【おおさか地域創造】町工場がピクルス作りに挑戦!第二創業を目指した新規事業 | RBB TODAY
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【おおさか地域創造】町工場がピクルス作りに挑戦!第二創業を目指した新規事業

ビジネス 経営
泉州の水なすをはじめ野菜を使ったピクルス
  • 泉州の水なすをはじめ野菜を使ったピクルス
  • 「水なすピクルス 和風 mix」(直販702円)
  • 「水なすと泉州玉ねぎの旬のピクルスセット」(直販3500円)
  • 既存事業のワイヤロープ生産イメージ
  • 倉庫スペースを改修したキッチン等の作業スペース
  • 今年の6月から本格稼働する生産設備
  • 4代目社長の西出喜代彦氏
【記事のポイント】
▼識者の試作テストの繰り返しで、ターゲットの”見える化”
▼人では身内、製造は既存の敷地、本業に負荷の掛けない出発
▼規格外の野菜を使うことで、地元農家にも貢献


■帰省帰りのお土産で喜ばれた水なすに商品価値

 ワイヤロープの町工場が、第二創業を目指した新規事業として経験も知識もないピクルス作りに挑戦する。そんな異業種からの新規参入に成功したのが、大阪府泉佐野市にある日本スチールワイヤロープ(現社名NSW)。成功のカギを握っていたのは、「おおさか地域創造ファンド」の地域支援事業で得られた助成金に加え、地域コーディネーターによる手厚い経営コンサルティングサポートだった。

 エレベーターやロープウェイ、橋梁などに使用されるワイヤロープは、かつて泉佐野市をはじめとした泉州地域の地場産業として栄えた。しかし、海外から安価な製品が輸入されるようになると、事業は衰退。エレベーター補助用ワイヤロープを製造していた同社は、その憂き目にあった1社だった。

「弊社の場合、メインの取引先が事業をアジアでの製造へとシフトした影響で、売上が半分以下に落ち込んでしまいました。会社をたたんでしまおうか、それとも斜陽産業化するワイヤロープ事業から脱却して新規事業にチャレンジするか、大きな岐路に立たされたのです」

 このように振り返るのは、創業60年の同社で4代目社長を務める西出喜代彦氏。地元名産の「泉州の水なす」を使ったピクルスの発案者だ。

「前職では東京都内のネット系企業に勤めていたのですが、帰省帰りのお土産として地元泉州の水なすを使った浅漬けやぬか漬けがとても喜ばれたことがきっかけでした。先代の父が新規事業として、工場の敷地を活用した植物工場ビジネスを検討していたこともあり、泉州の水なすを使ったピクルスが作れないかと考えたのです」

■試作品から販路開拓までコーディネーターがサポート

 食品製造に関する技術も人も知識もないなか、同ファンドの地域支援事業のことを知った12年にさっそく応募に向けて挑戦。ファンドの窓口を訪ね、知り合った地域コーディネーターに相談しながら試作品作り取りかかった。

「泉州の水なすを使ったピクルスはほかに見当たりませんので、どれだけ失敗できるかという心構えでしたね。採択を受ける前は多い時で週に1回、採択後も月1回のペースで地域コーディネーターを訪ねて試作品を試食してもらいました。ターゲットを30~50代の女性に絞り、ワインとの相性が良くなるように。風呂上がりにちょっと小腹が空いたときにつまみたくなるようにと、使用イメージを設定するまで、手取り足取りアドバイスをいただきました」

 12年の秋頃、ようやく商品として期待できるものが完成すると、地域コーディネーターからの紹介で物産展へ出展。すると、大丸百貨店のバイヤーの目にとまり、お中元・お歳暮のギフトカタログへの掲載が決まった。


 その後はトントン拍子に販路を拡大。地域コーディネーターの勧めで、商談会や百貨店などの催事に参加。採択3年目の14年秋には、大阪市北区梅田にある「ルクア イーレ 地下2階 イセタン フードホール」へのテナント出店に至った。

 この間、水なすの味付けのバラエティを増やしたり、他の食材を使ったピクルスを開発するなど、新商品の開発も継続。助成金は1年目の約100万円は試作品作りと販路開拓、2年目と3年目の各約300万円は、新商品の開発と販路開拓、デザイン設計、ホームページの開設、通信販売などに費やした。

 また、試作品作りや商品の生産現場は、事務所の一角にあった倉庫スペースをキッチンなどの作業スペースに改修。惣菜や缶詰の営業許可を取得し、人手は西出氏の母や姉、母の友人に手伝ってもらう形で確保した。限れた場所、人手での船出だったが、生産量は、1年目が目標1000個を超える2000個、2年目が1万個超、3年目が3万個超と販路の拡大ともに拡大し、採択支援期間がすぎた15年度には5万個を超えるまでに成長した。商品の種類も60品目にのぼっている。

「技術も人も金もない状況からの挑戦でしたので不安はありましたが、だからこそ、ファンドの支援がとてもありがたく、特に地域コーディネーターの存在はとても心強いものでした」

■本業を超える事業として本格化のめど

 同社の成功の要因としては、これまでにない水なすを使ったピクルスを、日本人受けする和風の味付けに仕上げた商品力。さらには、商品の開発から販路の拡大に至るまで、地域コーディネーターから手厚いサポート受けられたことが大きい。

 また、事業のための設備や人手を最小限度の規模からスタートさせたことで、本業に負荷をかけることなく事業を継続できた点も評価に値する。そのおかげで、現在の売上規模では既存のワイヤロープ事業と新規のピクルス事業の割合が1:5と、大きく逆転しているほどだ。

 16年5月にはワイヤロープ工場の一部を改修し、機械による生産ラインを構築。6月から本格稼働する。量産体制を確立することで、今年度の生産目標は10万個を見込む。大手流通のイオンへ納品するようになり、販売エリアが全国に広がったことも大きなプラスだ。

 また、原材料の水なすや地元野菜は地域の農家から規格外のものも仕入れている。大きさや形、傷の有無などは、ピクルスの商品化では問題にならない。むしろ、規格外品から収入を得られるようになったことで、地元農家からは喜ばれているという。こうした地元への波及効果も見逃せない。

【おおさか地域創造ファンド:4】町工場が作るピクルスの味は?

《加藤/H14》
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