ラストはあり?なし?“公平性”を貫いた韓ドラ『私たち、他人になれるかな?』 | RBB TODAY
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ラストはあり?なし?“公平性”を貫いた韓ドラ『私たち、他人になれるかな?』

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U-NEXTで配信中『私たち、他人になれるかな?』ⓒ 2023 KT StudioGenie Co.,Ltd All rights reserved
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 あまりにも、心に刺さりすぎる……。U-NEXTで配信中の韓国ドラマ『私たち、他人になれるかな?』の感想は、その一言に尽きる。筆者は現在30代半ばで、ふだん交流する層も大体30代~40代。妊活を諦めた夫婦、“子がかすがい”な夫婦、カウンセリングに通う夫婦、週末婚している夫婦など、それぞれ悩みにぶちあたり、日々もがいている。だから、本作に出てくるキャラクターたちのやりとりが、生々しく思えて仕方なかったのだ。

 『私たち、他人になれるかな?』は、“訴訟の女神”と称される離婚弁護士オ・ハラ(カン・ソラ)が、元夫ク・ウンボム(チャン・スンジョ)に同僚として再会することから始まるドラマ。“ロマンティックコメディ”と銘打たれており、序盤こそコミカルなシーンなど挟まれるが、話が進むにつれ、「結婚とは何か」「幸せとは何か」「愛とは何か」といった一筋縄ではいかない問題を容赦なく突きつけてくる。

(以下、ネタバレあり)

離婚にまつわる訴訟問題を絡めた愛憎劇



U-NEXTで配信中『私たち、他人になれるかな?』(c) 2023 KT StudioGenie Co.,Ltd All rights reserved


 ハラとウンボムは大学時代より10年間の交際を経て結婚し、3年も経たずに離婚。原因はウンボムの浮気だったが、実はハラを納得させるためウンボムが浮気をでっち上げていたことが後に判明する。彼が離婚を望んだ理由は、「結婚生活が合わなかったから」。ウンボムにとって、最初はままごと感覚で楽しかった夫婦生活が、いつの間にか我慢を強いられるものへと変わっていったことが分かり、ハラは自らの振る舞いを後悔する。その頃には新しい恋人もできていたが、“好きだが愛してはいない”ことに気づき、破局。その後、ハラとウンボムは互いへの想いに正直になって復縁するが、子どもをつくるか否かという問題で再びぶつかってしまう。

 一方、2人の同僚であるカン・ビチ(チョ・ウンジ)とクォン・シウク(イ・ジェウォン)は、犬猿の仲だったのに、お酒の勢いでセフレに。心と体を分けて考えられないシウクは真剣交際を望むが、ビチは現状維持を希望し、関係が終わる。しかし、ビチが妊娠。最初は堕胎を決意し、求婚を拒否していたが、キャリア志向のビチのためにシウクが主夫になることで話がまとまり、授かり婚をすることに。

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 本作は、浮気やセックスレスによる離婚、子どもや飼い犬の養育権(所有権)争い、相手家族への不満や子を持つことへの考え方の相違による離婚、財産目的の離婚、腐れ縁夫婦の離婚、事実婚者による関係清算といった依頼人たちの案件に、ハラ&ウンボク、ビチ&シウクなどが抱える問題が絡むかたちで描かれている。

夫婦とは、恋人ではなく家族になること


 ハラとウンボムの間には紛れもなく愛があるのだが、恋愛感情というよりも家族としての愛情の方が強い。重大な出来事があれば良き相談相手となり、何かあれば元・義理の親とも連絡を取り合うなど、家族として支え合う関係が続いている。

 彼らの親たちも、いまだに家族として2人に接する。ハラの両親は夫婦円満と思われていたが、父の浮気が発覚して離婚することに。その際にちょっとした巻き添えを食らうのが、ウンボムだ。すでに家族関係が解消されているにも関わらず、たまたまハラの父が隠し子といる場面へと出くわしたことで、ハラの両親からわざわざ呼び出され、娘への口止めを懇願されてしまう。

