独立系だからできるクラウド戦略——ビットアイルのCloud ISLE | RBB TODAY

独立系だからできるクラウド戦略——ビットアイルのCloud ISLE

エンタープライズ その他

右から、ビットアイルマーケティング本部事業推進部部長 高倉敏行氏と同本部サービス開発部部長 井手浩三氏
  • 右から、ビットアイルマーケティング本部事業推進部部長 高倉敏行氏と同本部サービス開発部部長 井手浩三氏
  • ビットアイルのデータセンター。すべて都心にある
  • プライベートクラウドの概要
  • プライベートクラウドの構成図
  • サーバオンデマンドの概要
  • サーバオンデマンドの構成図
  •  ビットアイルは本年9月、クラウドコンピューティングに向けての新しいサービスを発表した。
  • アプリケーションオンデマンドによるクラウドマーケットを切り拓く
 ビットアイルは本年9月、クラウドコンピューティングに向けての新しいサービスを発表した。「Cloud ISLE」と名付けられたこのサービスは、データセンター利用企業が短期的にサーバを拡張したりプライベートクラウド等ユーザー企業に展開可能なリソース提供サービスと、アプリケーションベンダがクラウドサービスをエンドユーザー向けに展開できるようにするプラットフォームサービスの4つのカテゴリから構成されている。

 その戦略の背景とサービスの詳細について、ビットアイルマーケティング本部事業推進部部長 高倉敏行氏と同本部サービス開発部部長 井手浩三氏にお話しを聞いてみた。

——Cloud ISLEは、これまでのコロケーションビジネスから、クラウドサービスに踏み込んだビジネスモデルの転換という捉え方もできると思います。このような戦略に打って出た背景について教えてください。

高倉氏:ビジネスモデルの転換というより、多様化への対応といったほうが正確かもしれません。今までは、いわゆるサーバを企業からお預かりするコロケーションサービスや運用代行を含めたマネージドサービスなどをサービスプロバイダなどに提供することが多かったのですが、最近はユーザー企業から、「キャンペーンのためのサーバリソースを短期的に使いたい。」、「サーバごとの契約ではなくOSごと、サービスごとの契約をしたい。」といった要望などが増えてきています。背景にはクラウドコンピューティングがあるからだと思いますが、データセンタービジネスも単に場所(ラック)を提供するだけ、設備を用意するだけのビジネスではユーザーのニーズに対応しにくくなってきています。Cloud ISLEでは、契約や課金について、「短期間」、「仮想環境のゲストOSごと」といった新しい提供体系を導入していますが、これも、市場のニーズを検討した結果であって、クラウドをやろうという意図が前面にあったわけではありません。

井手氏:コストダウンなどの目的からサーバ統合を行うと仮想化の運用が避けられなくなっていますが、これが、大手企業のように自社で大規模な情報システム部門を持たない企業にとっては、管理や運用の面で負担になっているということもあります。データセンターも、これまでの場所だけの提供や運用だけの提供だけでは済まなくなってきています。

——具体的にはどのようなニーズがあったのですか。

井手氏:例えば新規サービスの立ち上げ時には、初期コストはできるだけ抑えたいというニーズがあります。最近では、立ち上げ時ばかりでなく、サービスのクロージング時のコストや手間まで考える企業が増えています。理由は、事業が予定どおり進まなかった場合、撤退のコストをかけずに素早く次の戦略に打って出たいということもありますし、キャンペーンや季節要因の負荷にあわせて短期間だけサーバを使いたい、といったことなど様々です。投資の最適化を考えると、ピークをカバーできるリソースを用意するのではなく、足りなくなったらスポット的にリソースを配置できるような契約の要望もありました。このようなニーズは、サービスプロバイダだけでなくSIerからも増えています。クラウドコンピューティングによって、企業の情報システムの構築もサービス指向になりつつあり、SIerによっては自社のソリューションやシステム構築に、弊社のプライベートクラウドサービスを利用するケースが増えています。

——サーバオンデマンドは、たとえばAmazon EC2などのサービスにも似ているようですが、どこが違うのですか。

高倉氏:Cloud ISLEでの「サーバオンデマンド」は、第一にビットアイルデータセンターを利用中のお客様に対して、サービスメニューの拡張、選択肢の拡大を提供するサービスと位置付けています。機能的にはAmazon EC2などと同等といえますが、すでにビットアイルと契約しているお客様からみれば、改めて海外のサービスを契約しなくても同等なサービスを利用できるということに意味があり、且つ既存のシステムとの連動が容易という利点もあります。

 また、料金体系は月額が基本となっており、契約期間も月単位となります。Amazon EC2などでは時間単位の契約が可能なサービスもありますが、時間課金は本当に短期間、スポット的な使用ではない場合には高くつきます。時間単位でサーバが必要なこともあるかもしれませんが、そうでなければ月額のほうがメリットがあるのではないでしょうか。また、弊社のデータセンターはすべて都心にあります。オンデマンドサービスやクラウドといいながらも、緊急時の対応などにすぐに駆けつけられる場所にあるという点を評価していただくことも少なくないです。

