【テクニカルレポート】デジタル放送標準化と実用化動向(後編)……パナソニック技報 | RBB TODAY

【テクニカルレポート】デジタル放送標準化と実用化動向(後編)……パナソニック技報

ブロードバンド 回線・サービス

第2図:デジタル放送の実用化動向
  • 第2図:デジタル放送の実用化動向
2. 各国のデジタル放送の実用化動向

 世界各地域では、1章で記した3方式をベースに国ごとに定められた運用仕様に基づき、デジタル放送の実用化が進んでいる。欧米や日本などの先進国では、アナログ放送の完全停波も進む中、映像の高画質化、有料放送導入に向けた新技術の導入や、IP網を利用した配信サービスや移動体向けサービス、3DTVなどの新サービスが始まっている。一方、中南米やアセアン地域などの新興国では、欧・米・日の方式のいずれかを基本方式として採用しているが、国によっては、最新の映像符号化や国独自の技術を導入しているところも存在する。

1)欧州:1998年に英国を皮切りに各国で開始されたDVB方式ベースのデジタル放送は、映像のHD化、有料サービスの導入に向け第2のフェーズに入っている。新たな方式導入に向けた各国(地上・衛星・ケーブル)のアプローチは必ずしも同じではなく、さまざまな仕様が規定されている。

・伝送方式はDVB-Tのままで、映像コーデックとして、H.264/AVC(Advanced Video Coding)を導入(フランス、ロシアなど)

・H.264/AVCに加え、伝送方式として新たにDVB-T2方式を採用(イギリス、スウェーデン、フィンランドなど)

・有料サービスのためのコンテンツ保護方式として従来のCI(Common Interface)に加え、CI Plusを追加導入(ドイツ衛星、オランダケーブルなど)

2)中南米:ブラジルはISDB-T方式を採用し、2007年から本放送を開始した。DVB-T(コロンビア、パナマ)、ATSC(ドミニカ)採用の一部を除き、ペルー、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、パラグアイなど主要国がISDB-T方式の採用を決定している。 ただし、 同じISDB-T方式であっても、ブラジルではデータ放送に独自方式GINGAを採用するなど、日本の放送運用とは異なっている。

3)中国:自国の技術方式を積極的に導入しており、独自の放送規格(CTTB: China Terrestrial Television Broadcast)を中国国家標準として採用している。また、映像符号化(AVS: Audio Video coding Standard)、音声符号化(DRA: Digital Rise Audio)を必須機能とする動きがある。

4)アジア・太平洋:オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、インドネシアなどがすでにDVB-T方式ベースでのサービスを開始している。マレーシア、フィリピンなども試験放送を行っており、インドも含め今後大きな市場として期待される。

3. 新技術導入による新たなサービスの動向

 以上述べてきたように、放送のアナログからのデジタル化が世界中で進んでいるが、一方で早くにデジタル化が進んだ先進国を中心に新たな放送サービスが始まっている。その中で代表的なものとして今後普及が期待される、3D(立体放送)、IP網を利用した映像サービス(IPTV:Internet Protocol Television)、移動体向け放送を取り上げる。

3.1. 3D(立体)放送

 「3D元年」と呼ばれた2010年、衛星やケーブル事業者が3D放送サービスを相次いで開始した(米DirecTV、英BSkyB、独Sky、日スカパー!など)。これらの放送は、Side-by-Sideと呼ばれる画面分割による伝送方式が用いられている。今後、3D放送のさらなる普及に向けては、地上波の帯域で2D放送と共用可能な3D伝送方式の整備が必要であり、現在DVB、ATSC、ARIBで規格化作業が進んでいる。

3.2. ブロードバンド網を用いたサービス

 通信インフラの普及、ストリーミングなど通信ネットワーク上のAV処理技術の進歩により、通信網経由での映像配信が実現可能となりつつあり、広帯域のインフラ構築が比較的進んでいる日本ではテレビ向けのHD画質の映像の配信サービスも始まっている(アクトビラ、ひかりTVなど)。今後、特に欧州や日本では、デジタル放送と通信網の映像配信がより密接に連携した放送通信連携サービスの動きが起こると予想される。欧州では、HbbTV(Hybrid Broadcast Broadband TV)と呼ばれる仕様が欧州ETSI(European Telecommunications Standards Institute)規格として2010年6月に承認され、今後ドイツ、フランスなどでサービス開始が計画されている。また、日本では、データ放送コンテンツから直接アクトビラへ遷移する機能も規定されている。今後、放送からボタン1つで、関連番組や見逃した番組をIP配信経由で視聴するサービスが広がる可能性がある。

3.3. 移動体向け放送

 日本の、移動体向け放送「ワンセグ」は2006年に開始され、携帯電話、カーナビに受信機能が搭載されている。2011年7月のアナログ停波後の新たな動きとして、VHF(Very High Frequency)帯の一部を利用しモバイル向けマルチメディア放送が計画され、現在、ARIBにてその放送方式(ISDB-TmmやISDB-Tsb)の規格化作業が行われている。モバイル向けマルチメディア放送では、リアルタイム放送に加え、映像や音楽などを蓄積メディアにダウンロードする蓄積型サービスも検討されている。

4. 今後の展望

 以上、世界各地域のデジタル放送の標準化・実用化動向を述べてきたが、放送方式はグローバル統一仕様ではなく、導入時期における最新技術の採用、各国のビジネスモデルによる独自技術の採用など、国ごとのローカル規格となる。また、すでにデジタル放送導入済みの地域では3Dや放送と通信の連携など多彩な新サービスへの動きが絶えず起こっている。受信機メーカーにとって、これらの動きをいち早く把握するとともに、標準化を主導できる体制を備えることが今後も重要である.


■執筆者(敬省略)

・下地達也
・青木貴
・川端洋平

※同記事はパナソニック株式会社の発行する「パナソニック技報」の転載記事である。
《RBB TODAY》

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