【宙博2009 Vol.4】六本木ヒルズはハイテクじゃない!? スマートシティがCO2削減の鍵 | RBB TODAY

【宙博2009 Vol.4】六本木ヒルズはハイテクじゃない!? スマートシティがCO2削減の鍵

エンタープライズ その他

ナノオプトニクス・エナジー 代表取締役社長 藤原洋氏
  • ナノオプトニクス・エナジー 代表取締役社長 藤原洋氏
  • 東京大学大学院情報理工学系研究科教授 江崎浩氏
  • セッションは、東京とアムステルダムをビデオ会議によってつないで行われた
  • 新しいスマートビルディングには、これまでにない自律性、交流(相互接続)性が重要となる
  • 建築コストもライフサイクル全体でみれば、電気代などと同じくらい
  • 東大の取り組み
  • 共同研究は、文字どおり産学連携で行われる
  • 都市設計のパラダイムシフト
 「宙博」では、宇宙に関する展示が多いが、宇宙開発とエネルギー問題の関わりも深い。宇宙探索、人工衛星には太陽エネルギーが不可欠であり、現在は太陽光発電のエネルギーを衛星から無線で送電するシステムの開発も進められている。宙博でも、3日のセッションは宇宙をテーマにしたものが多かったが、4日はエネルギー関係のものが多くなっている。その中で東京大学工学部のおもしろいプロジェクトの発表があった。

 「Green by ITにおける、Green 東大工学部プロジェクトの意義」は、東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏とナノオプトニクス ・エナジー代表取締役の藤原洋氏によって行われた。

 ただし、壇上に現れたのは藤原氏だけ。江崎氏は、ISOCというインターネットの世界的組織の会合でオランダ アムステルダムに滞在しているため、テレビ会議での参加となった。

 冒頭、藤原氏は、「現在、世界は2つの危機に直面している。ひとつは環境・エネルギー危機であり、もうひとつは経済危機である」とし、今後10年のうちに取り組まなければならない課題はこの2つにあるとした。そして、東京大学は、実はひとつの組織としては都内で最大の電力消費量がある、それだけCO2の排出も大きいと述べた。そのうえで、東京大学がユニークなグリーン化に取り組んでいるので、そのプロジェクトについて当事者である江崎氏に説明してもらうと、マイクを譲った。

 江崎氏は、滞在先のホテルからスライドを示しながら説明を開始した。最近のインテリジェントビルと呼ばれるような建物、たとえば六本木ヒルズのようなビルも、よく調べるとハイテクというより古い技術の塊であるという。その理由は、高度なITシステムや空調、照明、センサー、セキュリティシステムなどを備えているが、それらの協調動作や体系だった制御が不十分なことにあるそうだ。管理システムも独自であったり縦割り型であったりして、運用コストも決して低くない。

 社会全体の電力消費を考えると、建物の消費電力がほぼ半分であり残りが交通や産業に関わるものだという。その建物の電力のうち、空調と照明だけでほぼ2/3を占めているそうだ。つまり、建物の電力を社会全体で制御、最適化できれば相当な省エネが可能になるわけだ。また、建物のライフサイクルで考えたときも、建築時にかかる費用と電気代などのユーティリティコストはほぼ同じくらいという試算を示し、ランニングで発生する電力消費の削減の重要性を唱えた。

 実際、東京大学のグリーンプロジェクト(グリーン東大工学部プロジェクト)も、前学長の肝入りで、年間40億円ともいわれる東大の電力消費を削減する方法を考え、それを社会にフィードバックすることが目的だという。

 手始めに、本郷にある東大工学部新2号館を実証実験の場として、産学協同でさまざまな取り組みを行っていくそうだ。2012年には消費電力を15%削減し、2030年までに30%まで削減することを目標としている。すでに31の企業と13の団体がこのプロジェクトに参加している。これらの企業や団体は、単に省エネやコスト削減だけでなく、さまざまな業種や団体を巻き込んだ新しいエコシステムを構築し、新しい産業やビジネスも創生しようとしている。

 現在グリーン化というと、IT機器やデータセンターの消費電力、あるいは発電所の送電システムのインテリジェント化(スマートグリッド)のようなシステムによる、社会全体からみれば部分最適化の手法が注目されている。しかし、このプロジェクトは、建物の構造やシステムから、社会というエコシステムを見直すということで、都市設計のパラダイムシフトを生むという。これまで都市設計は、水(水路)や道路を中心に考えられていた。これからは、それにエネルギーと情報を加えた「スマートシティ」による都市設計が重要になるとして講演を終えた。
《中尾真二》

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