“提案型の印刷会社”を目指して挑んだ電子ブックビジネス | RBB TODAY

“提案型の印刷会社”を目指して挑んだ電子ブックビジネス

エンタープライズ ソフトウェア・サービス

創英 制作部 制作管理課 課長 伊藤かおり氏
  • 創英 制作部 制作管理課 課長 伊藤かおり氏
  • 動画を埋め込み部署の紹介をしている
  • ワンストップサービスの創英の会社案内、デジタルブック
  • 印刷物と全く同じイメージを維持することができる
  • 創英の提携会社である東芝ドキュメンツの会社案内
  • 創英 制作部 制作管理課 課長 伊藤かおり氏
  • スターティアラボのActiBook公式サイト
  • 「IGAS(国際総合印刷機材展) 2011」フライヤー
 来る9月16日から6日間、日本最大級の印刷業界向け技術/サービスの見本市、「IGAS(国際総合印刷機材展) 2011」が東京ビッグサイトで開催される。IGASは、世界の印刷・紙工・デジタルグラフィックス関連の最新機材と技術が一堂に会するイベントだ。

 とくに話題の電子書籍分野は、今後大きな伸び代が期待されており、IT系企業を中心に印刷業界外からの参入も相継ぎたいへんな活況を呈している。PDFからFLASH形式の電子ブックを作成できるオーサリングソフトウェアも各社から登場しており、複数社がIGASでの出典を予定しているが、そのなかでも屈指の導入実績を持つのがスターティアラボの「ActiBook」だ。

 このソフトを最大限に駆使し、電子ブックの売上げを大幅に伸ばしている企業がある。企画・デザインから製版・印刷・製本・配送までをトータルに手掛ける創英がそれである。今回、同社の伊藤かおり氏(制作部 制作管理課 課長)に取材。印刷会社から見た書籍と電子ブックと、そしてActiBook導入によるビジネス機会の創出の可能性などについて話を聞いた。


■失注から始まった電子ブックへの参入

――まずはじめに、創英の事業内容や特徴についてご紹介ください。

 もともとは取説やマニュアルの翻訳・印刷からスタートした会社ですが、いまは企画・デザインから制作、製版・印刷・製本・配送・ロジスティックまで、印刷全般に関わるサービスをワンストップで提供しています。それ以外にも、最近ではシステム開発やWebサイトの制作、展示会のブースデザインなども手掛けています。顧客も多岐にわたり、広告代理店、メーカー、プライベート(個人)など、さまざまな方面から幅広く仕事をご依頼いただいております。

 弊社の特徴は何といっても制作クオリティの高さにあり、これは自負するところです。品質の高さを理由にご依頼いただくことが非常に多いですね。ここ数年は制作面での「無事故」「クレームゼロ」を達成しております。

 制作は印刷とは異なり、人間の頭と手を使わなければ絶対にできない仕事です。そこで校正能力の高いスタッフを配置し、制作者のミスを数値化することで、徹底した品質管理を実現しています。弊社ではこうした品質重視が土台としてあり、その信頼性の上で印刷物の電子化を進めています。

――電子ブック導入の契機や背景について教えてください。

 実は、もともと電子ブック制作の予定はなかったのです。2年ほど前に、あるクライントから「定期情報誌を電子ブックにしてほしい」という依頼があり、その際の作成ツールとしてスターティアラボの「ActiBook」をご指定いただきました。お客様からのオーダーということもあり、導入の際には他社製品との比較検討は一切しませんでした。

 ところが、いざ購入した段階になって、クライアントから予算を確保できなくなったという連絡を受け、受注が流れてしまったのです。残ったものはActiBookというツールだけ(笑)。弊社は部署ごとの採算性を重視する「アメーバ―経営」を実践しており、部署のマネジメント責任が大きくのしかかります。そこで何とかActiBookを活用して、電子ブック分野を広げて導入費用をペイするという方針になったわけです。ですが幸いにも、すぐに他の大手出版社から電子ブック制作の依頼をいただき、制作に乗り出すことができました。

――電子化は本業の印刷を浸食する競合関係になるのでは、という危惧はありませんでしたか。

 印刷と電子書籍は相反するものと考える方も多いのですが、私はそうではないと感じています。たとえば、あるコンテンツが1万部売れるものとし、半分を電子ブックにしたら、5000部が電子ブックに持って行かれて、書籍のほうも売上げが半減するというわけではありません。印刷物を購入する層は変わらず、さらにコンテンツを気に入った人が電子ブックも購入するという傾向が強いと思います。

 しかし今後を考えると、書籍は置くためのスペースの制約と紙の劣化が避けられませんから、やがて電子化して保存しようという動きになると思います。


■「電子ブックをつくること」ありきではない

――電子ブックをユーザーに推奨する上で重要なポイントは何ですか?

