“おじさん会社員の星”現るー。
今年1月、TikTokに投稿されたBIGBANG「FANTASTIC BABY」のダンスチャレンジ動画の再生回数が、500万回を突破。スーツに革靴、白髪混じりの“おじさんアナウンサー”が魅せるキレキレダンスに、コメント欄には「イケおじがBIGBANGキレキレで踊ってるの好き」、「なんで上手いんだよw」など驚きと称賛の声が殺到した。
【動画】再生回数500万回突破「FANTASTIC BABY」ダンスチャレンジ動画
その後、StrayKids、BTS、BLACKPINKなど人気K-POPのダンスチャレンジ動画を次々と公開。軽やかなステップとジャンプ、ダンススキルの高さに関心が寄せられるなか、「息切れが聞こえる…w」「ものすごく踊れているのに、時々溺れているっぽいところに好感をもてます」など、“頑張るおじさん”の姿に愛着を感じる声も多く寄せられている。
一体、この“踊るおじさんアナウンサー”は何者なのか?そして、なぜこんなに踊れるのか?
ニュースより気になる、“おじさんアナ”を直撃した。
実は“NewJeansおじさん”だった!?
TikTokで披露したダンスが大バスリ
“踊るおじさんアナウンサー”の正体は、愛知県名古屋市に本社を構えるテレビ局『テレビ愛知』に勤務する、相澤伸郎アナウンサー。現在56歳、来年には役職退職を控えるアナウンス部の部長だ。好きな音楽は岡村靖幸と阿部海太郎、好きなアーティストは葛飾北斎、伊藤若冲、運慶、ゴッホ。好きな映画は『さびしんぼう』だ。

K-POPとの共通点が見当たらない好みの数々。一体、なにがキッカケで相澤アナは、K-POPを踊り狂う“おじさんアナウンサー”としてTikTokに現われたのか。
「踊りたくなりますよね、K-POPって」と話す相澤アナ。実はダンス経験者で、大学時代はミュージカル研究会に所属。ジャネット・ジャクソンやマドンナ、マイケル・ジャクソンに憧れを抱き、ダンスを始めたという。社会人になってからは、ダンススクールでダンスを学ぶ日々。しかし、29歳の頃、想いを寄せていた同ダンススクールのインストラクターに失恋し、相澤アナのダンス人生は終わりを告げた。
失恋と同時に途絶えたダンスへの想い。ダンス愛に再び火を点けたのは、人気K-POPガールズグループ「NewJeans」だった。「(NewJeansの楽曲は)本当に自然な感じで心地良くて、中毒性がありますよね。「Ditto」のMVもずーっとループして見ちゃって…。見ているうちに、踊りたくなったんです」と、実は“NewJeansおじさん”だったことを明かした。
NewJeansを機にK-POPに興味をもった相澤アナ。その後、BTS・ジョングクの「Standing Next to You」のダンス動画を見て、「これは、やべぇ」と“踊りたい欲”がさらに上昇。
そんな相澤アナがダンス披露のステージに選んだのが、“みんながやりたいことを発信しよう!”という目的で開設されていた、TikTokのテレビ愛知アナウンス部公式アカウントだったのだ。
「じゃあ、僕はダンスを投稿してみようかな」と、気軽に投稿したダンス動画はジワジワと関心集め、今年1月に投稿されたBIGBANG「FANTASTIC BABY」のダンスチャレンジ動画は、再生回数500万回を突破するなど大バスり。世界中のK-POPファンからコメントが殺到し、“踊るおじさんアナウンサー”の存在は、日本を飛び超え、いきなり世界に広がったのだ。
気付かなかった“画質の粗さ”
部下のスマホで高画質に進化

大バズりにともなって明らかになったのは、自身が撮影していた動画の“画質の粗さ”だった。コメント欄には「13年前の法事のような質感w」、「画質だけローカルクオリティなのウケる」など画質に関するツッコミが寄せられていた。
指摘されるまで気付かなかった、画質のクオリティ。「あんまり目が良くないのかなぁ・・・(笑)画質が悪いって、自覚が無かったんです」と当時を振り返る。

