「自転車ながらスマホ」がもたらす致命的なロス……KDDI、VRで危険性を啓蒙 | RBB TODAY

「自転車ながらスマホ」がもたらす致命的なロス……KDDI、VRで危険性を啓蒙

京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険は「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表した。

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京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険の4者が「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表。VRの啓発アプリなどを用意している
  • 京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険の4者が「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表。VRの啓発アプリなどを用意している
  • 京都府 府民生活部 安心・安全まちづくり推進課長の犬井勇司氏
  • 自転車保険義務化を伝えるポスター。京都では街の施設や地下鉄など、あちらこちらで目にすることができる
  • au損害保険 営業開発部 営業企画室長の田中尚氏
  • au損保では、自転車保険の加入が義務化されている名古屋、大阪、これから義務化する京都、埼玉など複数の自治体と手を組んで啓発活動などに取り組んでいく
  • KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏(左)と、愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏(右)
  • 自転車ながらスマホの実証実験の結果
  • 説明会終了後、来場した記者たちもVRを体験した
 自転車と歩行者の接触事故が増えており、メディアでも大きく取り上げられている。その背景として、スマートフォンを操作しながら運転してしまう「自転車ながらスマホ」の増加を指摘する声もある。こうした中、京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険は「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表した。最新のVR技術を用いた啓発アプリを用意するなど、工夫を凝らした内容となっているようだ。

京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険の4者が「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表。VRの啓発アプリなどを用意している
京都府、KDDI、ナビタイムジャパン、au損害保険の4者が「自転車安全・安心プロジェクト」第2弾の開始を発表


悲しい事故を防ぐために


 全国に先駆けて「自転車の安全利用に関する条例」を定めるなど、交通安全に対する意識が高いことで知られる京都府。学生、社会人、シニアそれぞれに向けた交通安全教室も実施しており、自転車事故件数はこの10年弱で3,363件(平成20年)から1,423件(平成29年)まで減少した。しかし、これは乗用車と自転車の接触事故なども含む数。自転車と歩行者の事故に限ると、むしろ微増の兆候がみられる。京都府 府民生活部の犬井勇司氏は「自転車に責任のある事故を調べると、運転者の半分が30歳未満だった。いわゆるスマホ世代の若年層に、啓発していかなくては」と分析する。その点で、今回のVR技術を用いたKDDIの啓発アプリ(詳細は後述)はターゲット層も合致しており、非常に相性が良いと説明する。

京都府 府民生活部 安心・安全まちづくり推進課長の犬井勇司氏
京都府 府民生活部 安心・安全まちづくり推進課長の犬井勇司氏


 京都府では交通安全の啓発活動を活性化させると同時に、条例の改正も急ピッチで進めた。犬井氏の念頭にあったのは、神戸の小学校5年生が乗った自転車が高齢者に衝突した事故。神戸地裁は加害者の家族に、約9,500万円の高額賠償を命じている(2013年 神戸地裁の判決)。こうした悲しい事故を避けるため、京都府では「自転車の安全な利用の促進に関する条例」を改正する。平成30年4月から、京都府内で自転車を利用するすべての人に保険の加入を義務付ける方針だ。

自転車保険義務化を伝えるポスター。京都では街の施設や地下鉄など、あちらこちらで目にすることができる
自転車保険義務化を伝えるポスター。京都では街の施設や地下鉄など、あちらこちらで目にすることができる


 「どんな保険に入れば良いか、家族で話し合ってほしい。自転車は軽車両として扱われること、事故を起こせば賠償責任が生じることなど、交通ルールを確認するきっかけにもなる」と犬井氏。自転車保険に関して、実績のあるau損害保険の協力に大きな期待を寄せる。

高額賠償の事例が毎月


 au損害保険 営業開発部の田中尚氏は、昨年12月に立て続けに起きた2件の死亡事故を紹介した。うち1件は、まさに自転車ながらスマホによるもの。女子大生が左手にスマホを、右手に飲み物を持ち、片耳にイヤホンをして電動アシスト自転車を運転し、高齢者の女性と接触してしまった。被害女性は事故の2日後に亡くなっている。

au損害保険 営業開発部 営業企画室長の田中尚氏
au損害保険 営業開発部 営業企画室長の田中尚氏


 田中氏によれば、電動アシスト自転車による事故は今後も増加する可能性が高いとのこと。その理由について「子乗せ、シニア向けのほかに通学タイプ、スポーツタイプも登場して販売数が増えている。全国の自治体では電動アシスト自転車の購入に際して補助金や助成金を出すところもある。幅広い層に普及が見込まれている」と分析する。ユーザー調査によれば、ペダルを踏んだ時に急発進してしまう、重さにより転倒してしまう、といった従来の自転車とは勝手が違うシーンでヒヤリハットが増えているという。

