【木暮祐一のモバイルウォッチ】第2回 「5インチスマートフォンが新たなニーズを喚起する」 | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第2回 「5インチスマートフォンが新たなニーズを喚起する」

 今年注目されそうなスマートフォン周辺の話題として、前回は「モバイル充電」など、スマートフォンの電源周りの話題を書かせていただいたが、もうひとつ動向に着目しているものがある。それは、5インチクラスの大画面スマートフォンの普及である。

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木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学)
  • 木暮祐一氏。武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学)
  • スタイラスのボタンを押しながら画面を2回タップすると直ちにメモのウィジェットが起動する。筆圧を感知し繊細な描画も可能。
  • たとえば地図を画面キャプチャし、その上にメモを添えてメールで送信といった使い方が簡単なスタイラス操作だけでできてしまう。
  • GALAXY Note SC-05DとiPhoneを並べてみると、その大きさがご理解いただけよう。
 今年注目されそうなスマートフォン周辺の話題として、前回は「モバイル充電」など、スマートフォンの電源周りの話題を書かせていただいたが、もうひとつ動向に着目しているものがある。それは、5インチクラスの大画面スマートフォンの普及である。

 5インチというと、iPhoneのディスプレイを2つ並べたぐらいのサイズになる。こうした大画面スマートフォンは2010年12月発売のDELL Streak(ソフトバンク 001DL)など、以前からもラインアップは少なからずあった。しかし、今春発売された5.3インチディスプレイを備えたサムスン GALAXY Note(NTTドコモ SC-05D)の登場によって、改めてこのサイズに注目が集まっている。

 6月19日に日経MJが2012年度上半期ヒット商品番付を発表したが、GALAXY Noteも東の関脇にランクインするなど、数あるスマートフォンラインアップの中で健闘していることがわかる。

 GALAXY Noteが従来の5インチクラスのスマートフォンと異なるのは、ペン入力に対応させていることである。GALAXY NoteにはSペンというスタイラスが付属しており、これを使っての文字入力はもちろん、驚くほどスムーズなメモ入力なども可能にしている。筆者は、たとえばDELL Streakも試用したことがあったが、正直なところ画面が大きければ良いというものではなく、片手で操作しようものなら親指が画面の隅まで届かなくてじつに使い勝手が悪かった。したがって、筆者はGALAXY Noteにも当初はあまり期待はしていなかったのだが、ペン入力機能を徹底的にブラッシュアップしたこの端末を触り5インチクラスの新たな存在感を感じるようになった。

 GALAXY Noteの外形寸法は147×83mm、そして厚さは9.7mm。ノートというより、まさに「手帳」というようなサイズだ。スーツやYシャツのポケットにスマートに収まるのもいい。そして思い立ったときにポケットから取り出し、画面をスワイプして内蔵のスタイラスを引っ張りだしたら、すぐに手書きのメモ入力が開始できるスムースさはじつに快適なのである。専用スタイラスの人差し指が当たる部分のボタンを押しながら画面をダブルタップすれば、GALAXY Noteがどのような画面状況であっていても、その上にメモを起動させ、ペン入力でメモをとることができる。

 またGALAXY Noteでは、スタイラスのボタンをプッシュしながら画面をロングタッチすると、その時の画面をキャプチャーすると同時にキャプチャーした画面を画面表示してくれる。この上に、スタイラスを使って自由にメモ書きができるので、たとえば地図をキャプチャして地図上にコメントを書き込んでメールで送るといった操作が極めて簡単にできるのである。

 そしてGALAXY Noteのペン入力は128段階の筆圧感知が可能になっており、筆圧に応じた微細な描画が可能である。サムスンによるGALAXY Noteのプロモーション展開では、GALAXY Noteによるイラスト執筆の実演などを盛んに行っていたが、これはGALAXY Noteのペン入力が人間の感性に従った微細な表現ができるということをアピールしたかったのだろう。付属のSペンは日本企業であるワコム社のfeel IT technologiesが活かされている。

 日本語入力に関しては、ペン入力で手書きのメモをそのまま保存することもできるし、たとえばメール作成画面などでペン入力から活字変換し文章作成することも可能である。その変換効率は秀逸で、しかも予測変換してくれるのでかなり快適に文字入力できる。たとえば漢字が分からなくてひらがなでペン入力しても、ちゃんと漢字で変換候補が表示される。この日本語手書き変換の技術にも、日本企業であるMetaMoJi社のmazecが採用されている。

 以上のように、GALAXY Noteの功績は従来のスマートフォンとタブレットの間となる絶妙なディスプレイサイズを採用したことと、これまでに無かった快適なペン入力の搭載で、スマートフォンでもタブレットでもしっくりこなかった快適な「情報入力」を掌中に収めることができたというわけ。スマートフォンを通じ、Googleカレンダーとの同期などクラウド系サービスの魅力は多くのビジネスマンにも認知されるようになった。しかし、一方で手書きの自由さから、紙の手帳をどうしても手放せなかった層も少なくはないはず。こうしたユーザーにとって、スマートフォンならではのデジタルのメリットと、紙の手帳並みに使えるペン入力機能を備えたGALAXY Noteは大いに魅力を感じられるのではなかろうか。

 5インチサイズのスマートフォンを見た最初の印象は、誰しも決して日常的な「電話」として使おうとは思わないサイズである。これがスマートフォンのメジャーなサイズになっていくとは決して思わないが、しかしそれなりに社会的なニーズは出てくると感じている。たとえば、医療の現場。わが国でも病院内の情報化は進んでいるが、そうした現場でヒアリングすると、電子カルテなど「患者の情報入力」の場面で多大な労力をかけていることが分かってきた。医療従事者がつねにモバイル端末を持ち歩き、現場で直ちに情報入力できる環境を構築するのが望ましいが、タブレットでは大きすぎて使い勝手が悪い。一方でスマートフォンでは画面も小さいし文字入力がやりづらい。シチュエーションによっては、患者から「遊んでいる」と思われてしまうケースもある。こうした現場で、5インチクラスのスマートフォンとペン入力があれば、入力に特化した専用アプリケーションとの組み合わせによって格段にデータ入力がやりやすくなるはずである。医療の現場の事例はごく一例で、とかくわが国における「情報化」とは、いずれの業種においても「情報の入力」に多くの時間が費やされていることが多い。そのような現場で、スマートフォンとタブレットの中間に位置するこうした5インチクラスのスマートフォンが着実に浸透していくのではないかと見ている。

 今夏は、GALAXY Noteのヒットを追うように、5インチディスプレイを備えペン入力可能なLG電子 Optimus Vu (NTTドコモ L-06D)も発売される。こうした5インチスマートフォンはビジネスの世界で新たなニーズを喚起してくれることだろう。
《木暮祐一》

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