そんな部長の悩みに立ち上がったのが、後輩アナウンサーたち。後輩たちは各自の高画質スマホで、相澤アナのダンスを撮影。「#部下のスマホで高画質」というハッシュタグが付けられた高画質の動画には、ダンススキルはもちろん、「部下やさしい(笑)」、「平和すぎる」など、踊る部長と部下たちのアットホームな関係性に和む声も寄せられた。後日、アナウンス部には、バズった実績を評価され、総務部から、“SNS投稿専用”としてiPhone 16 Proが支給。iPhone 16 Proを手にする相澤アナの表情は、どこか嬉しそうだった。

ちなみに、撮影は後輩のアナウンサーたちが協力。後輩たちとスタジオの空き状況をチェックし、都合が合うタイミングに撮影を実施している。ケガ防止のため、踊る前の準備運動も忘れない。撮影者に自身が行う動きやポーズを説明し、一発撮りを目指しながらも、2~3テイクほど撮影をするという。

“100点満点”ではない仕上がりでも、後輩たちの拘束時間と自身の体力を考慮し、撮影を終えることもある。なにより、動きの速いダンスが多いため、「(体力的に)そんなに繰り返し踊れない・・・」と、56歳の本音をこぼした。

自腹でスタジオを借りて猛特訓!
「若者の120倍ぐらいの練習してる」

一体、あのキレキレのダンスは、どのように仕上がっているのだろか。相澤アナ流の練習法を聞いてみた。
まず、YouTubeで練習する楽曲を、超スローテンポで紹介しているダンス動画を検索し、時間をかけて、体に振り付けを教え込んでいくという。そのスピードは、相澤アナ曰く、太極拳並みのテンポだそう。振り付けを覚えたら、通常のスピードに戻していくという流れだ。
その際、相澤アナが向かうのが、レンタルスタジオだ。なんと、自腹でレンタル料金を支払い、スタジオでダンスを猛特訓。クオリティを高める総仕上げを自発的に行っていたのだ。ちなみに、取材時に練習していたのが、StrayKidsの「Walkin On Water」。独創的なヒップホップサウンドと強烈なダンスが特徴的な楽曲だ。

ダンスチャレンジパートでは、左右の足を上下させる軽快なステップが求められるが、練習を重ねていくなかで、そのコツが「体の反動を利用すること」にあると発見。これまで披露されてきたキレキレダンスは、そんな気付きを繰り返し、特訓を重ねてきた努力の賜物なのだ。
■StrayKids「Walkin On Water」を披露する相澤アナ
一体、これまでどれほど練習してきたのだろう。取材中、他局だが、若者たちが3分間でダンスの振り付けを覚える某番組の話題になった。その練習時間を例に挙げ、相澤アナは「僕はその120倍くらいかけてますね」と自身の練習量を表現した。
TikTokの投稿を始めた当初、「年齢的にダンスはギリギリ。60歳になったらやめよう」と思っていたという相澤アナ。しかし、始めてみたら意外に動けることに気付き、今では“ダンスはもうちょっと続けていこうかな”という心境に変化したという。ちなみに、セカンドライフの夢は「日本語教師」。現在、部長職をこなしながら、学校に通い、日本語教師の試験に向けて準備を進めているという。そんな生活について、「日本語を分析すると、面白いですよ。アナウンサーだけど初めて知るみたいなものがあって楽しい」と笑顔で語った。

56歳の踊るおじさんアナウンサー、相澤伸郎。来年以降、TikTokで“おじさん日本語教師”がキレキレのダンスを披露していたら、セカンドライフをダンスと共に謳歌している相澤アナかもしれない。
■TikTok「テレビ愛知アナウンス部」(@tva_announcer)