携帯電話料金の割引施策の新しいトレンド~ブロードバンドとのセット割を検証する~ | RBB TODAY

携帯電話料金の割引施策の新しいトレンド~ブロードバンドとのセット割を検証する~

ブロードバンド 回線・サービス

筆者:武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家の木暮祐一氏
  • 筆者:武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家の木暮祐一氏
  • 【表1】セット割の現状
■全てのスマートフォン回線が値引きになる

 携帯電話料金の割引施策は数多く用意されている。たとえばパケット定額サービスの利用はスマートフォン時代ではもはや必須のものとなっている。そのほか長期利用を前提として月額利用料金が半額になる割引や、家族で通信事業者を統一することで、家族間の通話・通信を無料にしたり、無料通話分をシェアできる割引・施策など、複雑すぎて分からないという声が出るほどバリエーションに富んでいる。

 もはや、1人1台が当たり前になった携帯電話だけに、その電話料金負担は家計に占める割合も大きく、各家庭ではこうした各種割引施策をさまざまに工夫して、負担を少しでも減らそうと努力を続けているのが現状だろう。もはや「やり尽くした」感のあった携帯電話料金の割引施策だが、今年に入り新しい動きがでてきた。それが“ブロードバンドとのセット割”である。今や、一般家庭にもブロードバンドが広く浸透しているが、このブロードバンド契約を携帯電話の事業者と統一することで、スマートフォンの月額利用料を一律割引くというサービスが、auとソフトバンクで始まっている(表1)。

 この“ブロードバンドとのセット割”は、ブロードバンド契約の指定のプランとの組み合わせで、同じ通信事業者で契約しているスマートフォンの利用料金から値引きをするというもの。au「auスマートバリュー」、ソフトバンク「スマホBB割」ともに、家族のスマートフォンを最大10回線まで、一定額を永続的に割引いてくれるサービスである。auは、iPhoneを含むすべてのスマートフォンが対象で、最大2年間1,480円/月(3年目以降は980円/月)の割引となる。一方ソフトバンクの場合は、Androidスマートフォンなら2年間最大1,480円/月(3年目以降は980円/月)、iPhoneは430円/月(3年目以降は適用外)の割引となっている。残念ながらiPadには割引が適用されない。

 「1,480円」という額は、案外馬鹿にならない額だ。家族全員のスマートフォン契約に適用されるので、家族での利用回線数が多い家庭ほど、毎月の電話料金は劇的にコストダウンできる。たとえば家族4人が全員スマートフォンだったとして、2年間利用することを考えると総額で14万2,080円にもなる。家族で異なる通信事業者のスマートフォンを利用していた場合、同一通信事業者に乗り換えれば一人(一台あたり)2年間で3万5,520円安く利用できることになる。MNPによるキャッシュバックを利用すれば、大きな負担なく通信事業者を変更の上、新しいスマートフォンに買い替えできるので、これを機会に家族で統一した通信事業者にするといった動きが加速するのではなかろうか。

 また通常の携帯電話からスマートフォンに変更するとパケット通信料の定額上限額が高くなるので躊躇していたユーザーも少なくないと思われるが、このセット割を利用することで従来の携帯電話と変わらないパケット通信料で、スマートフォンの利便性を存分に堪能できると考えるもよし。まさにスマートフォン時代に画期的な割引施策の登場といえそうだ。

 ところで、なぜスマートフォンだけが対象で、従来の携帯電話には適用されないのか疑問に感じた方もいるだろう。そこで参考までに、“ブロードバンドとのセット割”登場の背景を簡単に説明しておこう。

 一部報道にもあるとおり、スマートフォンが急増したことで、携帯電話通信網の混雑が顕著になってきている。そのため、各通信事業者はスマートフォンのデータ通信をなるべくブロードバンドに逃がしていく、俗に「オフロード施策」と呼ばれる対策を推進している。とくに日中の都心部や、夜間の住宅地での混雑が顕著とされているが、都心部での対策としては、公衆無線LANスポットの増強などで各社が対処している。一方、夜間の住宅地での混雑は、自宅でスマートフォンを使うユーザーの通信経路をなるべくWi-Fi経由でブロードバンド回線に逃していくことで、携帯電話通信網にかかる負担を低減させていこうというのである。スマートフォンの通信は、Wi-Fiを利用したほうが実際に通信速度も高速であり、より快適に利用できる。こうした利用環境を、より多くの家庭に浸透させていきたいというのが、通信事業者各社が目指しているところなのである。あわせてスマートフォンとブロードバンドを同一事業者でセットで利用してもらうことで、請求の取りまとめやポイントの融通など、シームレスなサービスを提供できるという狙いがある。

