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奇しくも、どちらも“離婚弁護士”というやや特殊な職に就いている主人公の物語だが、作品の方向性は異なる。『私たち、他人になれるかな？』は、主要キャラクターたちの状況含め、身近に起きうる夫婦の諍いを多数取り上げた、特に既婚経験者たちの共感を呼ぶ内容になっており、『離婚弁護士シン・ソンハン』における“離婚弁護”案件はラストへ導くためのある種のツールで、こちらの作品は架空のキャラクターとその周りの人々の物語を届けることに重きを置いている。それぞれに良さがあるが、個人的に鑑賞後もズシリと心に残ったのは前者である。
主演2人の心情がリアル！身につまされるが後味は悪くない
『私たち、他人になれるかな？』は、バツイチの離婚弁護士オ・ハラが、元夫ク・ウンボムと同僚で再会することから始まるロマンティックコメディ。ハラは離婚の原因を作ったウンボムを許せないが、仕事を協力し合うなど、再び互いの人生に関わることになって心が揺らぐ。一方で新たな出会いもあり、前進しようと努める。同時に、依頼人たちの案件に取り組むことで自身の経験や心情に向き合うことになっていき、夫婦や愛について疑問を抱くようにー。
オ・ハラを演じたのは、『ミセン－未生－』『ピョン・ヒョクの恋』などで知られるカン・ソラ。テレビ番組にも出演する美しく聡明な弁護士でありながら、プライベートでは未熟な面もある主人公を魅力たっぷりに演じている。結婚と出産を経たソラは、本作がドラマ復帰作。記者会見では、「愛についてもっと深く考えるようになった」「ロマンスを扱った多くの作品や童話を見ると、“幸せに暮らした”で終わる。でも、私が考える真の愛は、結婚をゴールに据えるのではなく、その愛をどのように維持し、危機を乗り越えるか」と述べており、そのリアリティに満ちたキャラクターは、実体験も反映して深く作り込んでいたからだと窺い知れる。
ク・ウンボム役は、ソラと映画『シークレット・ジョブ』でも共演していたチャン・スンジョ（『ボーイフレンド』『知ってるワイフ』）。表向きは明るく振る舞いつつ、元妻や母への愛憎入り混じる感情に一人葛藤する繊細な人物を、絶妙な匙加減で表現している。スンジョもソラ同様、子持ちの既婚者。2人は撮影前から何度も会話をし、「自分だったらこの状況でこうする」など、お互いにアドバイスし合ったという。
そして、主人公たちの同僚を演じたのはチョ・ウンジ（『人間失格』）とイ・ジェウォン（『青春の記録』）、上司を演じたのはチョン・ベス（『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』『気象庁の人々: 社内恋愛は予測不能?!』）とキル・ヘヨン（『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』『ある春の夜に』）。ベスは『離婚弁護士シン・ソンハン』にも弁護士役として登場しているので、いつか彼の存在だけで離婚弁護士ものマルチバース作品ができそうである。
監督を務めたのは、『私たちのブルース』を共同演出していたキム・ヤンヒ。時にファンタジックな手法も取り入れながら、キャラクターたちの複雑な心情を納得感ある展開で演出している。また、あらゆる立場の言い分を紹介した上で、どちらかに肩入れしすぎないまとめ方も見事だった。監督は本作について、「成熟した大人だと思って生きているのに、愛の前では未熟な人々の物語を込めている。ドラマを通じて“未熟でも大丈夫”というメッセージが伝わればいいと思っている」とコメントしている。本作に、自身と重なるキャラクターが登場したとしても、激しく批判される気分にはならないので安心してほしい。むしろ、相手側の立場も理解できるので、自分を省みて相手に対して少し優しくなれるかもしれない。
『私たち、他人になれるかな？』
演出：キム・ヤンヒ
脚本：パク・サラン
出演：カン・ソラ、チャン・スンジョ、チョ・ウンジ、イ・ジェウォン、チョン・ベス、キル・ヘヨン、ム・ジンソン
【特別無料公開】『私たち、他人になれるかな？』第1話 #1/3
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■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くフリーライター。洋画・海外ドラマ・韓国ドラマの熱狂的ウォッチャー。観たい作品数に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。
