ユク・ソンジェ除隊後初の韓国ドラマ『ゴールデンスプーン』、カネ至上主義を問うファンタジー | RBB TODAY
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ユク・ソンジェ除隊後初の韓国ドラマ『ゴールデンスプーン』、カネ至上主義を問うファンタジー

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ユク・ソンジェ除隊後初の韓国ドラマ『ゴールデンスプーン』、カネ至上主義を問うファンタジー
  • ユク・ソンジェ除隊後初の韓国ドラマ『ゴールデンスプーン』、カネ至上主義を問うファンタジー
  • 努力が報われるはずとがむしゃらに耐えてきたが色々と積み重なりプッツンするスンチョン
  • 絶対的な権力者である父のもと、孤独で窮屈な生活を送るテヨン
  • とにかくカネしか眼中にない冷たい男、ヒョンド会長
  • 何かと問題をつくるスンチョンの父、チョル
  • “テヨンになったスンチョン”を手に入れるためなら何でもやるヨジン
  • テヨンにもスンチョンにも思いを寄せられる罪な女、ジュヒ
近年、深刻な格差社会を抱えている韓国では、富裕家庭に生まれたら人生イージーモード、逆に貧困家庭に生まれたら努力しても上流階級には行けないという残酷な現実を表わす「スプーン階級論」が広まっている。“金のスプーン”は資産約2億円の家庭、“銀のスプーン”は資産約1億円の家庭、“銅のスプーン”は資産約5,000万円の家庭、そして底辺は資産約500万円未満の“土(泥)のスプーン”だという。この考え方を皮肉り、カネ至上主義の是非を問うのが、現在Disney+で配信中の『ゴールデンスプーン』である。

同作は、「ウェブトゥーン」発の人気漫画『金の匙』を原作としたファンタジードラマだ。主人公は、名門校へ低所得世帯枠で進学した優秀な高校生。生活費を稼ぐためバイトをしながら勉学に励む日々を送るが、結局は格差社会から抜け出せられないことに気づき、絶望的な気持ちを抱く。しかし、偶然立ち寄った露店で、誰かの家で3回食事をすればその人と人生を交換できるという「金のスプーン」を入手。裕福な同級生と入れ替わり、人生を変えようともがきだすー。

10月15日(土)、折り返し地点である8話目が配信された本作。“格差社会”は韓ドラでよく取り扱われる題材だが、他作品とはどう異なるのか、改めて見どころを紹介していきたい。(以下ネタバレあり)

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カネと愛を天秤にかける主人公





主人公イ・スンチョンは、貧乏な人生に疲弊している。慰謝料を払うカネがないからと同級生の暴力に耐え、疲れるからと人に笑みも見せない。そして貧困の原因を作った夢追い人の父、その父を健気に支える母、気丈に振る舞う姉に対し、冷めきった態度を取って距離を置いている。カネに苦しめられてきた分、カネへの執着心が強く、その執念が魔法のスプーンとの出会いを引き寄せたのだろう。入れ替わり後、当面はこれまで虐げられていたことへの鬱憤を晴らしていたが、父が事故に遭ったことで元に戻ることを選択する。同作の特異な点は、ここからだ。入れ替わりを題材にした作品では、“本当に大切なもの”に気づき元に戻ってめでたし、という流れが定石である。しかし、スンチョンはまた入れ替わることを選んでしまうのだ。「金のスプーン」は合計3回まで使うことができ、1ヶ月、1年、10年の節目に、入れ替わりを継続するかどうかを選択できる。スンチョンは次の節目までに100億ウォンを手にして元に戻るつもりのようだが、そう上手くいくとは思えない。

スンチョンを演じるのは、本作が除隊後初の復帰作であるユク・ソンジェ(BTOB)。ポーカーフェイスを保ちつつも、長年蓄積されてきた負の感情が見え隠れする演技が印象的で、入れ替わり後、堰を切るように笑いだした姿は悪役さながら。視聴者が共感できそうでできない、善とも悪とも言い切れない複雑さを持った主人公を演じている。ちなみに、お坊ちゃんの時の姿は、名を上げた『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』御曹司役の時と変わらぬ麗しさ。その点で、入れ替わり作品の醍醐味も味わえるのでご安心を。

