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ソフトバンク、災害時にも強い「衛星LTEシステム」の試作実験を公開

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研究開発本部の國信健一郎氏
  • 研究開発本部の國信健一郎氏
  • ソフトバンクが開発を進める「衛星LTEシステム」の実験環境
  • きっかけは東日本大震災だったという
  • 日本全国に静止衛星からLTEの電波を飛ばして20~30に分割したエリアをカバーする
  • 既存のLTE/LTE-Advancedの技術をベースに開発が進められている
  • 伝搬遅延が生じてしまうため対策を講じる必要がある
  • 地上・衛星ネットワーク共用の受信端末を開発
  • お台場のエリアを使って実証実感が行われた
 ソフトバンクがLTE-Advancedに対応する静止衛星を活用した通信システムの試作開発を進めているという。近い将来に実現すれば災害時により強いネットワークとして、あるいは地上ネットワークのエリアカバーをさらに広げる通信サービスとしての役割が期待できる。9日に開催された記者説明会にてその詳細を取材した。

 今回発表された技術はソフトバンクの地上LTEネットワークのほかに、高度約36,000kmを超える上空・宇宙に打ち上げられた静止衛星を活用した「衛星LTEシステム」を構築しようとするものだ。同社の地上LTEネットワークはすでに約9割強を超える全国エリアカバーを実現しているのにもかかわらず、なぜいまコストをかけて新たなネットワークシステムをつくる必要があるのだろうか。開発を押し進める研究開発本部 本部長の國信健一郎氏がその理由を次のように説いている。

「2011年に東日本大震災が発生した際にネットワークの大規模喪失があり、その復旧に多大な時間がかかった。当時衛星を使った伝送路によりネットワークを復活させた経緯があり、その経験を土台にして災害時にも強い衛星システムの構築が必要と考えた」

 つまり、その第一義的な役割は災害時の通信環境を確保するためのものであるようだ。ソフトバンクは衛星LTEシステムの試作開発を2014年の10月から本格的にスタートした。開発を進めるに当たり、打ち立てられたコンセプトと見えてきた課題、そして今日段階での完成度についてなど技術の詳細は、研究開発本部の特別研究室長である藤井輝也氏が説明した。

 衛星を利用した通信システムの試作は、現在地上で利用されているLTE-Advancedと同一の通信規格を用いることが基点となった。その理由は「将来は一般的に使われているスマートフォンなどの通信端末に組み込み、災害時などに役立てることが前提。衛星用の特別な端末を作ってしまうと、いざというときに広く役に立たないから」だと藤井氏は説く。またもう一つ「3GPPにより標準化されたLTE/LTE-Advancedの技術を基盤にしておけば、この先10年単位の将来に訪れる規格や技術のアップデートに対しても柔軟に対応しやすい」ことも理由だという。

 ソフトバンクでは衛星LTEシステムの開発を独自に練り上げ、2014年の6月に実験免許を取得して以来、東京のお台場地区でフィールド検証を重ねてきた。今回、地上のLTE通信システムとの親和性を確保した衛星LTEシステムの試作が一定のレベルに到達したことから、記者に向けたデモンストレーションの機会が設けられた。

 当システムに対応する衛星はまだ存在していないため、実験ではLTE-Advancedに対応する衛星基地局回線に見立てたエミュレーターを用意。実際の衛星通信の場合、高度36,000kmの宇宙空間に漂う静止衛星との間の長い距離を電波が往復するため、約0.5秒の伝搬遅延が発生する。これが通信エラーの原因にならないよう、試作されたシステムでは既存プロトコルの仕様には手を加えず、パラメータの値だけをチューニングすることで、わずかな遅延はあるものの安定した通信を実現した。
《山本 敦》
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