【iPadビジネス(後編)】iPad対応で広がるマルチデバイス――スターティアラボインタビュー | RBB TODAY

【iPadビジネス(後編)】iPad対応で広がるマルチデバイス――スターティアラボインタビュー

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スターティアラボ 執行役員 WEBソリューション技術部長 小友康広氏
  • スターティアラボ 執行役員 WEBソリューション技術部長 小友康広氏
  • 「Actibookのコンセプトは”One Authoring, Multi Device”といって、1回のオーサリング処理で、PCの機種、プラットフォーム、そしてPC以外のデバイスにも依存しないで対応できるというものです」
  • Actibookによる電子書籍が表示されたiPadとiPhoneを持つ小友氏(左)と北村氏(右)
 PC向けの電子書籍向けのオーサリングソフト ActiBookを古くから手掛け、iPhone対応、iPad対応をいち早く実現したスターティアラボへのインタビュー第2弾。今回は、iPad対応のActiBookの技術的な特徴や、その他のデバイスに対する戦略などを聞いた。インタビューに応じてくれたのは、スターティアラボ 執行役員 WEBソリューション技術部長 小友康広氏だ。

――ActiBookは、主にPC環境での電子書籍のオーサリングツールでしたが、iPhone版のActiBookをリリースし、iPad対応版の計画についてもiPhone版のアナウンスと同時に発表しています。ActiBookはモバイルデバイス用に特化していくのでしょうか。

小友氏:マルチデバイス対応は、これからの電子書籍ビジネスに重要だと思いますが、ActiBookがスマートフォンやスレート端末に特化したツールになっていくということではありません。スターティアラボの電子書籍向けのオーサリングツールの、もともとのコンセプトに「One Authoring, Multi Device」というものがあります。これは、1回のオーサリング処理で、PCの機種、プラットフォーム、そしてPC以外のデバイスにも依存しないで対応できる機能を意味しています。
 ActiBookは、基本となるパッケージを購入すれば、その後のオーサリング機能の拡張や対応デバイスの追加は、定期的なバージョンアップを含むメンテナンスで受けることができます。電子書籍については、今後、専用端末やスマートフォンなどモバイル系のデバイスの対応が欠かせないものですが、業務用端末やデジタルテレビへの対応もiPhone/iPadへの対応も、ActiBookのマルチデバイス対応戦略の中では区別はありません。

――リリース予定のiPad版のActiBookは、iPhone版やPC版と機能の違いはありますか。

小友氏:PCとiPhone/iPadの大きな違いは、入力インターフェイスでしょう。ページをめくる動作などで、マウス操作からタッチパネルのフリックに対応したり、ピンチイン、ピンチアウトに対応したり、といったデバイス特有の機能に対応しています。それ以外の電子書籍コンテンツの操作性やオーサリング機能に大きな違いはありません。また、iPadとiPhoneはAPIレベルでの互換性が高いので、iPhone版からiPad版へのポーティング作業に大きな問題はありませんでした。もっとも、それがある程度予想できたので、iPhone版を対応するときに、同時にiPadも対応できるとアナウンスできたのですが。

――ところで、PC向けのActiBookはFlash技術を利用して電子書籍を実現していましたが、iPhoneやiPadはFlashに対応していません。PC版のユーザーはiPhone/iPad版と2種類のAcitBookが必要になることになりませんか。

小友氏:いえ。旧版のユーザーもアップグレードでiPhone/iPad対応が可能になります。ActiBookはPCでの表示にはFlashを利用していますが、コンテンツの作成、描画、画像処理すべてにFlashの機能を利用しているわけではありません。電子書籍化の作業性を考慮して表示させる元データはJPEGやXMLなど標準的なグラフィックフォーマットのものを前提に、表示ロジックの部分にFlash(ActionScript)を利用しているだけです。
 そのため、iPhoneに対応させるときも、表示ロジックの部分をiPhone OSのAPIに置き換えるだけで済みました。同じことは、Android端末や家電メーカーが出してくるかもしれない電子書籍端末への対応にもいえます。このシステムアーキテクチャのおかげで、マルチデバイス対応など、機能の拡張性が高いことがActiBookの特徴が実現できているのです。

――新しいデバイスがリリースされたときも、素早い対応が期待できそうですね。しかし、デバイスごとの物理的なスペックの違いはどうでしょうか。

小友氏:先ほどのタッチパネルインターフェイスのように、デバイス固有の機能への対応も重要です。電子書籍においては、中身だけでなくインターフェイスやデバイス固有機能なども差別化ポイントとなりますから、そこは個別対応になります。
 デバイスごとの差異という点では、PC版のときからこだわっているポイントもあります。スターティアラボは、古くから出版社とともに電子書籍システムやオーサリングツールを手掛けてきたので、画面表示でも品質に対する高いニーズに応えなければなりませんでした。特定の解像度で、色がにじんだり、絵がつぶれたりしないように最適な拡大・縮小、圧縮率などを細かく制御する必要があるので、表示用の画像データの生成は、出力デバイスの仕様に合わせてチューンしています。