主人公のエゴに翻弄される御曹司





スンチョンの入れ替わりターゲットとなるのは、学校の頂点に君臨するファン・テヨン。何もかも手に入る環境で育った自己中心的な人物だが、実は優しい面も持っている。また、威圧的な父に常に怯えており、アメリカ留学中に大事件を起こしたことの影響もあり、パニック障がいを抱えている。入れ替わり後は、夢にまで思い描いていた温かな家庭を手に入れ、ヒロインであるジュヒとの恋愛も成就。入れ替わり前の記憶は改ざんされているので、時たま不思議に思う出来事に遭遇しつつも、幸せな人生を満喫するようになる。しかし、スンチョンによって再び元に戻され、父に萎縮する生活が始まると、あらゆる出来事により自殺寸前にまで至る。何も知らずに何度も入れ替わりをさせられ、時たま記憶障がいに悩む姿を見ていると、いくら主人公を陥れようとしたことがあったとしても、気の毒に感じてしまう。初回の入れ替わり中は、本物のスンチョンと言い合いになった時に、「どれだけ富豪になれても俺は(両親を)交換しない」と主張し、カネ至上主義を否定していたテヨン。しかし、ジュヒが路頭に迷い、父が事故の後遺症を引きずる様子を見て、遂に「金持ちになりたい」「俺がテヨンならどんなにいいか」と口にするように。真の貧困を経験したことで、今後どのように変化していくのか気になるところだ。

テヨンを演じるのは、モデル出身のイ・ジョンウォン。ドラマ『賢い医師生活シーズン2』への出演や、IUの「strawberry moon」MVへの出演で、近年注目を集めている俳優の一人だ。御曹司らしい堂々とした振る舞いには説得力があり、入れ替わり後も性格が変わらず、我を突き通す様が格好良い。一方で、テヨンの繊細さも細やかに表現。入れ替わり後、スンチョンの父に向ける尊敬の眼差しがあまりにも純血無垢で、思わずそのまま変わらず幸せになってほしいと願ってしまう。

カネの呪縛から逃げられぬ人たち



スンチョンとテヨンの周囲の人々も、ことごとく“カネ”に支配されている。その最たるは、テヨンの父ファン・ヒョンド。大手企業の会長で、テヨンに「時間の価値が対等でない人物は友人ではない」と説く超合理主義者だ。(残念ながら、演じたチェ・ウォニョンはユク・ソンジェと共演したドラマ『サンガプ屋台』のような気のいいキャラクターとは全くの別人になりきっている)テヨンの若い継母も、夫の財産を狙って弟と共に水面化で動いており、腹が見えない。

カネに目がないのは、貧乏人も同じだ。スンチョンの母は金持ちの下心を利用して借金延滞を目論み、父は家族の名誉のために1億ウォンを拒否するも、その後、後悔の念を滲ませて号泣する。





同級生のヨジンは、一番のクセもの。実は「金のスプーン」で入れ替わり済みの元貧乏人で、スンチョンを同類と考え、財産をより確固たるものにするために手を組もうと画策している。ヒロインのジュヒは、正義感が強く、カネではないものを大切に生きてきたが、それも裕福な家庭の出自で世間知らずだったからと言えるだろう。一文なしとなり現実を知ることで、今後は綺麗事などを言ってはいられなくなるはずだ。






8話のラストでは一気に2020年へとタイムジャンプし、スーツをパリッと着こなしたテヨンと、派手な洋服に身を包み路上で寝ているスンチョンの再会が描かれた。テヨンは、やり手ファンドマネージャーから「カネを稼ぎたくないか」と電話を受けており、その際に「金のスプーン」がチラリと映っていたが、今度はテヨンが入れ替わりを行なったのか。それとも、自力で這い上がっていったのか。もし入れ替わりをしていたのであれば、これまで以上に物語は複雑さを増していきそうだ。

これまで、“カネがすべて”“幸せはカネでは買えない”といった相反するメッセージを伝えてきた『ゴールデンスプーン』。今後、それぞれのキャラクターたちのカネへの向き合い方はどう変わっていくのか、最後まで見逃せない。親を替える勇気があれば金持ちになれるのだとしたら、あなたはどんな選択をするだろうかー。

※『ゴールデンスプーン』ディズニープラス スター独占配信中
(c) 2022 Disney and related entities

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■筆者プロフィール
山根由佳
執筆・編集・校正・写真家のマネージャーなど何足もの草鞋を履くさすらいのフリーライター。映画・海外ドラマおたくだが、コロナ禍に人生二度目のカン・ドンウォンのブームが到来し、出演ドラマも鑑賞したことで韓ドラの世界に興味を抱くように。さらに『ヴィンチェンツォ』を観て完成度の高さに度肝を抜かれ、韓ドラにのめり込む。ホラー、コメディ、サスペンス、ヒューマンドラマが好き。映画・海外ドラマ・韓ドラを網羅したいため、観たい作品に対して時間が圧倒的に足りないことが悩み。2022年現時点でのベスト韓ドラは『私の解放日誌』。
《山根由佳》
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