 自転車には、乗用車と同じ交通規則が定められている。だから歩行者と衝突して事故を起こせば、たとえ歩行者側に過失があっても、原則として自転車側の罪になる。加害者になってしまった場合、乗用車のケースと同様「民事上の責任」「刑事上の責任」「道義的な責任」を果たさなければいけない。ところで乗用車には自賠責保険(自動車損害賠償責任保険、強制保険)があり、任意保険も広く普及している。つまり、なんらかの経済的な保障を受けられる可能性が高い。しかし、自転車には―――。

 「2013年の自転車事故で9,500万円もの賠償を命じられた加害者(当時小学5年生)は、保険に加入していなかった。支払い義務のあった少年の母親は結局、自己破産したと聞いている。一方で、事故による怪我で被害女性も生活が困難になった」と田中氏。こうした双方にとって辛く悲しい事故は、しかし保険の大切さを実感させられる象徴的な事例として後進に多くのことを伝えていく。報道で取り上げられる度に、自転車保険への理解が広がり、加入が進んでいる側面もあるのだろう。

 ちなみにau損保では、500万円以上の損害賠償を伴う事例が毎月1件以上のペースで発生しているという。同社が取り扱った中で、賠償金の過去最高額は約8,000万円。田中氏は「報道では取り上げられない、けれど重大事故の事例も日々、発生している」と警鐘を鳴らす。

au損保では、自転車保険の加入が義務化されている名古屋、大阪、これから義務化する京都、埼玉など複数の自治体と手を組んで啓発活動などに取り組んでいく
au損保では、自転車保険の加入が義務化されている名古屋、大阪、これから義務化する京都、埼玉など複数の自治体と手を組んで啓発活動などに取り組んでいく


視野が狭くなる!


 KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏は、今回のプロジェクトの概要を説明した。まず「実証実験」として愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏の協力の下、自転車ながらスマホの影響を科学的に実証する。そして「STOP! 自転車ながらスマホ体験VR」として、開発したVRの啓発アプリを全国の交通安全啓発イベントに提供していく考えだ。鳥光氏は「異業種でコラボすることで、それぞれの強みを活かせる。いままでにない啓発プロジェクトをおこなっていきたい」と言葉に力を込める。

KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏(左)と、愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏(右)
KDDI CSR・環境推進室長の鳥光健太郎氏(左)と、愛知工科大学 名誉・特任教授の小塚一宏氏(右)


 小塚教授は、現役の大学生11人を対象に実証実験を実施。その結果、自転車ながらスマホをすると「歩行者の見落としが5割増し」「歩行者を認識するまでの時間が1.0秒から1.7秒に遅れ」「歩行者を注視する時間が23%に減少」することが分かった。被験者の学生たちからは「スマホに集中してしまい、全く前が見れなかった」「視野が狭くなった」「周りが見えずに怖かった」といった声があがっている。

 小塚教授は「時速10kmで走る自転車なら、認識が0.7秒遅れることで2m余分に進んでしまう。事故に至るか回避できるかの境目になる」と解説。このデータを広く社会の人に知ってもらえたら、と話していた。

自転車ながらスマホの実証実験の結果
自転車ながらスマホの実証実験の結果


VRデモを体験した女子大生の反応は?


 壇上では最後に、STOP! 自転車ながらスマホ体験VRのデモンストレーションがおこなわれた。視線の動きで、運転中にどこに集中しているかが分かる仕組みになっている。危ない、と思ったときにブレーキをかける(=リモコンのボタンを押す)わけだが、その反応の早さで衝突を回避できるか否かが決まる。デモに協力してくれたのは、UNN関西学生報道連盟 京都女子大学の冨成朋美さん。



 体験後、冨成さんは「実際に自転車を運転しているようだった。スマホのメッセージを確認して、目を上げた瞬間に歩行者とぶつかってしまった。その後、同じ条件で普通に運転すると、乗用車の後ろから道を横断し始める歩行者の姿が確認できた」と感想。鳥光氏は「これくらいなら、と軽い気持ちで自転車ながらスマホをしたことのある方もいるかも知れない。VRコンテンツでは、ながらスマホをしたとき・しなかったときを、同じシチュエーションで比較できるので、どのくらい危険度が増すのかが分かる。是非、多くの方に実感してもらえたら」と話していた。

説明会終了後、来場した記者たちもVRを体験した
説明会終了後、来場した記者たちもVRを体験した



※不審者を追い詰める親ドローンと子ドローン
《近藤謙太郎》

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