【インタビュー】スタバはなぜ無料Wi-Fiを導入したか?……CEOに聞くスターバックスの成長戦略(後編) | RBB TODAY
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【インタビュー】スタバはなぜ無料Wi-Fiを導入したか?……CEOに聞くスターバックスの成長戦略(後編)

エンタープライズ 企業
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  • スターバックス コーヒー ジャパン 代表取締役最高経営責任者(CEO) 関根純氏
  • 「at_STARBUCKS_Wi2」ホームページ
  • ブランド力の向上を目的にコンセプトを持ってオープンしたという「神宮前四丁目店」
※前編はこちら

 右肩上がりの成長を続けつつも、「原点回帰」を掲げて自らの足元を見つめ直すことで次なるビジョンにつなげようというスターバックス コーヒー ジャパン。インタビュー後編では、スターバックスの基本理念である“サードプレイス”の考え方や、今話題の無料Wi-Fiサービス導入に至った経緯を中心にお届けする。


■それぞれが思い思いにくつろげる“サードプレイス”に

――スターバックスコーヒーには、サードプレイスという考え方があります。

 スターバックスの基本的な理念ですね。ファーストプレイスがご自宅であり、セカンドプレイスがオフィスだったり学校だったり。その間をつなぐ、お客様が自分らしさを取り戻したりくつろいだりする場所を提供したい。その場がサードプレイスです。その使われ方は、それぞれの人によって違っていいんです。

 それぞれのお客様にゆっくり過ごしていただきたい。読書もそう。PCを開くのもそう。自分なりのコミュニケーションを楽しんでほしい。できるだけ多くの方に快適に過ごしていただくということがベースです。

 もちろん商売上のことをいうと、席をずっと占拠されてしまうと、次に待っているお客様にご迷惑がかかるのも事実です。くつろぎたくてスターバックスに来たのに、席が無くて帰ってしまわれるお客様もいるので。我々から直接声をかけて出てもらうということはありませんが、やっぱり多くの方にご利用いただきたいですよね。回転率とか売上うんぬんの前に、我々はロマンスを大事にしています。くつろぎたいと思って来てくれた人の席が無いというのは非常に残念なこと。皆さんで譲り合ってご利用いただけると一番いいかなと思います。

――テーブル席の場合、一人でゆっくりされると向かいの席がずっと空いてしまいますよね。

 その場合も、こちらから相席をお願いすることはありません。ただ、そういったお客様が増えてきたこともあり、お一人でも使える席を増やすというようなことはありますね。ここ何年かで、そんな必要性に迫られてきたといいますか。ビッグテーブルといって、10人掛けくらいのテーブルをシェアしてみんなで使うスタイルが増えたのも、やはりそういった時代背景があるからです。スタートしたころにはなかった発想ですね。

■アナログな“カフェ”と言えども、インターネットがつながらないのでは成り立たない

――そうした一人客からの需要が多いと思うのですが、今スターバックスの無料Wi-Fiの使い勝手がいいと評判になっています。無料Wi-Fiサービス「at_STARBUCKS _Wi2」を始められた経緯を教えてください。

 アメリカのスターバックスの店内は基本的にフリーWi-Fiで、ネット環境が当たり前にあるということは知っていましたし、日本でも、外国人のお客様に「アメリカならWi-Fiがあるのになぜ日本にはないのか」と尋ねられることが多いと聞いていました。

 先に申し上げました通り、我々がお客様に環境を提供する中で、現状はどうしても席が足りない、席が無くて帰られるお客様もいるという状況です。ここでフリーWi-Fiを完備し、お客様がさらに長く滞在されることになれば、ビジネス的には本来の方向性と逆の施策になってしまうことになります。こうしたこともあって、お客様の要望と、時代の変化、そしてそれらに我々がどう対応するかということは長い間議論してきました。

 とはいえ、現実的にはアナログ人間の僕でさえ、PCも含めたモバイル端末は使わざるを得ない時代なわけです。モバイル端末なしでは仕事にならない。特にこの5年くらいの変化はすごいですよね。そうなってくると、カフェでネットも繋げませんなんて話は成り立たないのではないか。そこで今年、とうとう踏み切ったわけです。

――世の中の流れに遅れていったらまずいと。

 ただ、当社はあくまでアナログ的なサービスを前提とした“カフェ”なので、そこのバランスが非常に重要になってきます。お客様が全員下を向いてPC画面を見ているような、会話もできないような場所にはしたくない。逆に我々は、できるだけお客様と対話する機会、お客様との接点に、自分達らしさをどう出せるかということを考えています。いずれにせよ、フリーWi-Fiサービスはお客様から概ねご好評いただいていますし、外国人のお客様にもご利用いただいています。このサービスは事前登録制ですが、全体の15%が英語登録なんですよ。

 また、フリーWi-Fiが繋がるからスターバックスに行こうというのは副次的なもので、そう思ってもらえるのは嬉しいのですが、そのために入れたわけではありません。あくまで快適な環境を整える一環なんです。でも、そういったお客様も今後は増えてくるのかなとは考えています。

■日本の実情、顧客の要望に合わせて試行錯誤していく

――アナログが基本のカフェとのことですが、「at_STARBUCKS _Wi2」は無料Wi-Fiサービスとしては突出して使い勝手がいいと思います。無料で、キャリアや端末の限定もなく無制限に使える上、全国800以上のチェーン店舗で利用できる。

 みんなモバイル端末を持って動いてる時代ですからね。僕も地方に行ったら、スターバックスに入って会社のPCを使っています。おっしゃる通り、全国にチェーン展開している会社としては圧倒的に環境レベルは高いと思います。我々が店内で作る環境としては、ある程度の水準まで来ていると言えるのではないでしょうか。

 そうは言っても、今はまだ「環境を整えただけ」程度の状態だと思っています。今後はその上で、環境をいかしてどんなサービスが提供できるか、といったことも考えていかなければなりません。アメリカのスターバックスではコンテンツのダウンロードサービスなども行っているようですが、日本とアメリカではスターバックスの使われ方もまったく違うんです。今の日本では何が必要とされ、何が合っているかということも含め、慎重に考えていかなければならないと思っています。PCやモバイルを使うお客様には何が提供できて、逆にPCを使わないお客様には何が提供できるか、あわせて考えていく必要があります。試行錯誤しながら進めて行きたいですね。

――ありがとうございました。
《RBB TODAY》
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