オープンソースIP-PBX「Asterisk」の生みの親マーク氏が来日 | RBB TODAY

オープンソースIP-PBX「Asterisk」の生みの親マーク氏が来日

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一般的な内線電話システムの例。内線を切り替えるための装置や、外線につなぐための装置、ボイスメール機能や電話会議機能のための装置など、高価な機器によって内線機能が実現されている
  • 一般的な内線電話システムの例。内線を切り替えるための装置や、外線につなぐための装置、ボイスメール機能や電話会議機能のための装置など、高価な機器によって内線機能が実現されている
  • Asteriskの例、様々な装置をPCやサーバに集約できるため、大幅なコスト低減が図れる
  • 米Digium社の最高経営責任者 マーク・スペンサー氏
  • マーク氏は大学在学中の1999年にLinuxのサポート会社を設立し、2002年に社名を現在のDigiumに変更してる
  • 2004年にAsterisk 1.0、2005年にAsterisk 1.2がリリースされ、2006年には100万ダウンロードを達成した
  • 2007年現在。社員は90人まで増え、ダウンロード数は1日あたり3,000を超えるという
  • Asteriskにはオープンソース版と、サポートが提供されるAsterisk Business Editionの2つのエディションが用意されている
  • Asteriskにはオープンソース版と、サポートが提供されるAsterisk Business Editionの2つのエディションが用意されている
 企業で使用される内線電話のシステムはPBX(回線交換システム)と呼ばれる専用の機器によって実現されている。PBXを利用すれば、社内での内線通話や外線への発信や着信が可能で便利な反面、機器が高価で運用コストも必要となる。SOHOや小規模の企業にPBXを導入し、本当に活用しきれるのか頭を悩ませている担当者は多いだろう。そんなとき、米Digium社のマーク・スペンサー氏が開発したオープンソースのIP-PBX「Asterisk」を試してみると良いだろう。

 Asteriskは、Linux上で動作するIP-PBX(IP電話対応のPBX)を構築するソフトウェアで、内線通話機能のほか、音声自動応答機能、ボイスメール機能、電話会議機能を装備していながらも、無償で利用できる。なお、Asteriskはあくまでもソフトであるため、実際にIP-PBXを構築する場合はLinuxが動作するPCまたはサーバなどのほか、IP電話機を用意する必要がある(外線への発着信する場合は、電話線を接続するための通信ボードなどの導入も必要となる)。

 今年30歳を迎えたマーク氏によって語られたAsteriskの開発の背景は、とてもユニークなものであった。マーク氏は、1999年の大学在学中にDigium社の前身となる、Linuxユーザに有償でサポートサービスを提供する会社を設立した。このとき、社内にPBXの導入を検討したがあまりにも高価であったためPBXの導入を断念したという。そののち、マーク氏は自身のLinuxの知識やC言語の知識を活かして独自にPBXを開発し、ここで開発されたPBXソフトが現在のAsteriskに受け継がれている。つまりAsteriskはマーク氏が必要に迫られた結果生み出されたソフトウェアなのだ。ちなみに、Linuxのサポート会社は、2002年に社名をDigium社に変更するとともに、会社の軸足をAsteriskの開発やサポートに移したとのこと。

 マーク氏によるとAsteriskには、複数のエディションがあり、Asteriskコミュニティによって開発が進められている「オープンソース版」と、よりプロフェッショナル向けの「Asterisk Business Edition」に分かれていることが紹介された。なお、オープンソース版は、さらに「トランク」と「ポイントリリース」の2つに分かれており、トランクは最新の機能をいち早く採用したバージョンで、ポイントリリースはバグ対策バージョンとなる。なお、Asterisk Business Editionの方は、ポイントリリースでフォローできなかったバグを対策した安定版と言えるもので、こちらはGNU GPL(General Public License)対象外の製品となる。

 オープンソース版を提供するメリットについてマーク氏は、開発や検証コストを低く抑えられるとし、正式な形でのサポートを必要とする企業にはAsterisk Business Editionを提供することで差別化を図っている。そして、Digium社の利益については、開発したオープンソースからは得ておらず、Asteriskを利用する企業や、Asteriskを採用したシステムを販売する企業へのサポートや、ソリューションの提供などによって得ていることが語られた。

 続いて、Asterisk Business Editionを採用し、携帯電話を内線電話に利用するモバイルセントレックスソリューション「Prog Office」を2006年9月より販売を行っているNTTソフトウェアとの関係について紹介が行われた。NTTソフトウェアは、IP-PBX市場への参入にあたり、複数のIP-PBXソフトウェアのソースコード解析評価を行い様々な比較を行った結果、内線機能が豊富に用意されていること、メディアサーバ機能が豊富なこと、拡張APIが充実していること、独自機能の実装のしやすさなどが評価され、Asterisk Business Editionのライセンス契約の締結に結びついたとのことだ。

 NTTソフトウェアのユビキタスオフィス技術プロデューサの生駒勝幸氏によると、ProgOfficeの開発にあたりDigium社と約1年に渡る共同開発を行っており、Asterisk Business Editionには実装されていない携帯電話対応機能や無線制御技術、日本独自の内線電話機能、障害発生時対策機能などが搭載されていることが紹介された。生駒氏はAsterisk Business Editionを適用したことで、短期間で高機能な製品化が実現したとし、今後の展開として、さらに導入しやすいモバイルセントレック製品の提供や、新たな付加価値のあるシステムの提供をしていきたいと抱負を語った。

 来場者からの質問には、オープンソースコミュニティの中でAsteriskは企業ユーザーは多いが、遊べる部分が少ないため個人の開発者に興味を持ってもらうのは難しいのでは、というものがあった。同氏は、Digiumの社員の中には電気通信に興味があり、Asteriskコミュニティに参加しているうちにDigiumに入社した者がいると語り、そういう“オタク”的な方々の熱意によってAsteriskの開発は動いているとした。また、本人自身もオタクであることを認め、飛行機でオーストラリアに向かう機内で、パズルの数独の答えを導き出すプログラムを作成し、Asteriskのアプリケーションとして動作するようにし、電話のキーパッドの操作で数独の答えを読み上げてくれるというようにしたといったエピソードが紹介された。

 また、AsteriskとSkypeとの連携についての質問については、Skypeは独自プロトコルを使用しているため、Asteriskと統合するにはSkype側の協力が必要となるため、ユーザー側からの意見として、Digiumと協力するようSkypeに説得を働きかけてほしいと語った。そして、もしもSkype側にやる気があれば、Digiumは喜んで協力したいとしている。
《青木聡史》

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