【WiMAX World USA 2006 Vol.4】実動製品が盛りだくさん! 展示会レポート | RBB TODAY
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【WiMAX World USA 2006 Vol.4】実動製品が盛りだくさん! 展示会レポート

ブロードバンド その他
レジストレーションデスク付近、付近には各社の商談ブースがあっていつも人があふれていた
  • レジストレーションデスク付近、付近には各社の商談ブースがあっていつも人があふれていた
  • 最終的なスポンサーのリスト、大手メディアから各種団体まで非常に数が多い、これもエコシステム
  • 会場は熱心な参加者でいっぱい、説明員は早くも疲れ気味
  • 会場は熱心な参加者でいっぱい、説明員は早くも疲れ気味
  • 受賞者の一覧
  • Navini社のSmart WiMAXと呼ばれる基地局
  • 会場に設置されたアダプティブアンテナシステム、8個のアンテナが並んでいる
  • 同社が開発しているCPEとPCMCIAカード
 10月10日から12日(現地時間)にかけて米ボストンで開催されたWiMAXのイベント「WiMAX World USA Conference & Expo」の展示会の状況について解説したい。とはいえせっかくなので、大手の公式リリースを追うのではなく、筆者らの考える注目すべきポイントに絞って見ていくこととしたい。

 なお今回の出展者は140社と、WiMAXエコシステムの広がりを感じさせるものだが、機材は各社ともWiMAXに関連するものだけなので、最大のブース面積だったモトローラやノーテルでもそれほど大きなブースは構えていない。そのためそれほど広くない会場に数千人の熱心な参加者がひしめくこととなり、会場は非常に混雑していた。

■「Best of WiMAX World Award」を発表
 なお展示会ではないが、基調講演の冒頭で、WiMAX Worldが今年から開始した優秀な製品や商品を表彰する「Best of WiMAX World Award」の発表があった。中立なWiMAX Worldのアドバイザリボードメンバから選ばれた6名の審査員によって選ばれた、本年度の各部門の受賞は下記の通りだった。

・デバイス周辺機器、アプリケーションソフトウェア:MAX-100/200 Mobile WiMAX CPE(ZyXEL社)
・商用アプリケーション/展開-装置メーカー:BreezeMAX Si(Alvarion社)
・商用アプリケーション/展開-サービス提供者:WiMAX Telecom社
・システムデザイン:BX-3000 Base Station (ADAPTIX社)
・インダストリーイノベーション:WiMAX Distributed Network (Motorola)

 その選定結果がどのような意味があるのかは別として、より重要な事は、いよいよWiMAXが商品開発の競争段階に入っており、この手の賞を設定して選定しなければいけないほど多くの製品が出てきたという事だろう。各社とも展示会に力が入るというものだ。

■Naviniはビームフォーミング可能な高機能基地局を展示
 Navini Networksは、同社の長い無線ブロードバンドの経験をいかした初のモバイルWiMAX製品となるSmart WiMAXを展示していた。この製品は他社に先駆けてアダプティブアレイシステムを搭載した基地局である事がポイントだ。アダプティブアレイは複数のアンテナを用いて電波をビームフォーミング(アンテナの指向性を動的に制御)することで、通信距離を伸ばし、端末ごとの送受信性能を改善する技術だ。 

 また、同社は端末も自社で開発しており、CPE型とPCMCIAカード型の端末も展示していた。高度なアダプティブアレイシステムを十分にいかすには、現段階では端末も自社で作らなければいけないということだろう。ちなみに大手通信機器メーカーの多くは、端末についてはWiMAX Forumによる認定を通った製品をユーザが自由に使うことを想定している。

 なお同社はPre-WiMAX製品をすでに出荷しており、大規模なものとしては、オーストラリアのUnwired Australiaでの3.5GHzシステムや、BellSouthへの2.3GHzシステムの納入実績があるという。

■ノーテルはモバイルWiMAXを動態展示
 ノーテルネットワークスは複数のシステムを動態展示していた。ひとつは固定WiMAXを使ったIMSとIPTVを組み合わせたサービス。こちらはトリプルプレイサービスに無線ブロードバンドを使い、IMSでの課金やサービス制御を行うというものである。

 もうひとつが、限定的に公開したモバイルWiMAXのシステムだ。同社のモバイルWiMAX製品は今回がはじめてのお目見えとなるため、実際の無線の状況を測定器で表示して、動く製品の開発に成功している事をアピールしていた。同社は早々とMIMO(Multiple Input Multiple Output)をサポートした事で注目を浴びているが、残念ながら会場のシステムでは動作させていなかった。しかし担当者は「ぜひオタワ(同社のR&D部門)に見に来てほしい」と自信をのぞかせていた。また、モバイルWiMAXで必要となる基地局間のハンドオーバなどを制御する機能を提供するASN-GW(Access Service Network Gateway)についても、同社の実績あるシステムをベースに、通信事業者が求める信頼性を確保しているという。同社の製品の注目は高く、モバイルWiMAXの展示は各国のグループがすきまなく、入れ替え制で入っていた。

