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ソフトバンク、災害時にも強い「衛星LTEシステム」の試作実験を公開

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研究開発本部の國信健一郎氏
  • 研究開発本部の國信健一郎氏
  • ソフトバンクが開発を進める「衛星LTEシステム」の実験環境
  • きっかけは東日本大震災だったという
  • 日本全国に静止衛星からLTEの電波を飛ばして20~30に分割したエリアをカバーする
  • 既存のLTE/LTE-Advancedの技術をベースに開発が進められている
  • 伝搬遅延が生じてしまうため対策を講じる必要がある
  • 地上・衛星ネットワーク共用の受信端末を開発
  • お台場のエリアを使って実証実感が行われた
 試験環境ではお台場の上空に衛星環境を見立てた中継局代わりの気球を飛ばし、先ほどの衛星基地局に見立てたエミュレーターと、模擬的な地上基地局間のトライアングル環境で試作端末による伝送実験を行った。衛星回線への電波はエミュレーターを使って3.3GHz帯で飛ばし、気球から地上基地局にはSバンドの実験周波数で送り出している。一方、ハイブリッドで対応する地上LTEシステムからはSバンドの電波をダイレクトに飛ばしている。

 今回試された項目は3つ。ひとつめの「ビデオ通話」では、衛星回線を介した状態でも、音声・映像ともにわずかな遅延で安定した通信が行えることが確認された。ふたつめには地上エリアから衛星エリアに移動した際のハンドオーバーを検証。それぞれがスムーズに切り替わるデモが体験できた。最後に実際のスループットの速度も計測されたが、衛星システムの場合でも下り約2Mbps、上り約100kbps~200kbps程度のスループットが出せることも証明された。

 今回試作された受信用端末はデータ通信に特化している。サイズは文庫本ぐらいで、受信感度を上げるため本体の左右から利得の高いアンテナユニットを引き出し、さらに受信状態を安定させるため電波が吹いている方向に本体を向けて置く必要もある。現時点ではいかにもポータビリティは低そうだし、そもそもソフトバンクが目標としている「一般の人々が使えるような通信端末」とはほど遠い仕様だが、同社の最終的な狙いはあくまでスマートフォンなどの端末で、データ通信だけでなく音声通話も可能にすることであり、そのための未来図をいま入念に描いているのだと藤井氏は強調する。

 シミュレーションでは一つの静止衛星で日本全国を20~30のエリアに分割して複数のビームでカバーする計画だという。また衛星LTEシステムを災害対策としてだけでなく、平常時にも地上ネットワークだけではカバーしきれない山間地域など、難受信エリアにLTE網を行き届かせるためのソリューションとして活用できるようにしたいと藤井氏は意気込みを語っている。

 ソフトバンクでは今回成功した実証実験のデータも糧にしながら、技術をさらに練り上げていく考えだ。ただ同社の説明を聞きながら、一方ではじゃあ静止衛星自体はどうするのかという疑問にも突き当たる。ソフトバンクの担当者は「衛星をどのように打ち上げるか」、そして「衛星の周波数をどのように割り当ててもらうか」という2つの大きな課題がこの先の将来に横たわっているのだと打ち明ける。また「衛星を上げること自体、ソフトバンクが単独でできないことではないが、静止衛星の利用は国家が決定する権益。隣接国も含めた調整が必要になる問題なので、現時点でスケジュールの見通しを立てることは難しい。総務省との調整も継続して行っていきたい。そもそも公共的な通信サービスに関わる問題なので、日本だけでなく他国のキャリアとも協調しながら進めていくべきサービス」と考え方を述べた。
《山本 敦》
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