【地域WiMAX】「日本はWiMAXのポテンシャルが非常に高い」——アルバリオン戦略&マーケティング副社長Dr.モハンマド・シャクリ | RBB TODAY
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【地域WiMAX】「日本はWiMAXのポテンシャルが非常に高い」——アルバリオン戦略&マーケティング副社長Dr.モハンマド・シャクリ

エンタープライズ モバイルBIZ
アルバリオン 戦略&マーケティング担当副社長 モハンマド・シャクリ氏
  • アルバリオン 戦略&マーケティング担当副社長 モハンマド・シャクリ氏
  • アルバリオン 日本法人社長 雨宮利広氏
  • モハンマド・シャクリ氏
 無線ブロードバンドに特化してワールドワイドにビジネス展開しているアルバリオン(本社:イスラエル・テルアビブ市)は、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)ら6社とともに今年3月、「CTC WiMAX Ecosystem」を設立し、いよいよ動き出した日本の地域WiMAX市場へ本格参入した。

 今回は、同社の戦略&マーケティング担当副社長であり、またWiMAX Forumのボードメンバー兼マーケティング議長でもあるモハンマド・シャクリ氏、および同社の日本法人社長の雨宮利広氏に、「ワイヤレスジャパン2008」会場にて、日本のWiMAXの役割と可能性について話を聞いた。

——シャクリ氏は昨年もワイヤレスジャパンに参加されましたが、日本のWiMAX業界の成長を感じますか?

シャクリ氏:やはり周波数の割り当てが行われ、UQコミュニケーションズのようなネイションワイドのオペレータがWiMAXにコミットしたことは大きな変化でしょう。地域WiMAX市場向けにも、来年の展開に向けた動きが出てきました。昨年であればプレゼンテーション資料くらいしかなかったブースに、今年は実際の製品が展示されています。業界としての成熟が進んでいると感じました。

——FTTHの普及が進んでいる日本において、WiMAXはどのような役割と可能性をもっているとお考えですか?

シャクリ氏:固定ブロードバンド環境が普及している国だからこそ、WiMAXのポテンシャルが非常に高いのだと思います。ブロードバンド環境のアプリケーション利用に慣れてしまっている一般消費者からは、それを持ち運びたいというニーズが生まれてくるからです。

 モバイルブロードバンドは、決して、光ファイバブロードバンドときっ抗するようなものにはならないと思います。光ファイバは、宅内へ1Tbpsものブロードバンド環境を提供できます。一方、2、3年後の次期リリースで100MbpsになるWiMAXの価値がどこにあるかというと、たとえばデジタルデバイド地域へのブロードバンド環境であるとか、動画などのアプリケーションを持ち運びたいユーザーへのモバイル環境であるとか、光ファイバを利用できない環境での利用にあります。

 さらに言えば、東京のような都市部と地方とでは、WiMAXという同じテクノロジーを使っても、意味合いは異なります。モバイルWiMAXというと、一般消費者向けのガジェットへの組み込みがよくあげられますが、政府が提供する安全・セキュリティといったパブリックセイフティのように、市民の生活基盤にWiMAXを利用する方法もあります。

 たとえばアルバリオンは、日本でCTCやCATV事業者との協業を始めていますが、CATV事業者向けには、すでにお持ちの資産の最適化を図るソリューションを提供します。一方のUQコミュニケーションズへは、それとはまったく違ったソリューションを提供します。テクノロジーは同じでも、展開する市場が異なるのです。

——海外ではWiMAXはどのようなシーンで多く導入されていますか?

シャクリ氏:まず注目すべきは、世界中の政府が、教育や医療、行政サービスのリモート化に重要性を感じているというトレンドです。なぜならリモート化によって、都市部への人口集中を避けることができるからです。たとえば医療の現場では専門化が進んでおり、すべての市町村に各分野の専門医を配置することは困難です。そこで、政府は遠隔医療のインフラ構築に着手するのです。ITは今や、“ツール”の時代から“アプリケーション”の時代に移行しつつあるのではないかと思います。そしてWiMAXをはじめとするモバイルブロードバンドは、それを実現する要素技術として非常に注目を集めています。

雨宮氏:日本においても、政府主導というところまではいっていませんが、地方自治体が市民のインフラとしてWiMAX導入を進めようとしているようです。主なサービスは、医療、教育、それから地震対策ですね。

シャクリ氏:日本のeガバメント化で興味深いのは、中央政府ではなく地方からそれが始まっているということです。海外では、中央政府がまず号令をかけるというケースが多いのですが。

——WiMAX普及のカギとなるコンテンツやサービスにはどういったものがあるとお考えですか?

