのに、災害が想定外というのはどういうことか」と問題提起。

 大谷氏も「ニューヨークの9.11テロではツインタワーに金融系のデータセンターが集中しており、多くの金融会社がダメージを受けたが、あの事件を機に米国ではDR(ディザスターリカバリ)対策に本腰をいれるようになった。しかし日本でも危機は認識していたものの、対岸の火事という認識は否めなかった」と語り、災害対策が真剣に取り組まれてこなかったことを指摘。

 別井氏は、「阪神大震災の際にはDRについては様々に議論され、対策も講じられてきたが、東日本大震災ではこれらの教訓が実践されなかった。教訓としては、たとえ(DR)対策をしても訓練していなければ意味がないということ」と述べ、対策を打つだけでなく日頃からの具体的な対処行動を身につけておくべきとの認識を示した。


■ビジネスプロセスの標準化を見据えたグローバル化を

 こうした大きな災害を受けて、国内の企業のなかにはデータセンターを始めとするICT機能を海外移転させる動きが強まっている傾向があるが、大谷氏は「たしかに企業の成長戦略を描くに当たって海外進出は避けて通れないというケースもあるが、たとえばタイの洪水では移転先が大きな打撃を被った。(中略)これらの事情を見ると、とくに情報システムを見ている方は(海外進出について)非常に重い選択をしなければならない」と述べた。

 星野氏は、海外移転の傾向について触れ「昔は日本のビジネスプロセスを海外に押しつけるとか、日本の旧式化したマザープラントを海外に持っていく、というのが主流だった。しかしそれでは現地のコンシューマーの支持を得られない。最近ではアジアで情報システムだけでなくビジネスプロセスごと標準化し、それを日本に導入するという流れになっている」と説明。

 大谷氏は「この10年、15年の間に日本は投資先として重視されなくなった」と述べ企業にとっては、日本国内の市場も企業体としての機能もワンオブゼムという位置づけになりつつあるという認識を示した。


■ICTに対する投資額に見合った効果が出ているか

 一方で、クラウドの普及と進化は、ICT部門のグローバル進出を容易にした。海外も国内もシステムを一括で管理でき、自前の設備をもたなくても、一定のセキュリティ水準や効率を保てるようになったからだ。

 IT戦略に関わる社員を対象にしたITRのアンケートによれば、グローバルITガバナンスの推進体制は、現状では「本社(国内)IT部門の体制強化によって推進」するという解答が59.8%、海外IT部門の体制強化によって推進」という解答は6.4%に過ぎなかった。しかし、「今後」については国内のIT部門中心の体制で進めるという解答は4割に減り、海外のIT部門の体制強化を進めるという解答が13.8%へと2倍以上に伸びている。こうしたグローバル化の中で、ICT部門に対する投資効果をシビアに見る目が強くなったと見るのは浅井氏だ。

 「海外拠点を出して“予算統制しています”だけでは済まなくなった。投資金額に見合った価値が出ているのか、ビジネスの目的達成に寄与しているのか危機感をお持ちになった方々が回答した」と見る。

 一方別井氏はこのアンケートに解答した主体がIT部門であることに着目し、「(経営側が海外移転を)実際にやるかはまた別問題」と指摘。海外移転の理由としてコスト削減が大きな目的となるが、「海外で導入されているものを国内にもってくることで、コスト削減や効率アップの事例が増えないと意味がない」とも。

 星野氏も、「無理して急に世界すべての拠点で標準化させる必要はないまず、何をやっているのかを把握。ゴールを明確に描いて移行へのシナリオを描いていく。数年先を見据えて導入していくことが不可欠」と述べる。

 ICTの投資と効果に話が及ぶに至って、星野氏が指摘するのは「IT部門の人間がビジネスに乗り込んでいくことが重要」と述べるのは星野氏。

 別井氏はZDNETジャパンが実施した調査について触れ、「クラウド導入の効果として導入コストや運用コストの削減を期待していたが、特に運用コストの面で期待していたほどの削減が出来なかったという解答が多かった」といい、現状のクラウドのソリューションでは期待ほどのコスト削減効果が現れていない現状を説明した。

 安全性と効率面を考えれば「海外にデータセンターを置くとネットワークの遅延がどうしてもあるので、今ではハイブリッドで考えるのがあたりまえ。アマゾンEC2をバックアップに使ってプライベートクラウドをメインに、というようにうまく使い分けてメリットを出していくことが重要」(大谷氏)という。
《北島友和》
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