 WiMAXの端末については、同社はパートナー企業の製品との相互接続性を取ることに集中している。具体的には今回、WiMAX World Awardを受賞したZyXELの製品や、MiTAC、Runcomの製品などが展示されていた。

■スタレントネットワークスは新コンセプトのASN-GWを開発
 スタレントネットワークスは、cdma2000用PDSN(Packet Data Serving Node)の大手メーカーであるが、同社のST16プラットフォームを利用してASN-GW(Access Service Network Gateway)を開発中である。製品は来年のリリースを予定しているとの事。処理能力は現在のPDSN並みを目指すという。

 同社では、ASN-GWを単機能として提供するのではなく、Wi-Fi、WiMAX、3Gなどの異種アクセスネットワークを統一的に扱い、これらの異なるアクセス回線をユーザが切り替えても、サービス中断することなくシームレスにデータ通信を提供するユニバーサルローミング機能を開発しているという。会場では擬似的にアクセス回線を切り替え、ストリーミング映像が途切れることなく再生されるデモを行っていた。

 また、同日、住友電工ネットワークスが同社の製品を選定したと発表した。住友電工ネットワークスはモバイルWiMAXソリューションを開発しており、ASN-GWおよびHA(Home Agent)にはスタレントの製品を使うという。

■POS DATAはCPEのモックアップを展示
 国内ではあまり知られていないが、韓国にはPOSDATAというWiMAX機器メーカーがある。同社のFLYVOというブランドのWiMAXシステムは2.3GHz、2.5GHzに対応しており、基地局には屋内用と屋外用の2種類があるという。なお同社はASN-GWも開発しているが、これをACR(Access Control Router)と呼んでいる。

 また同社は端末向けのチップセットも自社で開発しており、こちらは端末メーカーに販売していくという。ブースではWiMAX端末のイメージが膨らむ各種の端末のモックアップを多数展示していた。

■Expoテックシアター
 Expo会場では各社のプレゼンテーションが行われていたので、こちらについてもリリーススケジュールを中心に要点を示しておく。

●Intel
・WiMAXはSprint Nextelのサービス提供の発表から勢い付いている。 
・Sprint NextelのモバイルWiMAXサービスは、ビジネス、公共、コンシューマの各市場セグメントに有効である。
・インテルの方針はLow cost chipset。Wi-Fiと同様の普及モデル。
・本年はPro/Wireless 5116をリリース、量産向けのWiMAX Connection 2250を出荷予定。
・WiMAX Connection 2250の開発のターゲットは、DSLレベルの低コスト化の実現と、組込み製品向けの設計。特徴は、IEEE802.16-2004と802.16e-2005を併せ持ち、アップグレードできる柔軟性、チップの最適化による低コストのベーシックモデムの実現など。
・Wi-Fi/WiMAXの統合チップセットはWiMAX Connection 2250とは別部隊で開発中。2008年の発売予定。

●モトローラ
・MOTO wi4はCAP(Carrier Access Point)と呼ばれる、分散型のall-IPモビリティ方式によって、ASN-GWが不要なアーキテクチャを採用しており、ネットワークには通常のルータやスイッチが流用できる。
・ネットワークプロセッサー、DSP、FPGAを組み合わせたソフトウェア定義無線も採用している。
・2007年第2四半期には2.5GHzへ対応、同年の第3四半期にはモバイルWiMAXに対応予定。
・モトローラのWiMAXソリューションのTCOは3G半分に低減する事を。

●Aperto Networks
・WiMAXのPCMCIAカードはいまから約半年で製品化(2007年2Q)、ノートブック組込みは2年後(2008年)、モバイル対応は3年後(2009年)まで待たなければならないため、まずはIEEE802.16-2004との複合ネットワークを検討すべきとしている。同社はIEEE802.16d-2004製品のPacketMAXを開発済み。

■WiMAX製品全体を通して
 すでに多くの大手〜中堅メーカーがモバイルWiMAXの製品市場への参入を決めており、差別化のために知恵を絞っているというのが現状だろう。今後、開発が進むうちに最も効率的なアーキテクチャに収束していく事になるはずだし、このようなプロセスがインフラ側の機器でも発生する事も自由度の高いWiMAXの特徴といえる。問題は各社が独自性にこだわるあまり、相互接続性がおろそかになることだが、今の段階では見えてこない。まずは最初の製品が出ろ沿うのをまちたい所だ。

(伊藤 公祐 & 干場 久仁雄 (株)IRIユビテック シニアコンサルタント)
《RBB TODAY》
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