シャクリ氏:私の十代の娘は12Mbpsの光ファイバサービスを使っていて、それでも「遅い」と不満を口にします(笑)。今彼女たちが生きている世界では、インターネットや動画、SNSなどが当たり前になってきています。インターネットが非常にパーソナル化されたものになってきており、その世界の中で、彼女たちはまさにマルチタスクです。動画やSNSを楽しみながら同時に友人と会話したりします。ですから、これからのネットワークでより伝送速度が求められるのは当然の流れでしょう。

 インターネットは、単一のキラーアプリケーションが登場するという世界では、もはやなくなっています。若い世代が、今あるものを自在に組み合わせて使いこなせるようにすることが、業界のパワーとなっていくのではないかと思います。そのためにはやはりキャパシティが必要なのです。

 重要なのは、光ファイバを使って家庭で何がどのように行われているか、を見ることです。それによってWiMAXの将来が見えてくるのではないでしょうか。WiMAXは携帯電話の3Gとはまったく違う世界です。3GとFTTHでは、使い方もアプリケーションもまったく異なっているでしょう? ですから、それぞれのユーザーのマインドセットも異なっています。WiMAXは、FTTHでできることをベースとし、それをモバイル化していく世界だと私は捉えています。

——WiMAXは世界共通規格ということで、日本のベンダーが世界市場に進出できるチャンスはあるとお考えですか?

シャクリ氏:WiMAXに対する高いニーズの1つである一般消費者向けホームエレクトロニクスの分野、すなわち組み込み型ブロードバンドの業界では、日本はリーダー的な存在にあるわけですから、世界市場向けにWiMAXを組み込む動きがあってよいように思います。またインフラやソリューションの分野でも、日本のアプリケーションは非常にユニークですので、この分野での開発やサービス提供のチャンスもあると思います。

 しかし残念なのは、日本の業界がまだその方向に動いていないということです。日本のベンダーは非常に保守的で、「インフラ待ち」のような姿勢が見られます。一方、韓国などでは、すでに車載用のWiMAXの開発が行われていたり、Ultra Mobile PCの開発が進められていたりします。台湾も国家プロジェクトとしてWiMAXの開発を進めています。

——WiMAX Forumは昨年東京に日本オフィスを設立しましたね。

シャクリ氏:実は日本オフィスの設立は、そうした保守的なベンダーを啓蒙するという目的もあったのです。この1年間、地域事業者に対する周波数割り当ての支援や、WiMAX製品の認定作業を行うほかにも、家電業界を取り込むための様々な活動を展開してきました。日本のベンダーはどうしても国内市場に目が行きがちなため、より大きな市場に目を向けるための橋渡しも努めています。

——アルバリオンの活動について聞かせてください。御社は多数のベンダーとパートナー関係を築き、WiMAXのエコシステム拡大を推進されていますね。

シャクリ氏:アルバリオンは200を超える事業者との協業によって、会社設立以来、WiMAXテクノロジーの成熟化・高品質化に寄与してきました。それゆえ、中規模な企業であるにもかかわらず、この業界におけるリーダーになることができたと思います。

 ワイヤレスジャパンの弊社ブースには、シスコやジュニパー、CTCの製品が並んで展示されています。シスコとジュニパーの製品を並べるなど、今までは考えられなかったことかもしれませんが、インターネットモデルのビジネスとはこういうものであり、これこそがパワーを生むと考えています。すなわちこれはオープンなモデルであり、弊社はこのモデルをWiMAXモデルにも使うことで、今後の事業を展開していこうとしているのです。これは、おそらく自社のソリューションしか展示されていない他社とは異なるアプローチだと思います。

——日本における「CTC WiMAX Ecosystem」の進捗はいかがですか?

雨宮氏:ラボでの接続試験を終え、いつでもお客様に使っていただける環境をすでに整えています。現在は様々なアプリケーションのテストに加え、デバイスのラインアップ拡充にも取り組んでおり、インフラやコアネットワーク以外にも、デバイスやアプリケーション、サーバへと、エコシステムは順調に拡大しています。また、今後はメンバーのエンジニア同士が、オペレータさんを対象としたトレーニングを共同で開催していく予定です。

——最後に、アルバリオンの今後の展開について教えてください。

シャクリ氏:あまりよく知られていないことですが、弊社の重要なビジネスに、パブリックセイフティ分野のバーティカルマーケットがあります。弊社は他社に大きく差を付ける技術・ソリューションを提供できる自信がありますから、日本においても将来的にこの分野でプロジェクトを立ち上げることができればと考えています。

——ありがとうございました。
《柏木由美子》
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