【シリーズ・テレビ新時代】新たなVODマーケット創出を狙うNHKオンデマンド | RBB TODAY
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【シリーズ・テレビ新時代】新たなVODマーケット創出を狙うNHKオンデマンド

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12月1日のスタートを告知する「NHKオンデマンド」のページ
  • 12月1日のスタートを告知する「NHKオンデマンド」のページ
  • 提供番組と販売形態
  • 提供番組と販売形態
  • アクトビラビデオ・フルのインターフェース
  • ひかりTVのインターフェース
  • 見逃し番組サービス
  • 特選ライブラリー
  • 提供部門と配信部門の役割
「NHKに限ったことではないが、テレビ全体の接触率の低下が叫ばれている。新たなチャンネルを作ることで、NHK全体の接触率を高めていけると期待している」

●テレビの接触率を高める

 19日から21日まで幕張メッセで開催された「IPTV Summit」。日本放送協会 NHKオンデマンド室の所洋一氏は、12月1日の「NHKオンデマンド」スタートを前に講演を行った。NHKオンデマンドは、NHKが放送した番組をブロードバンド回線などを通じて、国内限定でPCや高機能TVなどに“有料で配信する”動画サービス。いわゆるVODと呼ばれるもののひとつだ。現在も、すでにVODサービスは展開されているが、ブロードバンド時代のキラー素材としてしばしばあちことに登場するこのサービスも、マーケットとしては成熟したものになっていないのが現状だ。今回、NHKがそのサービスに参入し「幅広いジャンルのサービスを立ち上げることで、VODをあまり知らなかった層に認知をしていただくことができる」との期待は大きい。

 そもそも今回NHKがオンデマンド配信ができるようになったのは、まず昨年12月に成立した改正放送法によるところが大きい。改正放送法でNHKオンデマンドに関わるのは第九条第二項第二号など。「協会が放送した放送番組及びその編集上必要な資料(これらを編集したものを含む。次号において「既放送番組等」という。)を電気通信回線を通じて一般の利用にはに供すること(略)。(BtoC業務)」などが定めらた。ここでの注意点は、あくまでNHKができるのはNHKが放送した番組に限るということだ。独自に集めてきた番組を出す、放送してない番組を提供するなどはできない。また、第三十九条第二項では、独立採算で行い受信料を使ってはいけないと定められている。

 もう一点、オンデマンド放送の実施を遅らせていたのは権利処理などの問題だ。これに関しては昨年、経団連主宰による「映像コンテンツ大国を実現するための検討委員会」にて、ネット配信を進めるための報酬配分等に関するルール作りが検討された。ここで基本的なルールがひと通り出来上がったと言っていい。

●番組内容や価格は?

 NHKオンデマンドは、PC(ブラウザベース)、アクトビラビデオ・フル対応などのテレビ、J:COMオンデマンド(ジュピターテレコム)、ひかりTV(NTTぷらら)で立ち上がる。PCは対象OSがWindows XP/VISTA、Windows Media Player 10以上となっている。配信形式は、PCは低ビットレートのWMV(768kbps程度)と高ビットレートのWMV(1.5Mbps程度)のストリーミングを用意。J:COMにはMPEG2 14Mbps程度のHDで、アクトビラとひかりTVにはH.264 7Mbps程度のストリーミングで配信される。

 内容は大きく“見逃し番組”と“特選ライブラリー”に分類される。見逃し番組は総合テレビ、教育テレビ、衛星ハイビジョン、衛星第1、衛星第2の5波から1日10〜15本提供。具体的には「連続テレビ小説 だんだん」「大河ドラマ 天地人」(1月から)「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「その時 歴史が動いた」「ためしてガッテン」など90番組以上をラインナップ。ニュース番組としては「おはよう日本」「正午のニュース」「ニュース7」「ニュースウォッチ9」「BS列島ニュース」が提供され、随時更新。ニュースは速報性が要求されるため見逃し番組として随時提供されるが、その他は原則として放送終了後から24時間以内に提供がはじまる。公開は提供開始から最長1週間となる。特選ライブラリーは「NHKスペシャル」「映像の世紀」「プロジェクトX 挑戦者たち」「歴史への招待」「ダーウィンが来た」など1000〜1200本を提供。週1回更新で、毎週20本程度を公開。番組単にで期間設定される予定だ。

 12月1日からは各プラットフォームのトップにNHKオンデマンドのボタンが設置され、それを押すとそれぞれのレイアウトに合わせたNHKオンデマンドトップ画面が表示されるようになる。

 販売形態は単品販売、パック販売、月額見放題といった3パターンを用意。単品販売では、ニュース以外の番組で「プロフェッショナル 仕事の流儀」「その時 歴史が動いた」「きよしとこの夜」「大河ドラマ天地人」「ドラマ8 Q.E.D.証明終了」(来年1月〜)などは315円(税込み)、「ペット相談」「きょうの健康Q&A」 「「小さな旅」などは210円、「連続テレビ小説 だんだん」(15分)「時論公論」(10分)などは105円の見逃し番組として販売。基本は315円/1本だ。その他、月額見放題パックを1,470円で用意する。「大河ドラマ」「NHKスペシャル 宇宙 未知への大紀行」「NHK特集 シルクロード」「プロジェクトX 挑戦者たち」「その時歴史が動いた」「ためしてガッテン」など特選ライブラリーを315円、210円、105円で販売される。パック販売では、連続テレビ小説 「おしん」1週間6本パックの525円(税込み)、NHK特集「シルクロード−絲綢の道−」第1〜第6集パックの1,575円(税込み)、「アニメ おじゃる丸 傑作選」5本パックの840円(税込み)などがある。

●共通のメタデータを各プラットフォームに

 今回、NHKではオンデマンドを実施するにあたって、BtoB業務を行う提供部門とBtoC業務を行う配信部門を作ったという。提供部門にはメタデータ管理システムやエンコードシステムなど原盤製作機能を置き、そこから受け取ったファイルを配信部門が各プラットフォーム向けにトランスコードする。同時に、提供部門からのメタデータ(番組メタデータ)は配信サービスASPで受け取ってから、販売期間、価格、ライセンス期間などのメタデータを付与して各プラットフォームに配信する。メタデータは、当然各プラットフォームに共通なものを使い一元化を行っている。「当然各プラットフォームの考え方はひとつではないので、そこをひとつのメタデータでどう成立させるかというのが難しいところだった」と所氏は話している。

 今後上記前述以外のプラットフォームに広がりを見せる可能性もある。ただし、NHKオンデマンドはプラットフォーム事業者に次の要件を満たすことを要求している。コンテンツ編成をNHKが実施できることはもちろん、テレビ受信機を端末とする場合はハイビジョン品質でのサービスが可能であること。また、見逃し番組の視聴実施に伴いオンラインでコンテンツ・メタデータのデリバリーを行うため、オンラインでメタデータの登録が行えることも必要だ。さらに即時時公開停止が可能であることも含まれている。

 NHKオンデマンドがVODサービスあるいはIPTVサービスのキラーになる可能性はある。プロジェクトXや大河ドラマなどの人気番組はもちろん、利用者の多い語学番組も視聴に向いているコンテンツといえるだろう。語学番組に関しての詳細は不明だが「新3か月トピック英会話」「100語でスタート! 英会話」「テレビで中国語」「テレビでイタリア語」などが挙がっている。所氏が言うように、VODという言葉を聞いてもピンと来ない人々は大勢いる。これらの人がNHKを介して接触するようになれば、マーケット創出への第一歩となるかもりれない。
《RBB TODAY》
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