——アプリケーションオンデマンドについても教えてください。パートナー企業とアプリケーション配信プラットフォームを構築していくという戦略ですね。

高倉氏:アプリケーションベンダにとってアプリケーションをサービスとして提供していく場合、いくつかの懸念材料があります。パッケージなどの既存アプリケーションをSaaS化するにあたって、まず標準化された共通基盤がありません。これを自前で構築するのはコストも時間もかかります。また、ソフトウェアをSaaS基盤にのせるための改修コストや新規開発のコストも問題です。そして、課金モデルも確立されていない状態では、簡単にSaaS化に踏み切れない事情があります。

 これらの問題を解決するために考えたのが、アプリケーションオンデマンドサービスです。このサービスは、ビットアイルのデータセンター上に構築されたCloud ISLEにアプリケーションのリポジトリとなるサーバと、それらを仮想化してユーザー向けにプロビジョニングするサーバプールを用意します。この仮想化インフラは、ParallelsのPVC(Parallels Virtuozzo Containers)がベースとなります。これらの仮想化アプリケーションのアカウント管理、ライセンス管理、その他の制御をPBA(Parallels Buisness Automation)をベースとしたマネジメントシステムが行います。エンドユーザーは通常のブラウザからアプリケーションオンデマンドのポータルを経由してアプリケーションの購入やプラン変更などの各種操作を行います。

 これによって、エンドユーザーは、ISPなどのWebメールアカウントを取得してサービスを利用する感覚でクラウドアプリケーションがすぐに使えます。アプリケーションベンダにとっては、サーバやネットワークインフラなどをそれほど意識せず、自社アプリケーションをほとんど改修することなく、アプリケーションオンデマンドに登録するだけで提供が可能です。課金管理や契約管理、リソース管理など自動化された機能もあわせて提供されるため、自社アプリケーションをSaaS化するコストが大幅に削減でき、ストック型ビジネスへの移行ハードルが下がります。

——パートナーになるアプリケーションベンダにとくに制約などはないそうですが、仮想化の基盤部分はVirtuozzo以外は考えていないのですか。

井手氏:弊社のユーザー企業はサービスプロバイダやベンチャー企業が多いので、ゲストOSでもLinuxユーザーのほうがエンタープライズ系のWindowsより多くなっています。そのためVirtuozzoをまず採用しましたが、これに限定するものではありません。Windows系のニーズが高まれば、仮想化基盤の部分も複数用意することになるでしょう。このあたりは、お客様のニーズにあわせ、柔軟に対応していきたいと考えています。また、アプリケーションベンダのために、仮想化環境検証用のCloud LABという設備を第4データセンター内に設けて開放しています。LABのサーバにはHyper-VやXenなど5種類の仮想化環境が用意されており、さまざまな仮想化基盤でのソフトウェアのテストができるようになっています。

——Cloud ISLEの今後の事業計画などはどうなっていますか。

高倉氏:品川区のデータセンターには約2900ラックあるのですが、現在90%以上埋まっています。主力は文京区にある第4データセンターで、ここにはおよそ2600ラックの収容能力がありますが、品川と同等の稼動率になるのは時間の問題です。また、クラウド関係の売り上げも3年後には10億円規模になると予想しています。そのため、今回説明したサービスだけでなく、継続的に顧客ニーズに対応するため、サービスを拡充していきます。

 アプリケーションオンデマンドでは、パートナーとなっていただけるベンダ向けのセミナーも開催していきます(※1)。セミナーでは、「自社パッケージをクラウド対応させなければならないと思っているが、ノウハウがない。」「ビジネスモデルがない。」「配信インフラもない。」といった問題に対応していくつもりです。Cloud ISLEによって、データセンター、SIer、アプリケーションベンダ、そしてエンドユーザーによるクラウドエコシステム(生態系)を拡大していければと思っています。

——Amazonの例やGoogleのようなパブリッククラウドの動きや、大手データセンターの動きもありますが、今後この市場での競争はどのように展開されていくのでしょうか。

井手氏:現在のところ、Cloud ISLEはクラウド市場での棲み分けができていると思っています。とくに弊社の場合、独立系のデータセンターなのでしがらみがない分、サービスの機動性や柔軟性があります。アプリケーションオンデマンドやプライベートクラウドサービスでも、パートナーやアライアンスを組む企業に制限は考えておりません。今後は、クラウドによって、いままでデータセンターに縁のなかったようなユーザーまで裾野が広がっていくと思います。

 クラウドがそのような流れを後押しするとすると、他社データセンターとの競争が激しくなってくることが想像されます。そのため、独立系の強みを生かした戦略とオープンなエコシステムが重要となってくるでしょう。じつは、クラウドが進むと、企業がリソースを所有しなくなる分「移設」がしやすくなります。そのため、ますます競争が激化する可能性も考えていますが、同時に流入もしやすくなるわけです。Cloud ISLEで考えているようなエコシステムによって、アプリケーションベンダやSIerとのパートナーシップがうまく機能すれば、データセンターとしてのポジションが少しかわってくると考えています。


※1 ベンダ向けセミナーは、「すぐに始められるSaaS / ASP サービス」と題し、11月25日(水)に第1回目を実施予定。セミナーの詳細と申し込み受付は、詳細ページ(https://www.bit-isle.jp/form/seminar/input/)を参照のこと。
《中尾真二》

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