■実際にシミュレーションしてみる

 このセット割の内容だが諸条件があり、auの場合は、スマートフォンをISフラット、またはプランF(IS)シンプルで契約している必要がある。ソフトバンクも同様に、パケットし放題フラット(iPhone向け)、パケットし放題フラットforスマートフォンを契約している必要がある。

 さらに、両社ともiPhoneの場合はキャンペーン施策による割引を実施しており、その割引額分と合わせて1,480円/月の割引額となる。たとえばauの場合「ISフラット iPhoneスタートキャンペーン」によりすでに480円/月の割引適用を受けている方が大半だと思われ、この場合はauスマートバリューでの割引適用は1,000円/月となる。同様に、ソフトバンクのパケットし放題フラット(iPhone向け)は、通常のスマートフォンよりも1,050円安価に設定されているため、スマホBB割での割引適用は430円/月となる。

 では実際にこの“ブロードバンドとのセット割”で、一般的な家庭を想定して毎月の電話料金をどれだけ減らせるのかをシミュレーションしていこう。たとえば大学生、高校生のお子さんがいる4人家族で、iPhoneが2台、スマートフォン1台、携帯電話1台の計4回線の利用という想定で計算してみたい。

 携帯電話・スマートフォンの基本使用料等は契約プランによって様々であるので、セット割での割引額にスポットを当てて比較したい。まず、上記の家庭が全員auを利用し、ブロードバンドもauにしてセット割である「auスマートバリュー」を適用すると、毎月の割引額はiPhoneが1回線1,480円(「ISフラット iPhoneスタートキャンペーン」による480円/月の割引適用中と想定)、スマートフォンが1,480円の割引になり、毎月の利用料金は最大1,480円×3台で4,440円割引になる計算になる。仮に2年間利用すれば106,560円である。

 一方、この家族がソフトバンクを利用していたとして、同じ回線契約状況(iPhone×2、スマートフォン×1、携帯電話×1)でシミュレーションすると、iPhoneの割引額は1回線430円、スマートフォンは1,480円で、毎月の電話料金は最大2,340円割引、2年間利用で56,160円となる。

 両社ともiPhoneに関してはキャンペーンにより月額利用料を他のスマートフォンより安価に設定しているので(キャンペーンなどにより内容は異なるが)、こうしたセット割では割引額が少なくなってしまうのだが、それでもよりローコストで利用できるようになることはありがたい。トータルの割引額ではauのほうがお得感が強そうだ。

 また対象となるブロードバンド回線をみると、auは主として光回線との組み合わせになる。一方、ソフトバンクのほうは主にADSLとの組み合わせでセット割が適用される。したがって回線速度という点では明らかにauが有利だ。

 これを機に、ブロードバンドと合わせ、長らく使ってきたソフトバンクのiPhoneをauに乗り換えようというユーザーも増えるかもしれない。ソフトバンクでiPhoneを使っていたユーザーが気にかけてきたことといえば、auのiPhoneでは一部使えない機能が出てくるのではないかという不安だろう。確かに昨年auでiPhoneの取り扱いを始めた当初は、Facetimeが使えないとか、Eメールのリアルタイム受信ができないなどの不利な面があった。しかし、これらは今年3月から解決済みで、Eメール(~@ezweb.ne.jp)のリアルタイム受信も対応を始めている。安心してauに乗り換えられるようになった。

 ということで、春先は各通信事業者ともスマートフォンの拡販に力を入れているので、この春を機にブロードバンドとセットで乗換えを想定して、より安価にスマートフォンとブロードバンドを利用するイメージをシミュレーションしてみてはいかがだろうか。
《木暮祐一》

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