 電子ブック制作の依頼や相談はしばしばあります。しかし、相手側は電子ブックについて十分に理解していないことがほとんどです。そのため当社ではまずヒアリングをして、お客様が何を求めているのかを把握し、場合によっては電子ブック以外の物を薦めることもあります。電子ブックありきで提案するのではなく、お客様のニーズを見極めたうえでニーズと合致すれば電子ブックを薦めるわけです。

 お客様に電子ブックを薦めるわけですから、私自身も電子ブックに関わることについて毎日必死になって勉強しました。いまの若い社員、とりわけオペレーターは新しいものに対して警戒心が強いのです。この世界では、一文字でも修正が入って刷り直しになると、100万円以上の金額が吹っ飛ぶこともあるので、事故に対する恐怖心も大きい。そのため、まず管理者である私自身が皆を指導できるように、しっかり勉強する必要がありました。ActiBookについては、私のほうで開発元のスターティアラボさんに問い合わせをすることがほとんどです。

――実際に電子ブックを手がけ、どのようなメリットがあると感じられましたか?

 やはり電子データは「検索性が高い」というメリットがあると思います。次に「音声や動画が埋め込める」という点も魅力です。またお客さまは印刷物に対するイメージや表現について、大変強いこだわりを持っていますから「デザインを崩さずに高品質なものを実現できる」点は重要ですね。電子書籍は、EPUBに代表されるような「リフロー型」と、ActiBookのような「ラスタライズ型」の2つに形式上で大別できます。後者のラスタライズ型は、印刷物のイメージを変えずに電子化できることが大きなポイントになります。


■検索機能や動画・音声を取り入れた魅力あるコンテンツづくり

――ではActiBookをどのように活用されていますか? 具体的な事例を交えてお答えください。

 様々な分野でActiBookを利用して電子ブックを制作しております。たとえば、カタログ、パンフレット、リーフレット、学校案内、医学系雑誌など、多くの作例があります。やはり印刷物と差が付くように、電子ブックの強みである動画・音声を挿入することをお薦めしていますね。例えば医学系雑誌では病名などの単語検索ができ、それを履歴として残せるので推奨しています。病名は略称も多いため、検索機能は大変役立っているようです。そのほかの事例としては、ActiBookによる社内文書の電子化もあります。

 また某企業の会社案内を制作した際には、電子ブック化して大変喜ばれた経験があります。手間をかけて動画を丁寧に編集し、ActiBookで埋め込みました。クライアントの自社ビルを複数アングルで見せたり、日の出からから日没までの変化などは、なるほど電子化されたものでないと表現できません。単に出版物を電子的にコンバート(変換)するだけでなく、いかにActiBookの特性を活かした表現方法ができるかということが大事ですね。

――ActiBook導入後に感じたユニークな機能について教えてください。

 ActiBookにはログ解析機能がサポートされていて、「Google Analytics」との連動ができます。実はまだ私も使いこなせていないのですが、これは大きな武器になると思います。デバイス別のアクセス数や、電子ブックのページ滞在時間など、ユーザーの詳細行動を分析できるようになります。

 たとえばActiBookの機能で効果測定を行い、もしあまりアクセスされない場合にはその理由を探ります。電子ブック自体があまり読まれない場合には、カタログ自体のデザインや内容などにも何か問題があることがあります。そこで電子ブックのリバイズからカタログ修正へのフィードバックなども含めた形で、印刷まで付随したサービスとして提供しています。このような形で対応すると言い切れる印刷会社はまだ少ないと思います。


■デジタルだけでなくアナログの素晴らしさも含めて提案

――スターティアラボのサポートに対する感想は?

 スターティアラボさんには、本当にお世話になっています。たぶんユーザーの中で弊社が一番お世話になっているかもしれませんね(笑)。サポートは懇切丁寧で、答えも的確ですし、迅速に対応してくれますので満足しています。しかし私が1番評価している点は、何か分からない質問をしたときでも、担当者が勉強されて、夜遅くでもその日うちに答えが返ってくることです。私はそういった真摯な姿勢が好きで、この人たちなら信頼できると思っています。安心感もあるし、要望も言いやすい。たとえ要望が実現できなくても、間接的に解決の糸口を探してくれる点が素晴らしいと感じていますね。

――最後に今後のビジネスへの展望と御社の方向性について教えてください。

 弊社に限らず、いまは単に印刷するだけで生きていける時代ではありません。いかに提案型の営業を展開するかが全社的な命題になっています。最近、印刷会社は制作部門を廃止して、アウトソーシング化する方向にあります。そういう流れに対し、弊社は逆に制作に力を入れて「今後は制作ありきでいこう」という方針になっています。

 これからの世界は、アナログとデジタルの共有がどんどん進んでくると考えています。たとえば、ご説明したように弊社が無事故を実現している理由は、アナログである人間が頑張っているからです。また成果物の素晴らしさについては、ActiBookのような先進的なデジタル技術を取り入れているからです。

 これらが融合して、初めてお客様のニーズに限りなく近づけるのです。手動だけも自動だけでもダメですし、電子ブックだけでも印刷物だけでもダメなんですね。そういった考えを、どうやってお客様に訴求していくか。アナログの素晴らしさも含めてご提案できるようになること―――それが私のテーマでもあるし、弊社としてのテーマにもなっています。
《井上猛雄》

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