話題の“IoTホテル”が東京進出! | RBB TODAY

話題の“IoTホテル”が東京進出!

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最先端IoTデバイスを駆使したスマートホステル「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」
  • 最先端IoTデバイスを駆使したスマートホステル「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」
  • ホテルのエントランス部分。大型のマルチタッチディスプレイには近くの観光案内などが表示されるほか、インタラクティブなコンテンツを提供
  • ホテル内のIoT機器はスマートフォンのアプリで使用できる。1つのアプリで操作できる独自の「&IoTアプリ」を開発。部屋の照明も1600万色以上で調光できる
  • スマートキー。スマートフォンで開け閉めが可能
  • and factory株式会社 執行役員 石田育男氏
【記事のポイント】
▼宿泊客が複数の設備をスマートフォンひとつで操作できることの利便性
▼専用に開発された機器でなくても既存の機器を活用することでコスト削減が可能
▼宿泊施設はコト消費の一部であると考える


 インバウンド需要の拡大、そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックといった要因から、「おもてなし」がキーワードとして注目されている。

 さらに、IT/IoTを活用した「おもてなし2.0」とでもいうべきサービスや製品が、飲食業・旅行業・物販業の領域で、多数登場しつつある。本連載はそうした最新事例を紹介し、自社での導入の参考とする内容だ。

 今回は、スマホアプリ開発を中心としているand factory株式会社がプロデュースしたスマートホステル「&AND HOSTEL」に焦点を当てる。「&AND HOSTEL」は、最先端IoTデバイスを駆使したスマートホステルだ。「宿泊体験そのもの」が、観光目的にもなるような先進的なサービス空間を提供しているのが特徴で、“日本初のIoT体験型宿泊施設”として1号店「&AND HOSTEL」を、2016年8月に福岡で開業。そして、2号店「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」を、2017年4月5日に東京・浅草北で開業し、いよいよ首都圏にも進出した(共同運営:PLAY&co)。

■IoTデバイス集結により生まれた、独特な「宿泊体験」

 2号店「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」が開業した北浅草エリア(台東区日本堤)は、もともと低価格の宿泊施設が多く、近年は海外訪日客からとくに人気が高いエリアだ。「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」の宿泊料金も、Dormitoryタイプが3,000円、TwinRoomタイプが8,000円、そしてIoT SemiDoubleタイプが7,500円、IoT TwinRoomタイプが8,500円と、リーズナブルな価格となっている。宿泊客には、宿泊期間中、専用アプリをインストールしたAndroid端末を貸し出し、それで操作してもらうというスタイルとなっている。

 開業後は、2日目90%、3日目100%、4日目100%で、以降も高い稼働状態が続いている。利用客はやはり海外訪日客が多く、国内客15%に対し海外客が85%を占める(福岡1号店は、国内客20%:海外客80%程度)。年齢層は20~30代で、性別は半々と、このへんは周辺のホステルと比較的変わらない模様だ。and factory執行役員の石田育男氏によると、「IoT体験」だけをメイン目的にしている海外客は少なく、海外のトラベルサイトなどでも、IoTについては、特別に大きく広報してはいないという。普通に宿泊に来て、IoT体験に驚く客もいるとのこと。一方で、CESへの出展の要請があったり、海外からのIoT関連取材もすでにあったりするそうだ。

 同社は、「&AND HOSTEL」を「日本のIoT技術力を世界へ発信するプレゼンテーションの場」「IoTデバイスの技術開発/実証実験の場」「IoTプラットフォーム構築の研究/改善の場」として捉えている。「購入するにはまだ早い、ショールームで体験するだけでは物足りない、近未来のIoTのある暮らしを、宿泊を通じて体験してもらうという企画」(石田氏)からスタートし、エンジニア4名・ディレクター3名・デザイナー1名が約1.5か月間でベースを開発した。


「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」開業に際しては、1号店での利用状況を踏まえ、IoT統制・制御プラットフォーム「&IoT」を改良、連携するIoTデバイスの追加とユーザー体験の進化を実現した。客室(IoTルーム)だけでなく、共有のダイニングラウンジスペースにも、多数のIoTデバイスを設置した。「&IoT」のアプリひとつで、これらの設置デバイスを操作したり、浴室や洗濯機の利用状況を手元で確認できるようにしている。こうした各室に設置されたIoT機器群により、以下のようなIoTサービスが実現した。

