日本式介護、輸出先は中国が有望! タイ、マレーシアも注目! | RBB TODAY

日本式介護、輸出先は中国が有望! タイ、マレーシアも注目!

 中国をはじめとするアジア諸国で高齢化が問題となっている。国連は人口に占める65歳以上の比率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と定義した。

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海外では富裕層を中心に利用が進む日本の介護サービス。特に、高齢化が進む中国やタイでその傾向が見られる
  • 海外では富裕層を中心に利用が進む日本の介護サービス。特に、高齢化が進む中国やタイでその傾向が見られる
  • 交流会や展示会、商談会は定期的に開催している。海外進出に興味があれば、足を運ぶべきだろう
  • ジェトロでは「日中高齢者産業交流会セミナー」を主催するなど、海外進出を支援している
  • セミナー後の商談会。「情報収集や現地パートナー探しなどに役立てていただきたいですね」と佐藤氏
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)サービス産業部・ヘルスケア産業課長の佐藤拓氏
【記事のポイント】
▼高齢化が加速する中国、続いてタイやマレーシアも輸出対象国に
▼その国における介護保険の有無が、進出時の事情を大きく左右する
▼各国の富裕層をまずターゲットに、そこから中間層を狙う
▼介護関連のE-ラーニング、コンサルティングにも商機あり


■介護事業者が進出先として、高齢化真っ只中の中国に注目

 中国をはじめとするアジア諸国で高齢化が問題となっている。国連は人口に占める65歳以上の比率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と定義した。日本では高齢化社会から超高齢社会への移行に40年ほどかかったが、中国をはじめ、韓国、シンガポール、タイなどではそれを上回るペースで進むと予測されている。

 急速に高齢化が進む一方で、これらの国では介護インフラが追い付いていないのが現状だ。そこで注目を集めているのが、超高齢社会の先行国であり、ホスピタリティマインドに定評のある日本の介護サービスである。日本貿易振興機構(ジェトロ)サービス産業部・ヘルスケア産業課長の佐藤拓氏によると、アジア諸国のなかでも、特に高齢化問題が切実なのが中国だという。

「60歳以上の人口は2億5000万人を超え、介護を必要とする高齢者は4000万人を超えました。その対策は急務です」

 中国政府や各自治体も高齢化問題に向けて動き始めている。第13次5か年計画(2016~2020)に『長期介護保険制度の構築を模索する』という文言が盛り込まれたことを受けて、上海や広州、青島など、国内主要15都市では今後1~2年間にわたり『長期介護保険制度の導入に向けた試行』が行われる予定だ。

 このような状況を背景に今、日本の介護事業者が中国へと進出している。介護事業は主に「在宅(訪問)介護」「通所介護(デイサービス)」「介護施設」の3つに分類されるが、中国政府が目下掲げているのが「9064モデル」(北京市)、「9073モデル」(上海市などの他地域)という目標値。これは在宅介護が90%、デイケアが6~7%、介護施設が4~3%を目指すというものだ。

■超えるべきハードルは意識改革と人材確保

 中国の在宅介護に進出している株式会社ニチイ学館では、北京、瀋陽、大連、広州などの主要都市で現地の家政婦会社などに出資し、訪問介護を行っている。一方で、自治体の受託を受け、公民館のような既存の施設を利用しデイサービスを行っているのが、株式会社ウイズネットだ。この形態は自治体としても既存の施設を使用するため誘致しやすく、日本企業側も大規模な設備投資が不要なので進出が容易というメリットがある。

 2012年に株式会社リエイが北京で設立した介護施設は、マーケティングショールーム兼情報発信、介護士養成OJTの役割も兼ねた施設ということで、行政やメディアからも注目を集めている。その後も中国国内での展開を加速中だ。現状では利用者は一部の富裕層に限定されるが、「長期介護保険制度の試行後は未知数ですが、もし保険制度が整備されれば利用拡大に向け追い風になるでしょう」と佐藤氏は分析する。


 ちなみに、海外進出先を考える際、判断材料のひとつになるのが介護保険の有無だろう。介護保険が整備されていない国では、人的・設備的にもコストのかかる介護サービスを利用できるのは一部の富裕層のみとなる。もちろんターゲットを富裕層に絞りハイエンドな介護施設運営で利益を上げるという選択肢もあるが、その判断は国やエリアの特性、高齢化率など諸事情によっても変わってくるだろう。

 また、介護保険がないということは、介護インフラが未整備ということでもある。それゆえ日本の介護サービスへのニーズが発生するわけだが、超えるべきハードルはいくつかある。まずは介護への意識。かつての日本がそうであったように、“親の面倒は自宅で子がみるもの”という意識が強い国や地域は、アジア諸国ではまだ多い。

「まずは富裕層に日本の介護サービスを体感してもらうのが有効でしょう。各国の富裕層の方々は日本を旅行したことがある人も多く、日本のホスピタリティや高品質なものを知っています。そうした人に利用してもらうことで、徐々に浸透していくのではないでしょうか」

 次に問題になるのが人材の確保だが、これについては日本と同様、現地の介護士養成学校などで募集するケースが多いという。難しいのは日本水準の介護サービスを現地スタッフに教育することで、「日本人が現地に出向きマンツーマンで指導、または日本の施設で研修を行う企業もあります」と佐藤氏は話す。

 諸々の状況を鑑みると、介護サービスについては中国に次いで高齢化が深刻化しつつあるタイ、少し遅れてベトナムといった国が有力な進出先として挙げられるだろう。前述のリエイは中国に先駆けてタイに進出し、2016年にはバンコクに介護施設を開設している。タイとマレーシアについては日本人のロングステイ先としても人気があり、日本人高齢者の需要も、今後一定数見込めることも視野に入れてよいかもしれない。

■日本の介護ノウハウを伝える、E-ラーニングやコンサルティングにも商機あり

 では、介護に付随するビジネスについても商機はあるのだろうか? 佐藤氏によると、日本的な介護サービスのコンテンツについては、ニーズが高い状況にあるという。

「医療や介護現場の人間が、日本のノウハウを学びたいと思っています。今後はそういった現場へのコンサルティングや、E-ラーニングなどのビジネスも考えられるのではないでしょうか」

 また、今後の介護施設の増加に伴い、介護ベッドや入浴装置、バリアフリーの設計建築などにおいても信頼のある日本製品への需要が増すことも予想される。細かなところでは「中国の郊外にある介護施設で日本の家庭料理を提供したら大好評だった」というエピソードに象徴されるように、介護現場への食のアプローチにおいても成すべきことは大いにありそうだ。

 日本の高齢者ケアビジネス市場は2040年台にピークを迎え(国立社会保障・人口問題研究所によると日本の将来推計人口は2042年が最多)、その後に人口の減少に伴い頭打ちになるといわれている。その未来を考えるならば、現在大きなニーズのある中国への進出は、まさに今がそのタイミングかもしれない。もしくはその次を見てタイやマレーシア、その先を見据えてベトナムに先行的に進出という道もある。そこを足場に周辺諸国に事業を拡大することも、現場で培った人脈から新たなビジネスを育てることも考えるならば、今のうちから海外進出を視野に入れておく必要がありそうだ。

~日本式介護の輸出:1~有望国は中国! タイ、マレーシアも注目

《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》

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