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 ハラとウンボムが復縁し、子どもをつくるか否か意見が割れた際には、ハラの母はウンボムに交際をやめるよう言い、ウンボムの母は「子どもをつくる気になったら所有しているビルを譲る」と脅す。ちなみに、ウンボムが子どもを欲しがらない理由は母との確執だ。幼少期、母から経済的な暴力を受けていたことがトラウマで、親子という“断ち切れない存在”が生まれることを異様に怖れているのだ。

 結局、ハラとウンボムは子どもを持つことへの意見が相入れず、再び別れることを選ぶ。作中、舅によるパワハラが原因で離婚裁判を起こした人物は「結婚とは両家の結合と気づいた」と話すが、まさにその通りだ。一般的に、夫婦になると、ただ“好き”というだけではいられなくなる。そして一度家族になると、あらゆることが2人だけの問題でなくなり、別れることは非常に困難になる。『私たち、他人になれるかな?』は、そんな厄介な点を炙り出していると思う。

離婚弁護事務所が舞台である意味



U-NEXTで配信中『私たち、他人になれるかな?』(c)2023 KT StudioGenie Co.,Ltd All rights reserved


 本作の脚本は、“公平性”という点で秀逸だった。離婚弁護に特化した事務所が舞台であるため、依頼案件ごとに双方の主張が明らかにされる。どちらか一方の弁護人になったとしても、事務所内で意見が割れて議論へと発展することも珍しくない。特に、夫婦における家事育児の負担や、予期せぬ妊娠時の対応など、前進的なビチと保守的なシウクが“自分ごと”として捉え、正反対の意見を交わすところを描いていることに、とても公平性を期しているように感じた。

 ビチとシウクに関しては、最後、名字の問題にぶち当たる。韓国は夫婦別姓のため、どちらの名字を子どもに名付けるか選択する必要があるからだ。シウクは当たり前のように自身(父)の名字を付けることを考えており、それに対してビチが怒り狂うが、最終的にシウクが譲歩することで関係修復。シウクの両親に反対される可能性があったが、ビチは「その場合は従おう」と、シウクが真摯に向き合ってくれたことへの感謝を口にする。尊重し合える関係が構築されたことが分かる、素晴らしいエピソードだったと思う。

 “公平性”について戻ると、どんな事例であれど、白黒を付けて「どちらだけが良い・悪い」とせず、同じような立場にいる人たちをフォローする台詞があったのも印象的だった。セックスレスを理由に離婚訴訟を持ち出した女性依頼人が浮気をしていたことが発覚し、“された側”(その後、本当は浮気されていなかったことが判明するが)であったハラは当然、大激怒。しかし、ウンボムは「後ろ指を刺されてもそれさえ耐えられれば大丈夫。選択には犠牲が伴います。それと同じく選択で得られるものもある」と慰める。儒教の影響が大きい韓国では、ドラマで浮気者=悪者として描かれることがほとんどのため、この“した側”への配慮には驚いたと共に、作り手の器の大きさに唸った。

 また、夫に告げずに堕胎した女性の弁護人に対し、ハラが「子どもを産んだことへの後悔はないか」と聞く場面がある。その弁護人は、当時は独身でも良いこと、子供を持たなくても良いことを誰も教えてくれなかったと前置きをした上で、「最初から知っていればこんな失敗はしなかった。私の人生で一番素敵な失敗です」と答える。そして、弁護中の女性(※弁護人の従姉妹でもある)には妊娠を勧めたことはなく、「私の考えはあくまで私のもので、彼女には自分の人生を歩む権利がある。子どもを持つことについてどちらがいいか正解はありませんから」と述べる。よくある“子なし・子あり、どちらがいいか問題”に対する、スマートな回答だと思った。

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 本作は、事務所スタッフによるビチとシウクの結婚パーティーで締めくくられる。別の職場となったハラとウンボムにとって久々の再会の場だったが、未だに2人は意識をしており「私たちは本当に他人になれるのか」という疑問を抱えたまま終わる。パーティーのスピーチで引用されていた、シェイクスピアによる言葉「避けられないのならいっそ抱きしめてしまえ」が意味深で、復縁を示唆しているようでもある。また復縁と別れを繰り返すのか、そのまま一生別の道を進むのか。どちらの可能性も含む、本作らしいラストである。30代の2人は、まだまだこれから。どんな選択であれど、そこに正解はないのだから。

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■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。
《山根由佳》
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