1 スマートフォンで客室の鍵を制御
2 客室内のTV、エアコン、空気清浄機などの家電を制御
3 シャワールーム・共有洗濯機の空き状況確認とシャワールームの予約
4 日の出と連動したカーテンの自動開閉などの目覚まし機能
5 快適な入眠状況を作り上げるナイトモード機能
6 客室内の温度/湿度を感知してアラートを上げる

■2号店は観光より体験がテーマ、“ちょっと先のIoTのある暮らし”を提供

「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」は、「福岡でやってみてわかったことを反映させた」と石田氏は語る。その結果、イベント・周辺施設の情報提供、AR体験といった観光情報より、宿泊施設そのものとしてのニーズに比重が置かれている。「1号店である福岡では、スマートアイグラスやスマート宅配ボックスなど、観光にスポットを当てたIoTデバイスも用意しておりましたが、今回の東京凱旋では、より“ちょっと先のIoTのある暮らし”をテーマに、居室内で必要な体験を重視しました」とのことで、ソニーの電子タグ端末「MESH」、ロビットのカーテン操作機器「mornin'」などを新たに導入した。これらの利用データのフィードバックの仕組みも、福岡より細かく組み込んだ。

 そのほかグラモのネットワーク接続型高機能学習リモコン「iRemocon」、Qrioの小型スマートキー「Qrio Smart Lock」なども含め、各室にIoT機材を導入したが、機材の費用は、総計でも10万円以下だという(アプリケーションの開発費、母体のシステム費、貸し出しする端末費などを除く)。基本的には専用に開発された機器はなく、既存の機器を活用し、さまざまな“快適体験”を実現している。

 個別のサービスで見れば、こうした機能を利用できる宿泊施設はいくつか存在する。しかし、鍵を開閉する、照明を点灯する、エアコンを起動し温度調整する、といったすべての操作を、独自開発の専用アプリ「&IoT」のみで実現しているのが、「&AND HOSTEL」の大きな特徴だ。石田氏によると、ここまで統合的にIoT体験を提供している宿泊施設は、世界的にも類例がなく、オランダ・アムステルダムのIoTホテル「CityHub」ぐらいではないかという。

 ユーザー側は、スマートな体験により、シームレスな近未来のデジタルライフを堪能できる。一方でメーカー側は、IoTデバイスのユーザーデータを集め、マーケティング機能を担う拠点として活用できる。これが、「&AND HOSTEL」の利点だろう。すでに企業やメディアから多くの問い合わせもあり、今後は自社展開だけでなく、「&IoT Platform」を他社に提供していく方針と、石田氏は語る。

 実際にand factoryは、5月開業予定のパセラのカプセルホテル「安心お宿プレミア新橋汐留店」に「&IoT Platform」を提供。「カプセルホテルをスマートカプセルホテル化する取組みは業界でも初」(石田氏)だ。連係機能や導入IoT機器については、利用シーン、施設、体験してもらいたい内容によってチューニングが行われる。「安心お宿プレミア新橋汐留店」では、トイレ、浴場、カフェスペースの混雑状況を把握できるようにカスタマイズを行った。今後は、シェアハウスのようなシェアリングエコノミー業界での利用拡大を予測しているという。


■IoTデバイスの世界は日進月歩、「体験のアップデート」を続ける

 and factoryは、今年中に計7か所、3年以内に30か所で「&AND HOSTEL」あるいはそれに類する施設の開業を予定している。5月に開業する上野(稲荷町近辺)のほか、主に東京・大阪・京都・福岡での展開を予定しており、積極的に全国に広げていく。

 ただ、同社が考える方向性は、「店舗数の拡大、施設の差別化」より「体験のアップデート」(石田氏)が重要としており、日進月歩で登場するさまざまな新製品を、積極的に導入していく計画だ。またこうした他社開発の製品だけでなく、産学連携などによる成果も採り入れる方針で、九州大学および東北大学とコンソーシアムを組んで、まだ製品となっていない要素技術も視野に入れているという。

 同社は「日常の暮らしに&(+)を届ける」をテーマに事業展開しており、「“ちょっと先のIoTのある暮らし”を体験してもらうことこそが、おもてなし。そしてその先にあるもの」(石田氏)だと考察している。「&AND HOSTEL」における“おもてなし”の根幹としても、「宿泊施設」「バイリンガルスタッフ+コミニュケーションラウンジで、出会いを生み出す場」「先進的なIoTなど、未知との体験」という、3つの側面を重視していきたいと締めくくった。

サービス業のIT利用最前線!2 話題の“IoTホテル”が東京進出

《冨岡晶/HANJO HANJO編集部》

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