【Interop Tokyo 2011(Vol.3)】“リアル”を見せるイベントへ……村井純教授、「Interop Tokyo 2011」を語る | RBB TODAY

【Interop Tokyo 2011(Vol.3)】“リアル”を見せるイベントへ……村井純教授、「Interop Tokyo 2011」を語る

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村井純教授
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 2010年にイベントの運営企業が変わり、Interopは新しいフェーズに入ったとされる。その2年目となる2011年のInteropの位置づけや役割には、いったい、どのような変化がもたらされるのだろうか。「Interop Tokyo 2011」開催に先駆けて、実行委員長である村井純氏(慶應義塾大学 環境情報学部教授)に聞いた。

――新生Interopが開催され2年目となる今年のイベントの見どころは?

前回は、「新しい出発」をコンセプトにイベントの役割だけでなく、メディア、コンピューティング、デバイスなどの再デザインに取り組んだ年でした。インテリジェントなデジタルサイネージや非PCによるデバイス、ヨーロッパ圏でいうIoT(Internet of Things:モノのインターネットと呼ばれ、あらゆるモノにRFIDのような識別タグをつけ、ネットワーク化する)のような新しい提案があったと思います。今年の見どころは、これら「新しい出発」のリアルな部分をお見せできるようになったということができます。サイネージは位置情報や画像認識、NFCといった技術でよりインテリジェントになっています。ディスプレイについては、大画面やタッチパネルなどの要素技術の展示から、今年はそこに何を表示するかという段階に進んでいます。メディアについていえば、ようやく日本でも放送業界や出版業界がWeb展開に本格的に取り組みだしています。

――Interopの「新しい出発」の背景にはどのような情勢があったのでしょうか

Interopは、イベントの名前が示すInteroperability(相互接続性)を基軸として、ネットワークのあらゆるレイヤ(物理層からアプリケーション層まで)の機器やサービスを、インターネットというプラットフォーム上で接続し運用するための製品や技術を発表、検証する場でした。当初はデジタルコミュニケーションのプラットフォームを作る、ということを目指すイベントでしたが、インターネットというプラットフォームが市民権を得て、社会に浸透しだすことで、当然役割も変わってきました。いちばん大きな変化は、WebアーキテクチャがPCやブラウザのためのプラットフォームではなく、コミュニケーションからすべての機器・サービスの基盤となったことです。私のいるSFCでも、今年からカリキュラムを変えてWebアーキテクチャから教えることにしました。最初にTCP/IPではなく、HTTPから入るイメージです。理系の人や興味をもった人は、そこから下のレイヤにいきます。

――それはInteropもTCP/IPやプロトコルの話からHTTPに移行したということですか

そう単純な問題ではありません。ベースとなるプラットフォームが変わったということで、これにより相互運用性の適用範囲の拡大が進みました。流通や消費動向に影響を与えたり、通信だけでなく、放送や出版のインフラとしてWebの利用が進んでいます。医療機器もIP reachableになり、レントゲンやMRI画像の医療機関どうしの共有も珍しいことではなくなってきていますよね。銀行ATMの回線もIPを使うようになりましたが、10年前では考えられないことでした。これらに加え、制御機器、センサー、サイネージ、自動車や交通機関もインターネットに接続されるのが当然になりつつあります。適用範囲がITにとらわれず分野が広がったことで、それぞれの分野に適用させるための専門性はさらに高まったといえます。

――2011年3月に東日本大震災が発生しました。この未曾有の自然災害と連動して起きている社会・経済現象とインターネットの関係はどうでしょうか

Webやインターネットの変化を語る上で、今回の東日本大震災の影響も無視できないと思います。通信を含む社会インフラがダメージを受けることで、インターネットが利用できないなどの課題も浮き彫りになりましたが、同時にインターネットやWebならではの機能や効果もクローズアップされました。例えば、自治体などが安否確認や連絡にSNSといったメディアを活用したり、道路状況や広域情報のためにサイネージ技術が活用されたり、TV局がニュースや番組の配信にUstreamを利用したり、出版社が発行、配送できない雑誌をWebで公開したりといったことです。とくにマスコミが、震災による影響で既存の伝達メディアの枠を超えてWebを活用したことは注目すべきでしょう。震災という特殊事情があったとはいえ、マスメディアが、Webメディアを積極的に利用し始めた意義は高いといえます。

――災害が変革を後押しした側面があると?

ゼロではないでしょうが、それは限定的だと思います。TV局がUstreamを活用しだしたといっても、その伏線はずっと以前からありました。実際、連綿と続くInteropでの活動や実証実験の中でもTV局やマスメディア側もWebやインターネットの利用スキームについての研究・実験は行われてきました。昨年の大みそかに、かのロリン・マゼール氏指揮によるクラシックコンサートをUstreamで中継しましたが、この配信に関わったスタッフにもShowNetやNOCに集まった業界コミュニティメンバーが多数いました。Interopによる業界横断のフレームワークがなければ、マゼール氏の中継が大みそかに実現することはなかったかもしれません。

――Interopの期間中、World IPv6 Dayも併催されますが、IPv4についてはICANNのアドレスの払い出しが終了し、あらためてIPv6が注目されています。InteropでのIPv6に対する取り組みはどのようになっていますか

IPv6については、共通プラットフォームづくりの段階であり、World IPv6 Dayでは新しい技術や事例などを用意していきます。まだ、実証実験、接続試験といった機能が有効である状態ですが、官民が積極的にIPv6普及に取り込んできたことで、現状でもIPv6技術では世界をリードしています。しかし、インターネットに関わる業界の裾野が広がっていき、IT関連業界でも業種ごとにIPv6への対応状況のばらつきがあるという問題があります。そのため、Interop、World IPv6 Dayにおいては、参加者が最新レベルの対応状況などをみて刺激を受けてくれるとよいと思っています。その意味で、技術レベルの平準化、情報交換の場としての機能を期待しています。

――IPv6についてはエンドユーザーレベルでの認識がまだ低いようです。この点についてコメントやメッセージなどありますか

すでにPCやOS、主要な通信事業者、ISPのIPv6対応はかなり進んでいます。エンドユーザーレベルでIPv6対応をどうするか、といったことは悩む必要はありません。しかし、IPv6は今後の社会インフラを考える上で必須のものとして導入が進んでいきます。ITSの規格にはIPv6を前提にしています。IoTのような世界の実現するためにはもちろん、スマートグリッド、スマートシティのような社会を実現させるには、自由な発想に対応できるIPv6のような新しいプロトコルと膨大なアドレス空間が必要だからです。

――そういえば、村井先生は10年以上前に自動車のワイパーにGPSとIPv6アドレスを割り当てれば詳細な降雨マップがリアルタイムで描けるというアイデアを述べていましたね

今なら、例えば、自動車に線量計を搭載させるというアイデアもあると思っています。現在、放射線は位置固定のピンポイントでの測定データしかとっていません。移動する自動車での測定データを集めれば、広範囲の線量をスキャンすることができます。点ではなく面での測定データが得られるでしょう。
《RBB TODAY》

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