――圧縮率も関係あるんですか。

小友氏:はい。PC版ではそれほど意識する必要はないかもしれませんが、iPhone、iPadでは、通信回線が3GかWi-Fiとなります。3G回線を基準に考えると画像が多いページはデータサイズも考慮する必要があります。
 実は、それでもiPhoneやiPadは、画面サイズが固定できるので、表示の最適化はPCよりも楽でした。PCの場合は、画面サイズ、解像度などがデスクトップ、ノートPCなど多様なので、いろいろなパターンを想定しなければならないのです。

――ActiBookのiPad版で、個人でも電子書籍コンテンツのオーサリングはできそうですが、それをビジネスとするための課金システムや決済システムのソリューションはないのですか。

小友氏:考えています。じつは、そのような要望や問い合わせはすでに多方面から寄せられていて、ECシステムのツールをリリースする予定があります。7月8日から開催される「デジタルパブリッシングフェア 2010」にスターティアラボも出展するのですが、ここでは、個人や編集プロダクションなどが、簡単にショッピングカートや決済システムを実装したサイトが構築できるツールのデモを展示する予定です。

――そのデモの内容について教えていただけますか。

小友氏:クラウド上に電子書籍の本棚を実現するようなポータルサイトの展示を考えています。このポータルでは、ユーザーはサイト上の電子書籍のコンテンツをカタログ検索し、購入するだけでなく「マイ本棚」を管理できます。購入したコンテンツは、クラウド上で管理されるため、PCで閲覧できるのは当然として、モバイルデバイスからでも同期した内容を閲覧することができます。また、購入したコンテンツについて、しおり機能やペン入れ機能が利用できますが、マーキングした情報をクラウド環境で別のユーザーと共有する機能も今後想定しております。
 PCや複数のモバイルデバイスとの同期機能があれば、特定のデバイスに依存することなく、幅広いユーザー層にアピールできるコンテンツが実現できます。また、グループ間での情報共有やコミュニケーション機能は、普通の書籍を読むというより、学校の授業や企業でのグループウェア的な応用が期待されます。実際、このクラウド対応のECサイトのツールは、OEM提供も考えています。OEM提供では、企業のイントラ利用で必要のないショッピングカート機能などを削除して、コミュニケーション機能を強化するなどの対応が可能です。実際、大企業がイントラネット向けにActiBookのシステムを導入し、社内報の配信システムに利用したり、社内文書や各種印刷物を電子化して配信させたりする事例もあります。

――iPadに続いてiPhone 4も対応も考えていますか。

小友氏:現段階では確定していないことではありますが、もし対応するにしても、技術的な障害はないと思っています。OSもバージョンアップされ、本体のCPU性能もアップするはずなので、まず、同じソフトウェアでも処理速度は上がってくると思います。しかしせっかく新しいOSに対応するなら、iPhone 4のスペックを活かした機能拡張を考えたいと思っています。処理速度が上がれば、よりリッチな表示やインターフェイスが実現できるでしょう。
 また、iPhone 4ではマルチタスクに対応するので、電子書籍内でのハイパーリンクの機能を拡張できるかもしれません。例えば、電子書籍コンテンツ内のリンクから、別ページに移動したり開いたりするだけでなく、さまざまなサービスを呼び出したり、その処理が終わったらますぐに元のコンテンツに戻れるような機能です。

――iPhoneやiPad以外の機器やデバイスでの展開についてはどのように考えていますか。
小友氏:現在、iPadが電子書籍の端末として注目されており、実際に、iPad向けの電子書籍コンテンツや配信アプリケーションのニーズが高いのも事実です。しかし、ActiBookは、出版社の電子書籍ビジネスをサポートするためのもので、特定のシステムやデバイスありきのアプローチをとっていません。あくまで、電子書籍コンテンツを作成するという目的から、利用できるプラットフォームやデバイスごとに、最適なシステムやツールを使ってソリューションを実現します。したがって、デバイスやOS依存の技術を使っていたとしても、それに100%依存することはありません。

――いろいろな端末で電子書籍のプラットフォームが用意できるようになれば、個人レベルから出版社まで、電子書籍の市場がさらに広がりそうですね。
《中尾真二》

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